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顔の見えない微笑み
曇り空の下
どこかの街にいた
人の気配どころか生き物もいない
廃れた街だった
人を探すわけでもなく
意味もなく歩いていた
『君はどこから来たの?』
振り向くと髪の長い女の子がいた
影がかかって顔が分からなかった
『君はどんな子?』
分からない
きっと普通ではないと思う
『普通って何?』
みんなのこと
僕以外の人たち
周りに人がいて
死ぬことができる人
『それが君にとっての普通?』
僕にとっての普通じゃなくて
みんなが共通してる事
だから普通なんだ
『普通って何?』
さっき答えた質問をまたしてくる
壊れた機械のように首を傾げる
やっぱり顔が見えない
『君は普通じゃない?』
普通じゃないよ僕は
僕は異常なんだ
みんなとはちがう
だから死ねない
『普通じゃないとみんなと居られないの?』
だから僕は独りなんだ
『ふーん』
聞いてきたのに
興味なさそうな返事が帰ってきた
『普通って難しいね』
顔が見えないのに
微笑みかけられた事は分かった




