↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ妹にゾンビ(女の子)として死者蘇生されました  作者: ぽんすけ
第3章 「  」ーヒマワリー
53/84

53話 喧嘩するほど仲が良い関係かな

 美柑の家に泊まることになった日の翌日、僕はカーテンからわずかに覗く光で目を覚ました。一瞬、見慣れない天井に戸惑ってしまう。あれ? ここどこだっけ……。


 寝起きの頭で昨日の記憶を呼び起こしつつ、理解する。そうだ、昨日は美柑の家で泊まることになったんだ。それで夜は、美柑の部屋で美柑と一緒に寝ることになったけど、寝る前に美柑がしてくれたおクッキーのおかげで、変に意識することなく眠れたんだっけか。そのおかげか、ぐっすりと眠れたため、体は楽…………じゃない!?


「……すぅ……むにゃむにゃ、えへへ」


 隣でだらしなくよだれを垂らして眠る美柑が、僕の腕をがっちりとホールドして幸せそうな寝顔を浮かべていた。


(な、何で美柑が!?)


 美柑は自分のベッドで、僕は床に敷いた布団で寝たはずだ、昨日は!? それが、何で美柑が僕の布団に入ってきてるの!?


 美柑は眠りながらさらに僕の腕にその柔らかな胸を押し付けてくる。そのせいで、完全に意識が覚醒した。


「レンレン~……えへへっ……」


「ちょっ、み、美柑!?」


 や、やめてっ……これ以上押し付けないで!? 何とか美柑のホールドから逃れようとしても、思いのほか力が強く全然振りほどけないんだけど!?


「んっ、レンレン、そこは……!?」


 そこは何!? そんな危なげな声出さないで……って!? み、見えちゃう!? 無理やり振りほどこうとしたせいか、美柑のパジャマが乱れてしまい、肌色が覗いて見えてしまっていた。しかも、今一番見てはいけない谷間がわずかに見えてしまっている!?


「だ、誰か助けて……!?」


 必死に見まいと視線を逸らしつつ、誰かに助けを求めてしまう。それが届いたのか、僕のスマホから着信音が鳴りだした。幸いにもスマホは近くにあったため、ホールドされていない方の手で取り、画面を見た。けど、


「ね、寧っ……!?」


 それは助けなどではなく、むしろ火にそそぐ油のようなものだった。この状況で出るのはまずいため無視しようとするものの、着信音は一向に鳴り止まない。半ば諦めつつ、電話に出ることにした。


「も、もしもし?」


「……やっと出たわね、お姉様」


 電話越しから圧を感じ、僕の頬に冷汗がつたう。当たり前だけど、相当お怒りのようだ。


「お姉様がなかなか帰らないから、寧が直々に迎えにきてあげたわよ」


 ……え? 迎えにきたって、もしかして!? 途端に頭に警報が鳴り響いたものの、それは遅いことにすぐに気づいた。


「何だ、起きてるみたいだな。水城、お前の妹が迎えにきてるぞ」


 ドアが開かれ、桐花さんは僕にとって絶望を告げる一言を放った。お、終わったよ……。僕が絶望に顔を曇らせていると、桐花さんは僕たちを見て呆れ交じりにため息を吐いた。


「美柑から話は聞いていたが、お前たち、本当に仲が良いんだな」


 それだけ告げて、桐花さんは部屋を出ていった。何だろう、一瞬見えた桐花さんの優しく見守るような眼差しが、今の僕にはどこか申し訳なく感じてしまう。



「お邪魔させていただいた上に、朝食までご用意していただきありがとうございます」


 真倉家のリビングで、寧が目の前に用意された朝食を見て桐花さんに感謝の言葉を告げた。


「何、気にするな。一人分増えたところで大して手間は増えないしな」


 桐花さんの言葉に、寧が再度頭を下げて笑顔を浮かべる。だげど、僕にはわかるよ。寧の目の奥は全然笑っておらず、静かな怒りが滲んでいることが。当然、その怒りの矛先は桐花さんではなく、僕だけど。


 僕はなるべく寧を見ないようにし、朝食を食べることに集中しようとした。


「いっ!?」


「ん、どうした?」


 突然悲鳴を上げた僕を、桐花さんが訝しむような目で見てくる。僕は大丈夫ですというように苦笑いを向ける。桐花さんが首を傾げつつも、美柑を起こしにリビングを離れていった。その途端、僕の足を踏む寧の足先の力が強まった。


「痛たたたっ!?」


「ずいぶん楽しい夜を過ごしたようね、()()()


 足先の力を弱めないまま、寧が蔑んだ目で僕を睨みつけてくる。僕は歯を食いしばり反論する。


「べ、別に何もなかったよ!? 昨日はほら、あの天気だったから帰ろうにも帰れなくて!?」


「可愛い妹のためなら、例え嵐の中だろうと真っ先に帰ってくるのが兄というものではなくて?」


 本当に危機的な状況だったらそうするけど、昨日みたいな何でもない状況だったら、わざわざリスクを冒してまで危険に飛び込むことはしないよ!? ゾンビだから死なないかもしれないけどさ。


「まあ、けど今回はお兄様をあまり責めてはいないわ。お兄様よりも……」


 寧がそう呟いた後、階段を駆け下りる音が聞こえてきた。


「あー! 本当に寧ちゃんがいる!?」


 ドアが開かれた先から、美柑が驚いた顔で寧を指さしてきた。


「来たわね」


 その一言だけで、寧の言いたいことが全て伝わるかのようだった。瞬間、寧と美柑の間で火花が散る。


「昨日はよくもやってくれたわね、この泥棒猫」


「フッ、昨日は悔しさのあまり言葉も出てこなかったみたいだね。それと、泥棒じゃなくて怪盗だよ!」


 それどっちも一緒だよ。心の中でそうツッコミしつつ、この場に走った緊張感にハラハラする。しかし、そんな一触即発の雰囲気も、桐花さんがリビングに入ってきた瞬間に霧散した。


「ほら、さっさと顔洗ってきて、お前も朝飯食べろ」


 美柑はまだ何か言いたげな顔だったが、しぶしぶと洗面所に歩いていった。僕は思わず安堵の息を吐いてしまうのだった。



 朝食を食べ終え、桐花さんにお礼を伝えた後、僕は寧と美柑とともに学校に向かっていた。桐花さんというストッパーがいなくなったことでどうなるかとひやひやとしていたけど、さっきの雰囲気が若干残りつつも何も問題は起きていなかった。今のところは。


「ところでお姉様。寧に他に何か謝ることはあるかしら? もしくは、隠していることとか」


 そのさなか、寧が疑いの眼差しを向けてくる。


「な、何もないよ」


 若干どもりつつもそう答える。流れで美柑と一緒にお風呂に入ることになったけど、それを言ってしまうと鞭の刑を通り越して八つ裂きにされかねない。


「本当に? 今なら、まだ情状酌量の余地もあるわよ」


 それでも疑っているのか、寧が脅しをかけてくる。この感じ、何か言わなければ言わないで寧から疑いをかけられたままになりそうなんだけど。それだけは勘弁してほしいので、僕はあることを話すことにした。


「別に隠し事ではないけど、僕、天文部に入ることにしたよ」


 別に隠すようなことでもないし、どちらにせよ後々伝えようと思っていたことだ。この機会に話しておこう。寧の疑いを逸らす役割もあってちょうどいい。


「……天文部」


 しかし、寧はその場で立ち止まり、何かを考えるそぶりをはじめてしまう。そんな寧の様子に不安を覚えつつ、僕もその場に立ち止まる。


「ぶ、部活に入るくらいはいいよね? 体に負担をかけるような部活でもないし」


 さすがに部活に入ることくらいは許してほしい。そう願って寧を見る。


「別に部活くらいは構わないわよ。ただ、……そう、よりによって天文部にね」


 最後のほうの声は小さく、寧の顔に一瞬、どこか辛そうな表情が垣間見えた。何だろう、天文部に何かあるのかな。


「あ、ちなみに私も天文部に入ることにしたんだよ!」


 美柑がここぞとばかりに手を挙げてアピールしてくる。すると、寧は表情を切り替え、キッと美柑を睨む。


「あなた、美術部に入っているでしょう」


「そうだけど、両立ってやつだよ! 美術部の活動をしつつ、これからは天文部の活動もしていくつもりだよ!」


 美柑はどこか自慢げに言ってみせる。そんな美柑に、寧の視線はさらに鋭くなっていく。


「……いい度胸ね。けど、あまりいい気にならないほうが身のためよ。寧の力を使えば、あなたを追い出すことは簡単なのよ」


「ひどい!? けど、寧ちゃんが本気でそんなことする子じゃないことは知っているから、そこまで怖くはないかな!」


 寧の言葉をただの冗談だと思った美柑は笑い、そんな様子の美柑に寧はそっぽを向いてしまう。図星を突かれて何も言えないかのような寧に、僕は苦笑いを浮かべてしまうのだった。


 この二人、お互いを敵視している節はあるけど、実のところ仲は悪くないんだよな。それはいいことなんだけど、寧の態度にはやっぱり目を見張るものはある。だって、寧がここまで他人と、それも僕に好意を寄せてくる女の子と仲良くなることなんて今までなかったから。


 少し不思議に思いつつも、良い変化なのは間違いない。寧の兄としては嬉しい限りだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。