18-A -氷牙の殺し屋-
ファラル大陸で仲間にした者達と、無事にノスタルジアへ帰還した蒼輝達。
それとは別に、イーバからの刺客として訪れた月花。しかし、ノスタルジアの島民達と触れ合ったことで目的を忘れそうになっていた。
そして月花は、抹殺対象とされている目標を知ることとなった。それは金雀児 奈樹。月花は自らの信念に基づき、奈樹のいる花の屋敷へと歩いて行った。
奈樹は一人、ジョウロで庭の花に水やりをしていた。月花は無意識の内に気配を殺して、背後からそっと近付いていった。2mほど後ろに来た時、奈樹は振り返って月花を見た。
奈樹「あっ、月花さんでしたか。なにか後ろに気配を感じて…」
表情には一切出さなかったが、月花は驚いた。今の忍んだ気配…並の人間では絶対に気付かなかっただろう。それをいとも簡単に…。やはり凶悪兵器なのだろうかと思ってしまった。
月花「あぁ、ちょっと奈樹ちゃんに聞きたいことがあってね」
奈樹「はい? なんですか?」
曇りのない微笑み。凶悪兵器で抹殺対象とされているとは思えない。可憐な少女にしか見えなかった。
月花「さっき…皆でイーバと戦うって言ってたけど…それって奈樹ちゃんも戦うの?」
奈樹「はい。私…E兵器なんです…。それでもイーバと戦う意志を持っています」
月花「そっか…。答えてくれてありがとう」
奈樹「いえ。月花さんもたまたま島に来ただけなのに、巻き込んでしまってごめんなさい」
奈樹は頭を下げた。ただの女の子であったら、この瞬間に仕留めることはできるだろう。しかし月花は手を出さなかった。本人の口からE兵器だと聞いても、なぜか奈樹に手を出す気にはなれなかった。
奈樹「あの…できることなら…」
月花「ん?」
奈樹「刹那と…仲良くしてあげて下さい」
月花「刹那ちゃんと?」
奈樹「少し度が過ぎて少し迷惑しているかもと思って…。けど仲良くしてあげてください。あの子が私以外にあそこまで懐いているのは初めてで…」
月花は奈樹に手を出せない理由がわかった。それは刹那の存在だった。
ずっと一人だった自分に、この居場所を与えてくれるキッカケとなった女の子。その刹那が慕っている奈樹を傷付けることは、刹那を傷付けてしまうことと同じだった。
奈樹「それと芙蓉さんも…」
月花「芙蓉さん?」
奈樹「少し言い方がキツイ所があるけど、本当は優しい人なんです。だから…」
月花「ビンタ痛かったけど大丈夫だよ…。わかった。芙蓉さんのことも気にかけておくよ。桔梗ちゃんと桜羅ちゃんもね」
ビンタのところまで聞いた奈樹は『言うのが遅かった…』といった表情を見せたが、その先の言葉を聞いて、安心するように微笑んだ。そうしていると蒼輝が歩いてきた。
蒼輝「おっす。二人で何してんだ?」
月花「少し話をしていただけですよ」
奈樹「刹那がお世話になっているからお礼を言っていたの」
奈樹はクスッと悪戯に笑った。
蒼輝「月花も首折られないように気を付けろよー? って、そうだ。飯の準備ができたから早く行こうぜ!」
月花「首折り…?」
こうして皆で卓を囲んで食事をした。料理のできる奈樹と芙蓉、下ごしらえを手伝ったマテリアと颯紗の豪勢な料理だった。
奈樹とマテリアは颯紗を挟んで談話している。蒼輝とバサラは数日前に会ったとは思えないくらい打ち解けていた。勾玉と風魔はレイとムトと話をしている。刹那と芙蓉と月花は三人で会話をした。ディアナはいつの間にか持参していた巫女服に着替えて、桔梗と桜羅の二人と仲良くなっていた。プリプムはまだ桜羅に懐いていた。サツキとブラックは軒下で座っている。
マテリア「うん、味付けとってもいい感じです」
颯紗「おいしい…ゼラニウムで食べていた缶詰と全然違う…」
奈樹「颯紗は細すぎるんだから、もっと食べていかないとね」
バサラ「…そこで…! 師匠がこう言ったってワケよ! シビれるだろー!?」
蒼輝「いいねいいねー! 俺も強い男になりたいからわかるぜー!」
ムト「しかし光芒結社と手を組むとは先が明るいのう」
風魔「光芒結社って結構な権力あるところ?」
レイ「進んで事件調査や慈善事業をしているからね。ファラル大陸では信頼は厚く、多くの人から支持されているよ。実際、バサラ王子が訪ねてきたのも信頼あってこそだからね」
勾玉「レイには及ばないとは言え、それに実力を持っている者が多数いるのであれば、それも納得だ」
月花「うん、おいしい。これなら毎日でも食べたいな」
刹那「芙蓉ちゃんのお料理、とっても美味しー! どこで覚えたのお?」
芙蓉「覚えるもなにも…料理本見ながらレシピ通りにやれば誰でもできるでしょ? …桔梗と桜羅にはできてないけど…」
桔梗「その巫女服も可愛いー!」
ディアナ「デザイン違うんだね。 けどミニもいいないいなー」
桜羅「ボクは桔梗ちゃんと同じなら…」
プリプム「プリプリー!」
こうして皆はパーティーをして親交を深めあった。久しぶりの再会と、新たな出会いに時間を忘れて盛り上がった。




