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凶器
目の端の方で火の手が上がった
それを横目に通り過ぎた
『見捨てられたの』
憐れな声がした
聞こえぬふりをして進んだ
『聞こえてるでしょ』
進んだのにまたあの声がした
『あの人に会いたい』
声が震えはじめた
『貴方なら会わせれるでしょ』
声が叫び声に変わった
僕はそんな事出来ないよ
『あの人の元へ行きたい』
懇願する声になった
人に会いたいとか
捨てられたとか
その気持ちとか
わからないから
何も出来ない
通り過ぎると声がいなくなった
無垢は時に人を殺す
無垢は時に凶器になりうる
知らないうちに殺した命が
誰にだってある




