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異世界のヤツらに情報を制するものが世界を制するって教えてやんよ!  作者: 新開コウ
第2章 学園の支配者

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第85話 学園の支配者?

 入学試験の筆記試験会場でもあった、劇場のようなすり鉢状の大教室に、少し間隔を詰め気味に約400人の生徒が座っている。


 ほぼ全校生徒だ。


 今日は第1回目の委員会活動。



 来ていないのは、ノバクとペトラ殿下を始めとした、オレに教えられることがどうしても我慢できない生徒たち。


 ノバクとペトラ殿下は何とか潰そうと王に翻意ほんいを促したが、却下され説得を受けていた。


 アカシャにその様子を教えてもらったが、少なくとも戦争が終わるまでは我慢しろと言われていた。


 戦争が終わったら、どうなるのかね?

 まぁ、いいか。どうなるにしろ、分かってからの対応で十分間に合うというのが、オレとアカシャの見解だ。



 一番前に設けられた教壇きょうだん付近に、オレを含む委員会メンバーと、学園長とアレクとネリーが立っている。


 学園長とアレクとネリーには、指導役として手伝いをお願いしている形だ。



「効率的に魔力を上げるための秘訣、これは瞑想にあります。実は、教科書に載っている瞑想法は正しくないのです。…」



 オレは全体に向けて講義をする。


 教科書に載っている、瞑想時に浮かんでいる全ての魔力の玉を遠くから同時に見つめる方法を否定し、核魔力という1つの魔力の玉を見つめる方法が正しいことを教える。



「大変なのは、どれが核魔力なのかを覚えることです。魔力の玉はどれも似たような色をしていますから。…」



 魔力の玉はどんなにレベルが上がっても、完全に同じ色の玉は現れない。頑張って核魔力の色を覚えるように言った。



「核魔力の色の覚え方は主に2つ。レベル1の時に覚えてしまうか、魔力の玉が残り1つとなるまで魔力を消費してから覚えるかです。…」



 ここにいる生徒は全員、基本的には後者で覚えるしかない。


 瞑想で魔力が増えるのは魔力が全快のときのみなので、覚えるまでは効果が実感できなくて辛いであろうことは言い添えておく。



「では、ここからは演習です。今日は魔力の玉が1つになるまで魔力を消費する時間はないので、特殊な方法を使います。自分ではできないはずなので、個人でやるときは通常の方法を使って下さい」



 一通り説明をし、質問を受け付けた後、演習を始める。

 まずは指導役が生徒達に、番号のついた木の板を配っていく。

 1番前の生徒が受け取って、1枚とって残りを後ろの生徒に手渡し、それを繰り返して生徒達に木の板が行き渡っていく。



「ふむ。興味深いのぉ。これでどうやって核魔力を見分けるというのか…」



 木の板が渡っていく様子を見ながら、学園長がオレに小さな声で話しかけてくる。


 委員会のメンバーも同じことを思っていたのだろう、オレに視線が集まった。


 アレクとネリーを除く指導役には、何をしてほしいかだけ説明して、詳しいことは言っていない。

 言えないことだからだ。


 オレは不敵な笑みっぽいものを浮かべて誤魔化しておく。

 学園長とか、たぶんそういうのを知るために参加するって言い出したんだと思うし。



「では、受け取った板を目の前の机に置いて、各自瞑想をしてください。どれでもいいので、魔力の玉を1つだけ見つめること。僕が合図をしたら別の魔力の玉を見つめて下さい」



 オレがそう説明すると、生徒たちが一斉に瞑想をし始める。

 いいね。みんな真剣だ。

 ミカエルも1番前の席で、講義の時から誰より真剣に話を聞いていた。

 魔力の多寡たかで人生が左右されることもあるからな。



『さ、やるぞアカシャ。スルティアに番号を教えてやってくれ』


『お任せ下さい』



 アカシャがオレの肩から消え、スルティアのところに向かった。

 念話を使わないのは、魔法の気配を学園長に悟らせないためだ。

 誰がどうやったかは想像の域を出ないようにしておく。



 アカシャが消えて少しだけ待つと、何人かの生徒たちの前に置かれている木の板から枝がピョコッと飛び出し、先に緑の葉っぱを付け始めた。


 核魔力を見つめて魔力が増え始めた生徒の木の板の番号をアカシャが読み上げ、スルティアがその番号の木の板を『支配者権限』で変化させているのだ。


 木の板は学園内の木を切って作ったものなので、ダンジョンの一部であり、スルティアなら自由にできる。

 学園7不思議の『生きた森』の応用だ。



「が、学園の支配者…?」



 学園長の少し声が大きくなったつぶやきには答えない。



「指導役の方は、打ち合わせどおりにお願いします。今から何人かの生徒の肩を叩きますが、変わらず瞑想に集中してください」



 そう言って、生徒たちの方へ歩き始める。

 先に言っておくのが重要だ。驚いて瞑想解いちゃったら、どの玉見てたか分からなくなるからな。



「テスト勉強じゃないから、簡単ね!」



 テスト勉強で少し壊れてしまっているネリーが、よく分からないことを言って続く。

 うん。合図が出た生徒の肩を叩いていくだけだからね。簡単だよね。


 アレクも苦笑いしながら、さらに続いた。

 学園長を含めた他の指導役もそれに続く。




「肩を叩かれた生徒は、今見ている魔力の玉が核魔力です。演習の終わりまで見つめ続け、できれば色も覚えて下さい。叩かれていない生徒は、別の魔力の玉を見つめてください」



 指導役で手分けして、合図が出ている生徒全員の肩を叩き終わった後、説明を行う。


 これを繰り返して、全員に核魔力を把握させる。

 すごく記憶力が良い生徒なら、今日だけで色を覚えられる可能性もある。



「こんな方法が…」



 学園長がギラギラした目をして、面白いひげをいじっている。

 何か思いついたのかな。

 王には報告するだろうから、後で確認しておこう。






 第1回の委員会活動は大成功と言っていい形で終わった。

 生徒たちにも大好評だったようだ。


 よほど自信がある生徒を除き、自主練では魔力の玉を1つにして色を覚えるように言ってある。

 間違えていても自分では気付けないだろうからね。


 ほぼ全員が覚えるまで、しばらくは月曜は正しい瞑想をする演習をする予定だ。



 学園長はやはりあの時思いついていたらしく、王へ報告していた。

 王、宰相、大賢者、ノバクやペトラ殿下はその方法で試したようだ。

『魔力可視化』の人が魔力の増加を確認して、正しく核魔力を見つめているか調べる方法。


 だが、その結果は失敗だった。

 理屈としては合っているんだけど、『魔力可視化』の人では増加を確認できなかったのだ。

 仕方のないことだ。

 コップに入れた水に数滴水を足したところで、増えたかどうかを目視で確認できる人なんてまずいない。

 それと同じ。


『魔力数値化』などの能力者を探すか、頑張って普通の方法で覚えてほしい。

 ノバク、ペトラ両殿下は委員会に参加しなかったのに、文句言うのは筋違いだろう。



 これも後日アカシャから聞いたのだけど、どうやら学園長の言葉を覚えていた生徒がいたらしく、この日を境にオレのことを影でこう呼ぶ者が出始めたしい。


『学園の支配者』と。


 スルティアを隠すため、わざと誤認させるようなことをしたりもしたけれど。

 生徒に間違った意味で、二つ名のごとく使われると超恥ずかしい…。

 知らないことにしておこう。

 情報は、知らないほうがいいこともあるよね。





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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく拝見させていただいています。 気になるところがないので、糧になるような有用な指摘などは出来ませんが、これからも作者様の中に思い描く物語を見せて欲しいなと思います。 このような面白…
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