第二章 剣と聖 エピローグ
イーバ幹部のマッドを撃退した蒼輝達。マッドが消えた後、しばらくして咎霧領域は霧散して消えた。
風魔は戦いのあった場所を、遠巻きに様子を眺めていた。
風魔「勾玉が倒れてヒヤッとしたけど……仲間が増えてくれたお陰で、一安心ってところかな。まっ…蒼輝達にも多少は経験値を積んどいてもらわないとね……」
そう言って、赤いマフラーの先をコネコネしている。
風魔「俺の出番は……まだまだ先……」
独り言を呟いた後、風魔は何食わぬ顔で合流した。
イーバとの戦いで色々あって、マリアは忘れていたことを思い出した。
マリア「あっ……私としたことが、バサラのお仲間である方々への自己紹介がまだでしたね」
バサラ「そうだ、それなら紹介を兼ねて、マリアの歓迎パーティーしようゼ!
蒼輝「おっ、いいな!」
マリア「あっ…そんな…私のことでしたらお気になさらず」
レイ「僕もパーティーに賛成かな。せっかくだから、教会の人とも少し話をしておきたいからね」
奈樹「またいっぱい料理作らなきゃ!」
颯紗「行きましょう、マリアさん」
刹那「皆でパーティー楽しいよお! 行こう! マリアさん!」
グイグイと刹那に引っ張られるマリア。
こうして……蒼輝達は蒼の館で避難していた者達と一緒に花の屋敷に合流した。E生物の子供達はいつも通りの弁当の配達があるので、またの機会ということになった。
そして、数日前と同じように再びパーティーが行われた。
ディアナ「ねぇねぇ、マリアっちゃんとマテリアっちゃんって、名前似てるね!」
奈樹「言われてみれば…」
蒼輝「なるほど…つまりマリアは手抜きってことだな」
マリア「……? 私が手抜きですか?」
蒼輝「そうそう。マテリアから、テを抜いたら…」
マリア「……」
奈樹「……」
マテリア「……」
勾玉「いつも通りの蒼輝だな……」
風魔「だね」
蒼輝「オイ! お前ら! 俺がいつも滑ってるみたいな……」
刹那「おぉーーー! すっごーーい! すっごい発見!」
シーンとした所に、パチパチパチと拍手する刹那の声が響いた。逆に虚しくなる蒼輝だった。
バサラ「ふむ…まさかマテリアの姫と接点があったとは…流石は俺の妃…!」
マリア「全然、流石でも何でもないっ!」
マリアは結婚したら、バサラに振り回されて大変だろうなと思う一同であった。
蒼輝「けど、マリアはフルネームで考えたらそこまで似てなくなるか。他に似てる名前っているのかな?
」
ディアナ「バサラっちゃんも似てるよ?」
バサラ「えぇ?」
ディアナ「ほら、桜羅っちゃんと、颯紗っちゃん」
蒼輝「バサラ。サクラ。サラサ。バサクラ…バサラサ…サラサクラ…バサラサクラ……まぁ言われてみれば」
マテリア「逆から読むとラクサラサバ……」
颯紗「変な呪文みたい…」
奈樹「なんで逆から読んじゃったの……?」
こうして名前で盛り上がるグループ。
ムト「すまんのう。また豪勢な料理を作らせてしまって」
サツキ「感服です」
芙蓉にお礼を言うムトとサツキ。
芙蓉「作るのは奈樹も手伝ってくれるから。けど、こんな頻度でパーティーなんてしてていいのかしら……退屈しないのはいいけど」
プリプム「プッリプリー!」
プリプムは芙蓉の前にある取り皿の料理を食べようとする。
芙蓉「もう、アンタは食べ過ぎなんだから、ちょっとはジッとしてなさい」
プリプム「プーッ。プップー!」
お茶を飲みながら軽い溜息をついていた芙蓉だったが、今度は膝上に置いているプリプムをグニグニとこねくり回して弄る。ホッペをつねったり伸ばしたりして顔が面白おかしく変形している。
月花「まぁ、せっかくだから楽しみましょうよ……というかプリプムが可哀想です!」
桔梗「芙蓉ちゃんも積極的に楽しまなきゃ!」
桜羅「桔梗ちゃんが楽しむなら、ボクも精力的に楽しむ……」
元気いっぱいの桔梗と桜羅。その双子巫女にすっかり懐かれてしまい、挟まれて席に座っている月花。その正面の席の芙蓉は呆れたような視線で月花を見ていた。
芙蓉「アンタ達は料理作らないから能天気でいいかも知れないけどね…。それと、この手元の子は自業自得よ。まったく……」
ブ二ブ二とマッサージボールのようにプリプムを握っている芙蓉。『アンタ達』に含まれてしまっている月花であった。プリプムは芙蓉の手から脱出し、胸と言う名の丘を利用して必死に身体をよじ登って肩へ、そして更によじ登って芙蓉の頭の上に立った。
プリプム「プリッ! プリッ!」
芙蓉「……変な達成感味わってないで、サッサと降りなさいよ! そもそも、なんで桜羅の所に行かないのよ! いつもアッチがポジションでしょ!」
すぐに頭の上から下ろす。しかし、今は芙蓉がお気に入りの様子で、また膝の上にチョコンと座った。
月花「懐かれちゃってますね」
芙蓉「自分には関係ない、他人事って感じの言い方ね」
またまた軽く睨まれる月花であった。
こうして片付けをした後、大浴場に近い大きさのお風呂に女性達が皆一緒に入ることになった。
機械の身体で入浴することの出来ないサツキが、ブラックと一緒に入口で見張りをしている。
桔梗「一番乗りー! 全軍、後に続けー!」
ディアナ「わーい! わーい!」
桜羅「ま…待って…桔梗ちゃん…」
芙蓉「ほら、転ぶから走っちゃダメよー」
脱衣所から全裸で走って入浴場へ走っていく桔梗とディアナ。後を追う桜羅。その様子を軽く注意する芙蓉。髪の長い女性は頭にタオルを巻いていた。
マテリア「一度、ここの大きなお風呂に入ってみたかったです…。それにしても…颯紗のスタイルが…」
颯紗「えっ…?」
白い素肌、痩せ気味の身体とは似つかわしくないとも言える、ふくよかな胸を、マテリアは少し羨ましそうに見ていた。
芙蓉「まぁ…マテリアも奈樹も…やっぱりまだ子供って感じなのね」
奈樹「ふ…芙蓉さんのスタイルがいいだけです!」
マテリア「そ…そうです…きっともうすぐ大きく…」
芙蓉と颯紗のスタイルに嫉妬心を抱きつつある奈樹とマテリア。そんな話は一切気にしない刹那は、マリアの前に立っていた。
刹那「ねぇねぇ、マリアさん早く行こうよお」
マリア「大勢で入浴というのは初めてで…恥ずかしいです…」
一糸纏わぬ姿である他の女性達とは違い、バスタオルで身体を隠しているマリア。
芙蓉「裸の付き合いって言葉があるでしょ。ほら、隠さない隠さない」
マリア「あぁ、そんな…初対面なのに恥じらいもなしになんて…きゃ!」
芙蓉はマリアのバスタオルを奪い取る。すぐにしゃがみこんで、身体を隠すマリア。
奈樹「マリアさん。ほら、行きましょう」
マテリア「せめてマリアさんくらいの大きさには……その内……」
コンプレックスなのか、マテリアだけ別のことばかり考えていた。
芙蓉「あんなにオドオドしてた颯紗でも堂々としているんだから、大丈夫よ」
颯紗「そう言われると…なんだか恥ずかしくなってくる…」
照れてしまい、一足先で浴場へ歩いていく颯紗。
マリア「…わ…わかりました…」
覚悟を決めて、立ち上がるマリア。そして全員が脱衣所から浴場へ移動した。中は大浴場。ワイワイと、キャッキャと各々が会話を楽しみながら入浴し、マリアの歓迎パーティーは大いに盛り上がった。
一方その頃……パーティーの終わった大広間…蒼輝、勾玉、風魔、バサラ、レイ、ムト、月花……男達はゆっくりとお茶を飲んでいた。
蒼輝「なぁー…月花」
月花「なんですか?」
蒼輝「やっぱさ…芙蓉狙いなのか?」
月花「ブーーーッ!」
お茶を吹き出し、蒼輝に直撃させる月花。
蒼輝「おっ、オイ! そういう露骨なリアクションするなよ!」
お茶まみれになった身体を、ハンカチで拭き拭きする蒼輝。
月花「お…俺がいつ芙蓉さんを…!?」
バサラ「うむうむ、さっきはイイ雰囲気になってたとは思うゼ? 照れんな照れんな」
月花「別にそういうつもりは…」
勾玉「俺の目には刹那とのほうが、いい雰囲気に見えたがな」
月花「俺は…そういう気は別に…」
男達は男達で、女性達が居ないことをいいことに盛り上がっていた。
蒼輝「そういう勾玉は、マテリアといつも一緒にいるな」
勾玉「蒼輝……お前が奈樹とばかりいるからだ」
蒼輝「えっ?」
勾玉「マテリアが奈樹と居ようとしても、蒼輝が奈樹と居るからマテリアは気を使って一人になりがちだ。だから俺がだな……」
蒼輝「す…すまねぇ……」
風魔「蒼輝はナッちゃん一筋? 颯紗とも、ちょっといい感じに見えるんだけど」
蒼輝「えっ? 颯紗と? そ…そうかなぁ」
ムト「そういえば、島に着いた時に颯紗のことをおぶっておったのう」
蒼輝「あれは颯紗が酔って動けなかったから…」
レイ「クスッ…そういう、自然な優しさに惚れたりすることもあるんだよね。女性って」
バサラ「蒼輝、二股はするもんじゃないゼ? 男なら愛した女一筋だ!」
マリア一筋のバサラは、蒼輝に向けてガッツポーズをして拳を握った。
蒼輝「いや……だから別にそういう…」
ムト「颯紗自身が奈樹といつも一緒にいるから、そう見えてしまうだけかも知れんのう」
風魔「じゃあ、やっぱりナッちゃん一筋か。ムトはサツキさん?」
ムト「サツキはワシの発明品じゃ」
風魔「キッパリ割り切ってる感じ? あのキリッとした目付き、カワイイと思うんだけどなぁ」
蒼輝「相変わらず目付き重視なんだな……。で、レイは誰が好みなんだ?」
レイ「うーん……そうだね…。奈樹かな」
蒼輝「どえぅえっ!?」
まさかの発言に驚いて、ひっくり返りそうになる蒼輝。
レイ「クスッ、冗談だよ」
バサラ「ハハハハハハハッ! 焦りすぎだゼ! 蒼輝! ハハハハハハハッ!」
変な声が出てしまった蒼輝を、腹を抱えて大笑いするバサラ。
レイ「マリアさんも可愛いよね」
バサラ「何ぃ!? 相思相愛の嫁に手を出そうってのか!?」
立ち上がり、机に身を乗り出してレイの前に出るバサラ。
レイ「冗談だよ」
蒼輝「あーはっはっはっは! レイに一本取られたぜー! ハハハハ!」
バサラに対して、仕返しとばかりに足をバタバタさせてゲラゲラと笑う蒼輝。
バサラ「ぐぬぬぬぬ……レイ…油断ならねぇゼ……」
風魔「……(レイって……もしかして腹黒いのかな…?)」
蒼輝「で……! 誰が本命なんだよ!」
レイ「今の話じゃ、余っているのは桔梗ちゃんと桜羅ちゃん、ディアナちゃんくらいしか残りの候補が居ない気がするんだけど……その中から選ぶのは難しくないかな?」
月花「……(アレ……? もしかして俺の候補って芙蓉さんか刹那ちゃんで決定してる……?)」
バサラ「愛さえあれば年齢差なんて…関係ないゼ!」
レイ「愛が無いから難しいと言ってるんだけど……なかなか滅茶苦茶言うね…」
蒼輝「……(返事をうやむやにされてしまった……。あぁ、きっと光芒結社に本命がいたりするのかな……ウンウン」
一人で納得する蒼輝であった。こうして、男女分かれて親睦を深めあったノスタルジアの島民達だった。
ついこの間まで、E生物を除けば蒼輝、勾玉、風魔しか居なかった島。
奈樹が降り立ってから、多くの人間、E兵器やE生物、はたまた動物や機械までもが住み、賑やかになってきた。
イーバと戦う意志のある者、イーバから身を守りたい者。様々な者が集まってくる。
かつて、女神様と呼ばれたカノンの目指した理想郷。悠久の島ノスタルジアは、これからもまた来る者を拒まず歓迎する精神を受け継いでゆくのであった……。
蒼咎のシックザール 第二章 剣と聖 エピローグ End




