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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第一章 ノスタルジア
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10-A -命を賭けた戦い-

 前回のあらすじ

 イーバから脱走してきた桔梗(ききょう)と桜羅(さくら)。二人は芙蓉(ふよう)の妹のような存在であり、芙蓉を追ってノスタルジアへ来た。芙蓉達が住めるように皆で協力して使われていない屋敷を掃除した。しばらくすると桔梗と桜羅に異変(いへん)が起き、咎霧領域(フォッグ・アリーナ)なるものが体から排出(はいしゅつ)させられた。

 そこにノスタルジアへと現れたイーバ幹部(かんぶ)のエビル。幹部クラスが地上に降りるには咎力が必要だった。それを満たすために脱走すると予測していた桔梗と桜羅に咎霧領域(フォッグ・アリーナ)を発生させる仕掛けをしておいたと言う。

 奈樹と芙蓉をイーバに連れ戻すことが目的であり、反抗(はんこう)しようとした蒼輝(そうき)は見せしめのようにエビルに一撃で倒される。エビルは一人で戦うことを避ける為に、エビル装甲兵(ポーンズ)を呼び出した。



勾玉「奈樹…お前はそこの三体(ポーンズ)をやれ」


奈樹「勾玉さん…!?」


勾玉「俺は…アイツを倒す」


 エビルを睨(にら)みつけながら奈樹へ言った。その姿(すがた)からは並々ならぬ決意(けつい)を感じる。


エビル「君が僕の? 君はそんなことを言う熱血(ねっけつ)タイプには見えないんだがね」


勾玉「俺も暑苦(あつくる)しい発言は嫌(きら)いだが、これは本気だ。お前を倒すと言っている」


エビル「ふっ…自分が勝てると信じているのか? だがそんなものは無意味(むいみ)だ」


勾玉「……」


エビル「信じる力、神への信仰(しんこう)とは何の効果もない。仮(かり)に祈(いの)った後に何か自分に良いことが起きたとしよう…それはただの偶然(ぐうぜん)…神に祈っただけで救(すく)われた気になっているだけの自己暗示(じこあんじ)…いや、その暗示すら大(たい)した意味を持たない。現実だ。神頼(かみだの)みなどせず現実を見ろ。その先に見えるモノ…本当に必要なモノはなんだ? それは…信仰なんかじゃない。力だ」


 エビルは小馬鹿(こばか)にしたような表情で勾玉を見る。


エビル「君が偶然、奇跡(きせき)で僕に勝つという神頼みをするのは結構(けっこう)だ。だが信仰しても無駄さ。君は僕には勝てない」


勾玉「それが事実だろうと関係無いこと…。俺の考えは変わらない。

なぜなら、悪人とは必ず相手の言葉を否定するものだ…」


エビル「面白い持論(じろん)だね。確かに。僕が君達の希望…信じる力を否定してあげるよ」


 奈樹はエビルが話をしている隙に、エビル装甲兵(ポーンズ)の三体を警戒(けいかい)しながらマテリアを誘導(ゆうどう)しつつ、気を失(うしな)っている蒼輝を引きずって芙蓉(ふよう)達の所へ運ぶ。


エビル「…さて、怪我人(けがにん)と怯(おび)え切った女は運び終わったようだし…そろそろ始めようか」


奈樹「…!」


 エビルは気付いていた。知りながらも敢(あ)えて止めなかったのだ。それほどの余裕。圧倒的な力を持つという自信。


エビル「抵抗(ていこう)するなら皆殺(みなごろ)しにするまで…どうせ僅(わず)かばかり距離を空(あ)けただけの、安全とも言えるかわからない所に運ぼうと同じことさ」


 奈樹が立ち上がり、エビル装甲兵(ポーンズ)へ戦いの姿勢(しせい)へと構(かま)える。勾玉もエビルに対(たい)して構える。


エビル「奈樹は頑丈(がんじょう)だからな…半殺(はんごろ)しくらいになら遊(あそ)んでやってもいいぞ。やれ、お前達」


エビル装甲兵(ポーンズ)「ギャギャギャ…」


 奈樹へ三体のエビル装甲兵(ポーンズ)が襲(おそ)いかかる! 


奈樹「スターファイア!」


 急(いそ)いで手を向けて炎を放(はな)つ! しかし吹き飛ばされただけで、エビル装甲兵(ポーンズ)にダメージは殆(ほとん)どない様子(ようす)だった。

 

 奈樹「な…なぜ…!?」


エビル「君の細胞(さいぼう)とデータから咎力(きゅうりょく)を分析(ぶんせき)した…それを利用して装甲兵(ソイツ)達(ら)には君から受ける咎力のダメージを80%程(ほど)カットするように改造(かいぞう)した」


奈樹「…っ…!」


エビル「これで奈樹…君は戦うことすらままならない…嬲(なぶ)り殺しにされるだけだ」


 エビル装甲兵(ポーンズ)が三体で何度も波状(はじょう)攻撃(こうげき)を仕掛(しか)けてくるが、奈樹は全て手でいなしつつ回避(かいひ)し続ける!


奈樹「速い…!」


 三体の戦闘能力(せんとうのうりょく)は見た目以上に高く、避(よ)けることで精一杯(せいいっぱい)で反撃(はんげき)に出る暇(ひま)もない。一体が奈樹の右足に飛びかかる! それを足を上げて避けた瞬間(しゅんかん)に、別のもう一体に軸足(じくあし)になっていた左足を刈(か)られて奈樹は倒れてしまう!


奈樹「しまっ…!」

 

 仰向(あおむ)けに倒れた時、顔面に三体目の爪が振り下ろされた!


エビル装甲兵(ポーンズ)「フギャギャーァ!」


 間抜(まぬ)けな声を上げながら、エビル装甲兵(ポーンズ)達が吹き飛んでいった!


奈樹「…!?」


 奈樹は飛び起きて体勢(たいせい)を立て直す。


エビル「お前は…」


 危険な状態(じょうたい)だった奈樹を救(すく)ったのは刹那(せつな)だった。


刹那「奈樹様…大丈夫(だいじょうぶ)?」


奈樹「刹那…! 助かったわ…ありがとう」


エビル「…」


 エビルは刹那を見ている。


勾玉「蛇炎(じゃえん)」


エビル「!」


 エビルに襲いかかる炎! 後ろに飛び下がり回避される。勾玉の両手に炎が宿(やど)る!


勾玉「双蛇炎(そうじゃえん)」


 両手の炎が二匹の蛇のように、うねりながらエビルに襲いかかる! しかし両方とも軽く躱(かわ)される。


エビル「不意打(ふいう)ちかい? それだけ必死(ひっし)ってことなのかな?」


勾玉「不意打ち…? 笑わせるな。蒼輝を攻撃した時点(じてん)でお前は臨戦(りんせん)態勢(たいせい)だったはずだ」


エビル「ハハッ、結構結構…僕の言った台詞(せりふ)をお返しかい? 随分(ずいぶん)と負けず嫌いなんだね」


 エビルが勾玉に軽く構える。


刹那「奈樹様…! あっちへ!」


 奈樹は少し迷ったが、刹那の言葉の意味を理解した。


奈樹「!」


 奈樹が地面に手を置く! エビルが勾玉へ駆け寄る!


奈樹「ライトシールド!」


 エビルが膝蹴(ひざげ)りを放(はな)つが、勾玉の前に光の障壁(しょうへき)が発生して攻撃を遮断(しゃだん)する!


勾玉「!」


 奈樹は素早(すばや)くエビルの頭上(ずじょう)にジャンプしている。手に咎力(きゅうりょく)が集まる。


奈樹「トライサンダー!」


親指、人差し指、中指を立てると指から雷が発生し、エビルに襲いかかる! しかしエビルはそれを後ろに下がって回避したが、次に勾玉が放った炎が襲いかかる!


勾玉「双蛇炎(そうじゃえん)!」


 エビルは二重(にじゅう)で襲い来る魔術(まじゅつ)の猛攻(もうこう)を全て避け、かなり距離を空(あ)けて持ち直す。服をパンパンッと叩(はた)く。


エビル「僕が近接戦(きんせつせん)をできないように二人掛(ふたりが)かりでか…なるほど、考えたね」


奈樹「勾玉さん…! 協力(きょうりょく)します!」


勾玉「あぁ…二人で戦えば…」


エビル「それは叶(かな)わない」


奈樹「…え…!?」



 ズザザザザザ!!


 奈樹と勾玉の前を何かが飛んでいき、地を滑(すべ)ってゆく!


奈樹「せ…」


 前を通過(つうか)した正体…地にうつ伏せで倒れているのはボロボロの刹那だった。身体中(からだじゅう)に切り傷や殴打(おうだ)された跡(あと)がある。


奈樹「刹那ッ!」


エビル装甲兵(ポーンズ)「ギャギャギャ!」


勾玉「刹那がこの短時間で倒されるだと…」


エビル「所詮(しょせん)は使い捨(す)てられたE兵器(クリミナル)…この程度(ていど)さ」


 背後(はいご)に三体のエビル装甲兵(ポーンズ)。勾玉がエビルに、奈樹がエビル装甲兵(ポーンズ)の方を向き、勾玉と奈樹は背中を預(あず)け合う。

 勾玉は奈樹一人でエビルと戦わせる訳(わけ)にはいかないと思っていた。もし奈樹がエビルに倒された場合、芙蓉は後回しにして奈樹だけをイーバへ連れ帰るかも知れないと考えていたからだ。しかし奈樹の相手は、攻撃が通用しないエビル装甲兵(ポーンズ)。どう考えても分(ぶ)が悪い。


エビル「これで2対1では無くなった…。もっとも…一方(いっぽう)は3対1になってしまったがね」


 奈樹と勾玉は冷(ひ)や汗(あせ)を掻(か)いた。二人を嘲笑(あざわら)うかのようにエビルはニヤリと笑った。エビル装甲兵(ポーンズ)三体が奈樹へ襲いかかる!



『確(たし)かに3対1だね。もっとも…一方は2対1のままだけどね』



エビル「!?」


 どこからか聞こえた声と共(とも)に暴風(ぼうふう)が吹(ふ)いた! その風でエビル装甲兵(ポーンズ)達が5メートルほど吹き飛ぶ! 地に落ちるとゴロゴロと転がって倒れる。


勾玉「ようやく来たか…」


奈樹「この風は…!」


 奈樹の前に風が渦巻(うずま)き、背を向けて風魔が姿を現(あらわ)した。


風魔「…面白そうなことしてるじゃん。コイツら俺に任(まか)せてよ」


 風魔は余裕(よゆう)の笑(え)みで、イーバ装甲兵(ポーンズ)を見た。奈樹は向きを変えて勾玉の隣(となり)に、エビルに向き直す。風魔はイーバ装甲兵(ポーンズ)三体と向き合った。

瞬(またた)く間に倒された刹那。逃げ場もなく見守るしかない芙蓉、桔梗、桜羅。エビルの威圧感(いあつかん)で戦意(せんい)を喪失(そうしつ)しているマテリア。そして一撃で沈(しず)められた蒼輝…この状況でエビルと、その刺客を倒すことができるのか…。

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