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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第三章 冥幽との邂逅
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22-B -闇からの訪れ-

 冥幽界(めいゆうかい)からやってきた紫闇(しおん)から事情を聞いた蒼輝達。紫闇を狙う悪魔から匿(かくま)うか否かで衝突(しょうとつ)しかけた蒼輝(そうき)と勾玉(まがたま)。一度、考えを纏(まと)めるために皆は外へ出るのであった……。


 蒼の館から出て歩く勾玉。その後ろを歩くのはマテリア。特に用事があるわけではないが、蒼輝と衝突しかねなかった雰囲気(ふんいき)だったため、放(ほう)っておけなかった。


勾玉「……」


マテリア「……」


 マテリアは黙(だま)っていた。特に気まずいわけではないが、声を掛(か)けれずにいた。風魔(ふうま)は外に出るなり、一人で何処(どこ)かへ行ってしまった。何も言わずに歩いていると、カノンの墓のある断崖(だんがい)に来ていた。


勾玉「マテリア」


マテリア「は、はいですっ!」


 突然、遠くの水平線(すいへいせん)を眺(なが)める勾玉に声を掛けられて驚(おどろ)く。


勾玉「俺(おれ)は、紫闇(しおん)を守る自信が無い。だから匿(かくま)うことはしないと言った」


マテリア「そんな…勾玉さんみたいに強い人なら、きっと大丈夫です」


 マテリアは励(はげ)ましたつもりはなかった。自分の思う本音。マテリアは勾玉の強さに憧(あこが)れていた。強くて冷静で、それでいて真っ直ぐで芯(しん)の強い。自分とは真逆の存在だと思っていたからだった。

 そんな勾玉の揺れる長い黒髪。その背中は少し寂(さび)しげに見えた。


勾玉「マテリアは、その場に居なかったから知らないだろうが……俺はイーバ幹部(かんぶ)のマッドに手も足も出なかった」


マテリア「えっ…?」


勾玉「奴の得意である剣で戦ったこと自体が間違いだったかも知れん…。だが、俺が完敗(かんぱい)だったのは事実だ…助けが入らなければ俺は死んでいた」


マテリア「勾玉さん…」

 

 マッドと対峙(たいじ)した勾玉。その剣技の前に為(な)すすべもなくやられてしまった。勾玉は、ポケットから収納札(イクリプス)を取り出した。それは牙蛇剣(がじゃけん)ファング・ブレード。マッドに折られてしまい、使い物にならなくなっていた。


勾玉「もう俺は…剣を握ることはない…」


マテリア「そんな…」


勾玉「……元々、剣は得意ではない。やはり俺は飛竜(ひりゅう)一族…。一族の得意とする戦い方しか出来んのだろうと悟(さと)った…」


 勾玉は拳(こぶし)を握(にぎ)り締(し)めた。そこには燃え上がる炎。悔(くや)しさや決意が宿(やど)った熱い心を象徴(しょうちょう)しているかのようだった。

 マテリアは、その姿を見て勾玉の強さを痛感(つうかん)した。この人は負けたことで、もっともっと強くなるのだろうと。そして、自分も強くなりたい…そう、思っていた。


 


 港(みなと)へ行くというバサラ。恋人同士二人きりが良いだろうと思って別行動にしようとしたが、バサラはマリアにも紫闇のことや冥幽界(めいゆうかい)について話をしたいと言うことで、蒼輝達を港へ誘(さそ)った。


 しばらくすると、船が到着した。そこから純白(じゅんぱく)の聖衣(せいい)を身にまとった聖女が降りてきた。そして、教会の独自(どくじ)の挨拶(あいさつ)をした。


マリア「皆さん、マナ・エスディ…ごきげんよう」


 マリアは教会から自由に出られる身では無く、ノスタルジアに住むわけにはいかない身。なので一週間に一度か二度ほどのペースで、ノスタルジアに訪(おとず)れていた。


バサラ「マリアー会いたかったぜー! イテッ!」


 マリアに抱きつきに行ったバサラは、コツンと軽くロッドで頭を叩かれて静止した。


バサラ「イタタタ……ん?」


 マリアにばかり目が行ってしまい、気付いてなかった。もう一人、船から降りてきた聖女がいた。マリアの銀色の髪とは対照的(たいしょうてき)な、金色の髪を後ろでゆるめの三つ編みにした少し幼(おさな)い顔の少女。バサラをロッドで叩いたのはこの少女だった。


マリア「こちらは後輩(こうはい)のリリア。どうしても来たいと言うので…」


挿絵(By みてみん)

リリア「マナ・エスディ…。り…リリア・アグライアです。よろしくお願いします」


 少々オドオドした緊張している様子で、ペコリと頭を下げた。


バサラ「俺、なんで叩かれたんだ……」


蒼輝「後輩のリリアか、よろしくな」


颯紗「よろしくお願いします……」


奈樹「どうしてまた、ノスタルジアへ?」


リリア「最近、マリア様の様子がおかしいので、問い詰めたんです」


バサラ「様子がおかしい?」


 マリアは顔を伏(ふ)せていた。顔を赤くしている。


奈樹「バサラさんと会えるのが楽しみなんですね」


リリア「これは見逃すことはできません。後輩として、教会の者としてマリア様の身を守らなければいけません!」


マリア「私はここに来るのは一人でも平気なんですけど…こういった感じなので…」


 マリアは少しだけ困った様子の表情を浮かべた。


バサラ「なるほど。よろしくな、リリアの姫」


リリア「そ…その呼び方と、先程の行動……やはり、貴方様(あなたさま)がバサラ様ですね…?」


バサラ「おっ、マリアから聞いてるのか」


リリア「お伺(うかが)いしています。楼黤(ろうあん)王国の一件は残念(ざんねん)に思います……しかし、マリア様に手を出すのであればお許しいたしません!」


 大きな可愛(かわい)らしい瞳(ひとみ)でバサラに鋭(するど)い視線を送った。


バサラ「……ん?」


リリア「マリア様は教会の未来です。いくら一国の王子と言えど、マリア様の純潔(じゅんけつ)をお渡しするわけにはいきません」


奈樹「じ…純潔…」


マリア「ちょっとリリア…あの…私はそういった…」


バサラ「そうだぜ、リリアの姫。そりゃマリアには、いつか跡継(あとつ)ぎを二人や三人ほど産んでもらうことになるだろうけど、それは二十歳(はたち)になるまで待つって約束して…」


リリア「あ…跡継ぎ!?」


マリア「ちょっと…そんな具体的(ぐたいてき)な話は一度もしたこと…」


リリア「ダメですダメです! マリア様は教会の…教会にとって特別なお方なんです!」

 

 ダダをこねるように言うリリア。しかし、引き下がらないバサラ。


バサラ「俺にとっても特別サ。なんたって妃(きさき)になる女なんだからな」


マリア「ふ…二人共(ふたりとも)落ち着いて…」


 マリアを巡(めぐ)って、どんどん修羅場(しゅらば)になってゆくバサラとリリア。バサラはともかく、リリアの送る視線には火花が散っているように見える。


奈樹「ほ…本題…切り出していいのかな…」


颯紗「それってなんだったっけ…」


 今の様子に、何をしにここまでやってきたのか忘れがちになっていた。


奈樹「ほら、冥幽界とかについて…」


蒼輝「そういえばそうだったな…状況に呑(の)まれてすっかり忘れてたぜ」


 こうして、蒼輝、奈樹、颯紗、バサラ、マリア、そして教会の後輩聖女リリアと一緒に、紫闇と遭遇(そうぐう)した浜辺へと向かった。

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