お風呂場戦争
普段は、優しさと安らぎを与えてくれる風呂であるが、ひと月またひと月半に一度だけ、非情な戦いの火蓋が切られる。
「あ、シャンプーもう少ないじゃん」
それが合図だ――
一家全員面倒臭がりなため、誰一人として無くなりそうなシャンプーを、それかコンディショナーを詰め替えようとはしない。なので勃発する『いかに自分が風呂のときに回避する』かを考えねばならないのだ。
一番に気づくものは、先のセリフを吐くやつだ。誰しもそろそろヤバイんじゃないかと思いながらも知らんぷりしていたのに…… 一番風呂はそうして余裕綽々で出て行く。
次に二番目、サッサと入ろうと準備万端で待っていたが、運悪くトイレット。そのすきにパンツすら持たずに横から獲物を掻っ攫うが如く入浴するのが真の二番目手というもので、こいつはまだ大丈夫だろうと、壊れてしまいそうなほどガショガショ全力でノズルを動かし無事終える。
そして、三番目辺りから一気に戦いは激しくなり、ノズルを外してボトルを逆さまに、手のひらにポンポンする。そう…これでもかってほどに。
で、四番目はたまに「朝に入ったから」と離脱することもあり、そんなときは長期戦を覚悟しなければならない。
「先に入っていいよー」
「テレビ見てから入るからー」
などと、今度はさり気なさを装ってなかなか誰も風呂に入ろうとせず、優しさという罠を持ち寄り上手いこと口車に乗せてやろうと画策するのである。
次にあたるやつが、ボトルに少量のお湯ないし水を入れて振らねばならないことを… 薄まりすぎて洗っていられないことを… それが負けを意味していることを…
私たちは、知っているのだ――




