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雨の日の御伽噺  作者: 雨月 千疾
37/50

雨の景色と境界線

仮面をつけた人がいた

そんな人はこれまでもたくさんみてきた

なのに何故だか

無性になにかが湧いてきた

『ああぁぁああああああぁ』

心の底がひっくり返るような

叫び声が聞こえた

ちがう

僕の声だった

目の前にいる人に飛びかかった

どこから持ってきたのか

殺意でずたずたに引き裂いた

仮面の下の顔を見ずに

元は人だという事実さえ

なくなるくらい

殺した

何故こんなにも

殺したくなったのかもわからない

だけれど

途中からは狂気は興奮に変わっていた

ふと我が戻った

目の前には元が分からないだけの

血に塗れた肉塊があった

こんなにも訳の分からない

それ故に愛しさを覚えた

途端に自分が憎らしく思えた

僕がいなかったら

良かったのかな?

僕がいなかったら

この人はもっと幸せだったんだろうな

なにもかもが終わった

今そんな事を考えても意味が無いのに

希望の見えない海でそんな事を知った

目を瞑って視界が闇に覆われた

心が少し軽くなった気がした

死のうとか死ぬとかいつも考えてる

でも死ねたことなんて一度もない

目を開いても見えるのは

自分が壊して

自分を壊そうとしてる

世界が見えるだけだ

雨の音がした

目の前にあったのは

先程と何ら変わらない

血と肉の塊だった

それに意思はないんだから

僕が変えようと思わなければ

変わらないよな

どうでもいいとこばっか

気づいたフリして

頭の中には

あちこちに境界線が引かれて

言い訳ばかりで埋め尽くされた

雨が強くなった

肉から血だけを流していく

この雨の音とこの景色だけを

ずっと眺めてられたら

なんて思った

独りなんだよやっぱり僕は

何もかもに取り残されて置いてかれる

道端に落ちたそれを背にして

僕は歩いた

雨がずっと降る闇の中を

今日を攻めてしまわないよう

明日になったら

また何か変わるのかもしれない

なんて考える

けど明日のことなんて

知らないし

知りたくもない

考える事が嫌になって

雨の音だけに耳をすませた

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