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無名頂上種の世界革命  作者: 福部誌是
11 終焉の日
92/119

11-1

「………………どうしよう」


 冥界でのひと騒動が落ち着き、俺はカルケリルとドミニクさんの間で言葉をこぼした。


 場所は冥界の中でも特に薄暗い場所。

 そこに3人で地面に座り、俺は相談事をもちかけた。



「………………真正面から、アンジェリカに告白してしまった」


「いい告白でしたね」


「うんうん。なのにどうして、そんなに落ち込んでるんだい?」


「だって、あの流れは少し卑怯っていうか………。

 あぁー、やり直したい。というか、アンジェリカの顔を見れない。見るのが怖い…………」


「なに乙女みたいなこと言ってるんだよ」


 カルケリルの辛辣な言葉がグサリと胸に刺さる。



「だって、しょうがないだろ!

 今までこんな経験したことないんだからさ!」


「…………それは最早頑張ってください。としか言えないですね。

 それで、問題はこの後ですよ。タクミはアンジェリカ様と付き合うのですか?」



「あ、その事について、気になることがあったんだ」


 ドミニクさんの言葉に、俺は我に返って今までずっと気になっていた事を口にする。


「この世界って恋人関係っていう概念があるのか?」


「…………というと?」


「いやー、だっていきなり結婚、ってなったら俺にも色々と覚悟が……………」



 俺の言葉に、カルケリルとドミニクさんが顔を見合わせる。

 そして一呼吸置いた後に、同時に口を開いて………。



「その考えはキモいね」














 ♦️♦️♦️



「……………はぁ、どうしよう」



 冥界の隅。タクミ達とは少し離れた場所でため息を吐く少女の姿があった。



「もしかして、タクミの事ですか?」


「うん。そうなの」


 アンジェリカは傍にいるローズに対して、思いの丈をそのままぶつける。


「…………タクミってあんなにかっこよかったかしら?」



 その言葉を聞いて、ローズは若干吹き出しそうになるのを抑えつつ、続きを聞くことにした。


「………タクミがかっこいい、ですか?」


「うん。そうなの。なんか、前までと違って見えるっていうかぁ。正直に言えば前よりも5割くらい輝いて見えるといかぁ」


 頬を赤く染め、照れながら言葉を口にするアンジェリカ。

 それを見て、ローズは自身の心に暖かいものが芽生える感覚を覚えた。


 この光景を、永遠に眺めていたい。



 決して口に出すことのないその感情を心の内に留め、話を前に進める。


「それで、アンジェリカ様はタクミと付き合うのですか?」


「出来れば、今すぐに………」


 即答だった。


 恋は盲目と言うが、ここまでとは。

 その微笑ましい光景に、ローズは頬を綻ばせる。


「………でも、直ぐにそうする訳にはいかないじゃない。タイミングがタイミングだし」


 続けて口を開くアンジェリカに、ローズの表情に陰りが落ちる。


「…………直ぐそこまで迫ってますからね」


 ローズの声に、アンジェリカは短く頷いた。ここまで来れば既に明白である。

 恐らく、この冥界にいる全員が共通の覚悟を持ってここにいる。


 最後の決戦は近い、ということを。



 そもそも、タクミがカルケリルと結託して何かの準備を進めていることを、ローズは感じ取っていた。

 その計画の全容までは分からずとも、最後の戦いが近いことだけは肌で感じている。


 これはローズの直感だが、デービルやカイロンの接触が無ければ、今頃戦いが終わっていてもおかしくなかったのではないかとも感じている。



 そんな中で、目の前にいるアンジェリカがヴァーテクスとしてではなく、ごく普通のありふれた少女としての一面を見せていることが、どこか歯痒く感じた。



「アンジェリカ様。絶対に勝ちましょうね」


 ローズの言葉に、アンジェリカは頷く。


「………ローズは想いを告げないの?」


 その唐突な切り返しに、ローズは虚をつかれ、思考が真っ白に陥る。


 その後、長い間を空けて………。


「私のこの想いは、きっと重みになるので」


「…………そんなことないと思うけど」


 そういうアンジェリカにローズは俯く。

 その時だった。背後から迫る足音に、アンジェリカとローズは同時に振り向く。


「アンジェリカ様」


 その男はドミニクだった。ドミニクは先ず、アンジェリカに頭を下げると、

「少し、ローズと話があるのですが……」

 と口にした。



「いいわよ。私はもう少しここにいるから」


「ありがとうございます」



 ドミニクの視線がローズへと移る。


「えぇ、わかったわ。行きましょう」


 ローズは立ち上がり、ドミニクと一緒に別の場所へと歩いていった。

















 それから数時間が経過する。


 地上の冥界の真反対。中央都市側に朝日が昇り始めよとしていた頃。



 冥界で倒れているカイロンに近づく影があった。


「カイロン、起きてくれ」


 カルケリルが強引に叩き起すと、カイロンは目を覚ました。

 長い焦げ茶色の髪の間から目を覗かせ、ぱちぱちと周囲を見渡す。


「…………………えっと、か、か、カルケリル?」



「そうだ。少し着いてきてくれよ」


 カルケリルは特に説明もしないまま、カイロンに言葉を向ける。



「…………わ、わかった」








 カルケリルに着いていくと、アンジェリカとその仲間たちが円をつくるように座っていた。


「え、し、知らない顔が、こ、こんなにいっぱい!?」


「とりあえず、そこに座ってくれるかい?」


 説明もないまま、カルケリルに促されてそれに従う。


「わ、分かったよ」


 カイロンの横にカルケリルも腰を下ろす。

 そして、真正面にいる別の男に視線を投げかけると、

「さて、バルレ。そろそろ話してもらおうか」

 と口にした。


 それを受け、バルレは頷き、みんなの顔をゆっくり見渡す。



「分かりました。まだ、全部を解読出来たわけではありませんが、話させて頂きます」



 そう言って取り出したのは、タクミたちが地下迷宮から持ち出した古い紙。

 掠れた文字は読み取りづらく、そろそろ、この世界で現在使われている文字とは少し違った形をしている。



 みんなが固唾を呑むように、バルレが持つ紙に視線を集める。



 そして、バルレは語りだす。


 この世界の真実を。



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