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あなたの心の中に、他の女性がいることは知っていました。  作者: Kouei


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1/6

第1話 あなたの心の中



 ―――――あなたの心の中に彼女がいることは、知っていました。


 それでもいつか私を見て下さったら…と願っていた。


 けれどその願いが叶う事は……なかった―――――





 旦那様の隣に一人の女性が立っていた。

 ()()()()の美しい方…


()()女性だ…)

 私はすぐに気が付いた。




「……実は…彼女……妊娠しているんだ…」



 ドクン



 旦那様の言葉に、鼓動が胸を打つ。


 まさか…


 旦那様の言葉は、私の不安を確定させた。




「僕の子だ」




 私の幸せが終わった瞬間だった…



 そして



 あなたの本当の幸せが、これから始まるのね ―――――…




 ◇




「奥様、旦那様がお戻りになりました」


 朝食後、自室で(くつろ)いでいる私の元に、旦那様が帰宅した事を知らせにきた侍女。


「すぐに向かうわ」



 私はキュリア・ヴィアンテ。

 17歳の時に7つ上のディオン様と結婚して半年。

 昨夜は寄宿学校時代の創立80周年記念祝賀会に出かけて行った旦那様。

 久しぶりのご学友との交流だからゆっくりしてくると(おっしゃ)ってた。



『いってらっしゃいませ、旦那様』

『ああ、もしかしたら会の後、エルジョンのところに泊まるかもしれないから先に休んでて』

『はい』



 エルジョン様とは寄宿学校を卒業しても交流が続いていた。

 よく訪ねてくることもあった。


 結局、昨夜はお帰りにならなかった旦那様。

 きっと懐かしいご学友たちと盛り上がり、そのままエルジョン様のお屋敷に泊まられたのだろう。

 私はそう思っていた。



 


 翌朝、帰宅した旦那様を出迎えるため、私はエントランスへと向かった


「お帰りなさいませ、旦那様。祝賀会はいかがでしたか? すぐに朝食を準備しますので…」

 

「……あ、ああ…っ 朝食はいらない。疲れたから少し休むよ」


「!」


 そう言いながら旦那様は私の横を通りすぎた。

 その時感じた甘い香り。


 旦那様は寄宿学校だったから…男性しかいらっしゃらないはず。


「……」


 でも…ホテルのホールを貸切って(おこな)われると(おっしゃ)っていたから、他にもたくさんのお客様が出入りされていたのだろう。

 香りが移ることくらいあるわよね。



 一瞬の疑惑はすぐに消えた。



 けれどその日を境に、旦那様の態度に違和感を持つようになった。

 私には普段通りに振舞っていたけれど、いつも何か考え事をされている。


 私の目を避けるようになった。

 触れ合う事はなくなった…


 あきらかに様子が変わったのは、祝賀会に行ってからだった。


 あの日…何かあったのだろうか?

 思い出すのは、帰宅された時に旦那様から漂った甘い香り。


 パタン


 自室に戻った私は、読むともなしに開いていた本を閉じ窓の外を眺めた。



 それに…

 私は知っている。


 旦那様には、忘れられない方がいるという事を。


 


 “この方には、心に想う方がいる”




 その事に気がついたのは、婚約時代。

 彼はいつも誰かを探していた。


 そしてその視線の先には、決まって長い黒髪の女性がいた。

 私は思わず聞いてみた。



『お知り合いですか?』

『あ、いや、その…知り合いに似ている気がしたから…』

『そうですか』



 その時は何も思わなかった。

 けど、同じ事が繰り返されれば誰でも分かる。



 彼の心の中には、忘れられない女性がいるのだと…



 その方は…金髪で癖髪の私とは正反対の、黒髪の女性。


 気にならないと言ったら噓になる。

 けど、人の心はままならない。

 たとえ自分自身の事でも、気持ちをコントロールする事なんてできないのだから…


 そして私は思い出した。

 その女性はきっと()()()()()だ。


 

 ふと(よみがえ)る昔の記憶。

 私だけの想い出。



 あなたにとっては、ささいな事だったのかもしれない。

 でも、私にとっては忘れられない出来事だった。



 一時の淡い時間。


 

 私は7年前の記憶を引き出していた。



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