22-B -闇からの訪れ-
冥幽界からやってきた紫闇から事情を聞いた蒼輝達。紫闇を狙う悪魔から匿うか否かで衝突しかけた蒼輝と勾玉。一度、考えを纏めるために皆は外へ出るのであった……。
蒼の館から出て歩く勾玉。その後ろを歩くのはマテリア。特に用事があるわけではないが、蒼輝と衝突しかねなかった雰囲気だったため、放っておけなかった。
勾玉「……」
マテリア「……」
マテリアは黙っていた。特に気まずいわけではないが、声を掛けれずにいた。風魔は外に出るなり、一人で何処かへ行ってしまった。何も言わずに歩いていると、カノンの墓のある断崖に来ていた。
勾玉「マテリア」
マテリア「は、はいですっ!」
突然、遠くの水平線を眺める勾玉に声を掛けられて驚く。
勾玉「俺は、紫闇を守る自信が無い。だから匿うことはしないと言った」
マテリア「そんな…勾玉さんみたいに強い人なら、きっと大丈夫です」
マテリアは励ましたつもりはなかった。自分の思う本音。マテリアは勾玉の強さに憧れていた。強くて冷静で、それでいて真っ直ぐで芯の強い。自分とは真逆の存在だと思っていたからだった。
そんな勾玉の揺れる長い黒髪。その背中は少し寂しげに見えた。
勾玉「マテリアは、その場に居なかったから知らないだろうが……俺はイーバ幹部のマッドに手も足も出なかった」
マテリア「えっ…?」
勾玉「奴の得意である剣で戦ったこと自体が間違いだったかも知れん…。だが、俺が完敗だったのは事実だ…助けが入らなければ俺は死んでいた」
マテリア「勾玉さん…」
マッドと対峙した勾玉。その剣技の前に為すすべもなくやられてしまった。勾玉は、ポケットから収納札を取り出した。それは牙蛇剣ファング・ブレード。マッドに折られてしまい、使い物にならなくなっていた。
勾玉「もう俺は…剣を握ることはない…」
マテリア「そんな…」
勾玉「……元々、剣は得意ではない。やはり俺は飛竜一族…。一族の得意とする戦い方しか出来んのだろうと悟った…」
勾玉は拳を握り締めた。そこには燃え上がる炎。悔しさや決意が宿った熱い心を象徴しているかのようだった。
マテリアは、その姿を見て勾玉の強さを痛感した。この人は負けたことで、もっともっと強くなるのだろうと。そして、自分も強くなりたい…そう、思っていた。
港へ行くというバサラ。恋人同士二人きりが良いだろうと思って別行動にしようとしたが、バサラはマリアにも紫闇のことや冥幽界について話をしたいと言うことで、蒼輝達を港へ誘った。
しばらくすると、船が到着した。そこから純白の聖衣を身にまとった聖女が降りてきた。そして、教会の独自の挨拶をした。
マリア「皆さん、マナ・エスディ…ごきげんよう」
マリアは教会から自由に出られる身では無く、ノスタルジアに住むわけにはいかない身。なので一週間に一度か二度ほどのペースで、ノスタルジアに訪れていた。
バサラ「マリアー会いたかったぜー! イテッ!」
マリアに抱きつきに行ったバサラは、コツンと軽くロッドで頭を叩かれて静止した。
バサラ「イタタタ……ん?」
マリアにばかり目が行ってしまい、気付いてなかった。もう一人、船から降りてきた聖女がいた。マリアの銀色の髪とは対照的な、金色の髪を後ろでゆるめの三つ編みにした少し幼い顔の少女。バサラをロッドで叩いたのはこの少女だった。
マリア「こちらは後輩のリリア。どうしても来たいと言うので…」
リリア「マナ・エスディ…。り…リリア・アグライアです。よろしくお願いします」
少々オドオドした緊張している様子で、ペコリと頭を下げた。
バサラ「俺、なんで叩かれたんだ……」
蒼輝「後輩のリリアか、よろしくな」
颯紗「よろしくお願いします……」
奈樹「どうしてまた、ノスタルジアへ?」
リリア「最近、マリア様の様子がおかしいので、問い詰めたんです」
バサラ「様子がおかしい?」
マリアは顔を伏せていた。顔を赤くしている。
奈樹「バサラさんと会えるのが楽しみなんですね」
リリア「これは見逃すことはできません。後輩として、教会の者としてマリア様の身を守らなければいけません!」
マリア「私はここに来るのは一人でも平気なんですけど…こういった感じなので…」
マリアは少しだけ困った様子の表情を浮かべた。
バサラ「なるほど。よろしくな、リリアの姫」
リリア「そ…その呼び方と、先程の行動……やはり、貴方様がバサラ様ですね…?」
バサラ「おっ、マリアから聞いてるのか」
リリア「お伺いしています。楼黤王国の一件は残念に思います……しかし、マリア様に手を出すのであればお許しいたしません!」
大きな可愛らしい瞳でバサラに鋭い視線を送った。
バサラ「……ん?」
リリア「マリア様は教会の未来です。いくら一国の王子と言えど、マリア様の純潔をお渡しするわけにはいきません」
奈樹「じ…純潔…」
マリア「ちょっとリリア…あの…私はそういった…」
バサラ「そうだぜ、リリアの姫。そりゃマリアには、いつか跡継ぎを二人や三人ほど産んでもらうことになるだろうけど、それは二十歳になるまで待つって約束して…」
リリア「あ…跡継ぎ!?」
マリア「ちょっと…そんな具体的な話は一度もしたこと…」
リリア「ダメですダメです! マリア様は教会の…教会にとって特別なお方なんです!」
ダダをこねるように言うリリア。しかし、引き下がらないバサラ。
バサラ「俺にとっても特別サ。なんたって妃になる女なんだからな」
マリア「ふ…二人共落ち着いて…」
マリアを巡って、どんどん修羅場になってゆくバサラとリリア。バサラはともかく、リリアの送る視線には火花が散っているように見える。
奈樹「ほ…本題…切り出していいのかな…」
颯紗「それってなんだったっけ…」
今の様子に、何をしにここまでやってきたのか忘れがちになっていた。
奈樹「ほら、冥幽界とかについて…」
蒼輝「そういえばそうだったな…状況に呑まれてすっかり忘れてたぜ」
こうして、蒼輝、奈樹、颯紗、バサラ、マリア、そして教会の後輩聖女リリアと一緒に、紫闇と遭遇した浜辺へと向かった。




