15-B -機械塔の賢人-
ユジーヌの街で、発明家ムトの家へと訪れた蒼輝達。出迎えた女性にミサイルを発射されたが、何とか話を聞いてもらえることとなった。
蒼輝達は二階に上がった。そこには様々な物があった。形容しがたい物から、機械的なコップ、変な形をしたヘルメット、まるで戦車のように武装された自転車、タイヤのないスケボーのような板。
奈樹「これ…なに?」
奈樹は機械的なタイヤのない板を取り出し、手に取った。
『それはエア・ボード』
何処からかムトの声が聞こえた。全員が周りを見渡すが、その姿はない。
ムト「スピーカーの声じゃよ。監視カメラからお主らの様子が見えとる」
勾玉「随分と用心深いなんだな」
ムト「お主らを警戒しとるわけではない。何かある度に下まで見回りに行くのは面倒で設置してあるものでの。カメラで見たほうが楽じゃろ」
奈樹「ところでこれは…」
奈樹がボードを持ったままキョロキョロしている。
ムト「足を乗せる場所があるじゃろ? そこに足を引っ掛ける部分があるから、地面に置いて軸足を固定して立ち上がるとよい」
奈樹は言われた通り足に固定する。
ムト「側面にあるスイッチを入れると起動じゃ」
奈樹「はい…。えっ! あわわ!」
突然ボードが空中に浮く。少しバランスを崩したが、地面から60cmほど浮いた状態で維持する。
ムト「エア・ボード。咎力を利用して浮遊移動を可能にするものじゃよ」
奈樹「移動…きゃあ!」
ガラガラガラーン!
ボードが急発進して、アトリエと言う名のガラクタの山に衝突して倒れる。
マテリア「奈樹!」
皆が倒れている奈樹に駆け寄る。
奈樹「うぅー…」
蒼輝「奈樹! 大丈夫か!?」
バサラ「ゴホッ! ゴホッ! スッゲー埃!」
奈樹「もう一回やる! 咎力で動かすなら何とか出来るかも!」
奈樹はボードを装着したまま立ち上がり、もう一度浮き上がる。
勾玉「…向上心なのか負けず嫌いなのか…」
意外にも奈樹は二回目にして乗りこなしていた。スイスイと狭い場所を移動する。
奈樹「これいいですね。とても扱いやすいです」
ムト「…やるのう。それをもう使いこなすとは。それはくれてやろう」
停止して、奈樹はハッと嬉しそうな顔をする。
奈樹「いいんですか!?」
ムト「咎力の制御を巧みに操れんと、まともに動かんからの。ワシが持っていても仕方ない」
ボードの浮遊を解除し、降りた後で固定していた足を外し、エア・ボードを拾い上げて抱える。
奈樹「ありがとうございます! 大事にします!」
ディアナ「私もなんか欲しいなー…ね? ブラック?」
勾玉「しかしこの様子では…」
バサラ「探すに探せないゼ?」
奈樹「ご…ごめんなさい…」
衝突して倒壊したせいでアトリエは他の物を見るといった状態じゃなくなっていた。仕方なく皆は三階へ上がった。三階は生活空間。機械でゴチャゴチャしていることを除けば一般的と言える空間。
そのまま四階へ上がった。そこには背もたれのある回転椅子に座った男、ムト。フルフェイスの溶接マスクに作業着と分厚い手袋をしている。
そしてその隣には静かに佇む朱色の髪をした女性、サツキ。
ムト「よく来たのう」
サツキ「いらっしゃいませ」
ムトの椅子の周りには大量のモニター。隣の部屋にはゴチャゴチャした部屋が見える。
マテリア「は…初めましてです…」
皆は順番に挨拶した。そして遠く離れたノスタルジアという島からやってきたことを伝えた。そして蒼輝は自分達の目的をムトに語った。今は食い止めているものの、イーバからの侵略によって近い内に島に危険が訪れるであろうということ。それに対抗するために仲間を集めていること。光芒結社でこの街に住むを発明家を紹介されたこと。
ムト「なるほど、ご苦労なことじゃの」
ムトは機械音で加工された声で、淡々と言った。
バサラ「俺は楼黤の王子バサラだ。国は先日イーバによって滅ぼされた…もう故郷を失うような、同じ目に合う人がいるなんてゴメンだ! お願いだ! アンタの頭脳を貸してくれ!」
奈樹「イーバへの対抗策の一つ…それは戦いの戦力だけでなく、知力も必要だと思っています」
ムト「ふむ、いいじゃろう」
蒼輝「おぉ! マジか!」
ムトは意外にもアッサリと了承した。
ムト「ここで一生を終えてもロクなことにならん。それならそのノスタルジなんとかって島に行ったほうが暇つぶしにはなるじゃろ」
バサラ「惜しい! あと一文字覚えてない!」
ディアナ「仲間が増えるね! やったよ! ブラック!」
喜んだディアナはしゃがんでブラックに抱きつく。
ムト「ただし条件がある」
蒼輝「えっ?」
マテリア「また実力を見せるとか…?」
ムト「なに、簡単なことじゃよ。交換条件じゃ」
奈樹「交換条件?」
ムト「そう。まさにお嬢ちゃんの協力次第」
奈樹は指名されて困惑している。
奈樹「私に出来ることだったらなんだってします! エア・ボードも貰いましたから!」
ボードを抱きしめたまま、奈樹が微笑む。
ムト「それでは条件…」
全員がゴクリと息を呑んだ。
ムト「身体を調べさせてくれんかの。隅々まで」
奈樹「か…身体を…? それって…どのくらい…」
ムト「なぁに調べたいだけじゃ。改造も解剖もせんよ」
蒼輝「奈樹をどういう風に調べる気なんだよ…内容によっては俺は反対だ」
奈樹「蒼輝…」
奈樹を守るように、一歩前に出た。
ムト「なんじゃ? 立ち会いたいのか? やめとけ、お嬢ちゃんのためじゃ」
蒼輝「何? そう言われたらますます引けなくなっちまうぜ」
ムト「お嬢ちゃんは良いのかの? 他の男に一糸纏わぬ姿を見られても」
奈樹「…えっ…? え…?」
奈樹が顔を真っ赤にした。
蒼輝「は…? えっと…それは…」
ムト「身体を隅々まで調べるのに服なんていらんじゃろ。当然、裸になってもらう。心配なら男に付いてもらうといい」
奈樹「ちょ…ちょっと…それは…」
真っ赤になってうろたえる奈樹。蒼輝も顔を赤くした。
マテリア「いくらなんでも…女の子に裸になれって…それは…」
ディアナ「嫌なの?」
奈樹「……」
奈樹は顔を赤くして、黙っている。
バサラ「奈樹の姫、ここは踏ん張り所だぞ! その肢体を晒すだけで仲間になってくれることが確定するんだぞ!」
蒼輝「いや…だからって…いくらなんでもさ…」
奈樹「わかりました」
ハッキリとした返事に、皆が奈樹の顔を見る。
蒼輝「奈樹! いいのか!?」
奈樹「…この方が島に来てくれたら、きっと島は良い方向に発展していけるはず…。ここ一度、私が恥ずかしい思いを我慢すればいいだけ…それにこのボード貰ったんだもの。私も協力しなきゃ…ね?」
ムト「見事な心構えじゃ。まずワシが君にそれをプレゼントしたのは、ワシを信用して欲しかったからじゃ」
勾玉「自分が何かを与える代わりに、奈樹にも要求するということか…」
ムト「ワシはお主らに対して全面的に協力しよう。これで交換条件は整った。それじゃ、お嬢ちゃん。こっちの部屋へ。サツキは他の者と先程伝えておいた例のことを」
ムトが立ち上がり、隣の部屋へ入る。奈樹が部屋へ入ろうとする。
蒼輝「奈樹!」
蒼輝が呼び止めに、奈樹が振り返る。
奈樹「大丈夫…。若い人だったら抵抗あるけど、お爺ちゃんに裸見られるくらいだったら…ね?」
マテリア「私も…お爺ちゃんとだったらお風呂とかよく入ってたから、わからなくは…」
ディアナ「えっ? 裸を見られるの恥ずかしいの?」
バサラ「ディアナの姫は、何故恥ずかしいと思わんのだ…?」
ディアナ「えっ…? 衣装着てるほうが可愛いから脱ぐの嫌ってことじゃないの? 恥ずかしいから嫌なの? よくわからない…」
育ってきた環境の違いか、イマイチ感性が合わない。そんなディアナに微笑みかけ、奈樹は部屋へと歩いて行き、カーテンの掛かった奥へ進んでいった。
サツキ「ワタシ達は…こちらへ」
サツキが下の階へ降りていく。
蒼輝「奈樹…」
勾玉「奈樹自身が決めたことだ…」
蒼輝は心配そうにしていたが、渋々下の階へと降りていった。




