↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第三章 冥幽との邂逅
93/176

22-A -闇からの訪れ-

 浜辺に居た奈樹(なじゅ)と颯紗(さらさ)の前に突如(とつじょ)姿を現した女性、紫闇(しおん)。その正体は悪魔。冥幽界(めいゆうかい)という悪魔の棲(す)む世界から来たという。


 蒼の館の一室。話によると、紫闇は魔王の手によって妃(きさき)にされそうになっている。そこから逃亡して、別世界である蒼輝(そうき)達の住む世界……つまり生幽界(せいゆうかい)に逃げ込んできたのだという。


蒼輝「魔王って…スケールがデカイな…」


月花(げっか)「その魔王っていうのは…」


紫闇「アスモデス…それが奴の…私を狙(ねら)う者の名前…」


 現在の冥幽界には三つの城と国があるという。そこへアスモデスが新勢力(しんせいりょく)として新たな城を建設(けんせつ)し、国の魔王となろうとしている。


紫闇「新国の条件……それには王と妃が必要だ…。そこで…近隣(きんりん)の村で警備兵(けいびへい)をしていただけの私に、白羽(しらは)の矢(や)が立った」


月花「どうして紫闇さんに?」


紫闇「私は比較的(ひかくてき)に純粋(じゅんすい)な人間に近い姿をしている……。それをアスモデスは気に入ったそうだ……。そして私の前に現れたのはアスモデスの配下(はいか)である、『アスモデス四死公(ししこう)』」


蒼輝「四死公……?」


紫闇「アスモデスが集めた精鋭だ。悪魔のおおよその強さはナンバーを与えられた階級で決まる。それが第零(ゼロ)に近い程(ほど)、実力が上……。第七(セブンス)悪魔(デーモン)である私程度では、四死公の前に為(な)すすべもなくやられ、無理矢理(むりやり)捕(とら)らえられた。そして…」


 皆は黙(だま)っていた。しかし、待っていても何も言わなかった。痺(しび)れを切らした蒼輝が問いただした。


蒼輝「そして…どうなったんだ?」


 紫闇は俯(うつむ)いたままだった。しかし、ゆっくりと口を開いた。


紫闇「奴は…いつまでも抵抗(ていこう)する私を自身の所有物(しょゆうぶつ)とするために…刻印(こくいん)をつけた…」


勾玉(まがたま)「刻印…?」


 紫闇は悲しげな表情を浮かべて顔を上げ、蒼輝達のいる方を見た。そして…。


マテリア「ひっ…!」


奈樹「…!」


 奈樹の手を握っていた颯紗の手が強く握られた。その意味は、恐怖。


風魔「…酷(ひど)いことをするもんだね」


 紫闇は手で髪を掻(か)き分けたのだ。髪で隠れた左眼を皆に見せた。そこに、眼は無かった。

 目のあるはずの位置は焼けただれたような痕(あと)と、闇のように深く小さな赤いコアのような物が蠢(うごめ)いていた。髪を抑(おさ)えていた手を放し、髪で再(ふたた)び眼を隠した。


紫闇「奴は…私から力だけでなく、眼も奪(うば)った…。私を傷つけることで、自分のモノであると証明すること…そして私に所有物であると自覚(じかく)させること…」


蒼輝「ヒデェ…」


月花「これは許されることではありませんよ…」


 しばらくの静寂(せいじゃく)。皆は紫闇が可哀想(かわいそう)に思えてならなかった。そして紫闇が敵ではなく、寧(むし)ろ被害者(ひがいしゃ)なのだと判断するには十分すぎる話だった。


奈樹「あの……力だけでなく奪ったって、どういうことですか? まるで力をどうにかして奪われたかのような……」


紫闇「アスモデス自身は……そこまで大きな力を持っていない…。だが……奴は悪魔の力を吸収する能力を持っている…」


風魔「なるほど…その能力があれば、いずれ魔王を名乗(なの)るのも夢物語(ゆめものがたり)じゃない」


 そうなれば、いずれ紫闇は魔王の妃に……いや、それどころか未来永劫(みらいえいごう)、アスモデスに抵抗する力を奪われ続けるだけじゃなく、力を得るための養分となり、悲惨(ひさん)な道を進むしかないということになる。


奈樹「…こんな話を聞いた上で…紫闇さんをアスモデスに明け渡すなんて私には出来ません」


バサラ「そうだな、紫闇の姫をこの島に匿(かくま)おうぜ」


勾玉「…それは良い判断とは思えんな」


 皆が勾玉を見た。


マテリア「どうしてですか? 勾玉さん。 紫闇さんがこんなに困っているのに…」


勾玉「いくらなんでも相手が強大すぎる。イーバのような人間が作り出したE兵器(クリミナル)などとは違う。悪魔や魔王となれば、ノスタルジアそのものが無事で済むとは思えん。紫闇を匿(かくま)うことは、俺は反対だ」


蒼輝「勾玉…じゃあ紫闇を見捨てろっていうのか!?」


勾玉「そうだ」


 蒼輝の問い掛けに、即答(そくとう)する勾玉。今にもぶつかり合いそうな緊迫感(きんぱくかん)が部屋中に漂(ただよ)う。


風魔「落ち着きなって蒼輝。勾玉の言うことにも一理(いちり)ある。紫闇をこの島に置き続けることは、今までのE兵器(クリミナル)やE生物(スティグマ)を守るのとはワケが違う。匿(かくま)ったことで逆鱗(げきりん)にでも触れたら、その魔王って奴に島ごと木(こ)っ端(ぱ)微塵(みじん)にされちゃうかも知れない」


蒼輝「けど…!」


勾玉「少なくとも俺は、カノンの守ろうとしていたこの島の大事(だいじ)を優先する」


蒼輝「…!」


 その言葉に、何も言えなくなる蒼輝。カノンが全(すべ)てを、命を賭(か)けて愛(あい)したノスタルジアという島。E生物(スティグマ)達の楽園。この島はカノンそのものと言えるもの。それを失(うしな)うことは……したくなかった。


勾玉「この島が無くなればどうなる…? 今まで守り通してきたモノ、全てを失うことになるぞ? 俺達だけじゃない。ここにいない花の屋敷(やしき)にいる者。ファラル大陸から移住して島へ来た者。商店街に済むE生物(スティグマ)達も…カノンの墓も」


蒼輝「……」


奈樹「……」


 蒼輝も、奈樹も、マテリアも黙(だま)ってしまった。勾玉の意見を真っ先に尊重(そんちょう)した風魔も匿うことには反対なのだろう。奈樹の手を握(にぎ)って、怯(おび)えたままの颯紗も…。


月花「だったら俺が紫闇さんを守りましょう」


 皆は月花を見た。


月花「紫闇さんの無事が確認できるまで、一緒にノスタルジアを出ることにしますよ」


紫闇「……」


 その発言に、一番驚いていたのは紫闇だった。


蒼輝「けどさ…まぁ、まだ紫闇の身が危険(きけん)と決まったわけじゃないから、別に出て行かなくても…」


月花「手遅れになってからでは遅(おそ)すぎますよ。紫闇さんの様子を見れば、今から船での移動は難(むずか)しいでしょうから、明日にしますけどね」


奈樹「月花さん…」


月花「大丈夫さ、奈樹ちゃん。安全だと判断できれば、また帰ってくる。紫闇さん、今日はゆっくり休んで下さい」


 そう言って月花は部屋から出て行った。


バサラ「……言いたいことだけ言って行っちまったゼ?」


勾玉「俺も外へ行こう……。もう少し自分の考えを纏(まと)めたい」


風魔「そうだね。外の空気吸ったら、色々と考え方も変わったりするかも知れない」


マテリア「…わ…私も行くです…」


 こうして紫闇の居る部屋に残された蒼輝、奈樹、颯紗、バサラ。


紫闇「君達も行ってくれていい……。それに……しばらく一人にしてほしい…」


 しかし、放っておいていいものかどうか迷ってしまっていた。颯紗が握ったままの奈樹の手をクイッと引っ張って、外へ行きたそうに…いや、紫闇の居る空間から離(はな)れたがっているようにしていた。


バサラ「あっ……そうだ、今日はマリアが来る日なんだ。そろそろ出迎えに行かないと」


 その言葉をキッカケに、皆は外へ出ることにした。紫闇に休むように言ってから部屋を出た。先に出て行った勾玉達の姿は、もう見当たらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。