9-B -襲来する邪の化身-
自分の家で目覚めた奈樹。朝からバスルームでシャワーを浴びて平和な朝を迎える。着替えてリビングへ行くと、何やら急いだ蒼輝が家へ来る。「増えた」という謎の発言を聞いて、ホームへ向かった蒼輝と奈樹。
ホームには勾玉、風魔、マテリアがいた。そして家の中から、芙蓉以外に二人の巫女服の少女が現れたのだった。
芙蓉「ほら、自己紹介しなさい」
黒い瞳に紫がかった髪色で、大きな数珠のようなアクセサリーで左に長いサイドテールを作った女の子が、先に挨拶した。
「こんにちは! アタシは桔梗! 芙蓉ちゃんのお友達です!」
紫の瞳に桃色の髪色で、同じく大きな数珠のようなアクセサリーで右に短いサイドテールを作った女の子が、恐る恐る挨拶した。
「ボ…ボクは…桜羅です…」
桔梗「桜羅! もっと積極的にしなきゃ!」
桜羅「桔梗ちゃんが精力的すぎるの…」
姉妹のように言い合う二人のミニスカートの巫女。その様子を見た奈樹は思わず口にした。
奈樹「本当だ…増えてる…」
芙蓉「ごめんなさいね。この子達はイーバにいた私の妹同然の子達なの。私がいなくなったことでイーバから脱走してきたらしくって」
桔梗「だって芙蓉ちゃんいないなら、あんなトコロいてもつまらないよ!」
桜羅「桔梗ちゃんが脱走するって言うから…ボクも一緒に…」
桔梗に続いて桜羅はオドオドしながら言った。芙蓉が18~20歳くらいと見るなら、桔梗は14~16歳くらいだろうか。桜羅は12歳~14歳くらいに見える。
勾玉「脱出用ポッドでこの島にきて、日も昇らない内から島を徘徊していたそうだ」
マテリア「今朝二人を見つけた芙蓉さんが保護したですけど…芙蓉さんと同じ服を欲しがったそうなので…」
奈樹「あぁ…それで…」
なるほど、と状況を把握していく。
蒼輝「しかし女の子ばかり増えていくな…」
風魔「それは仕方ないね。咎力の扱いは女性の方が得意なんだ」
マジ? って顔で風魔を見る蒼輝。それに続いて他の皆も風魔を見る。
風魔「咎力には色んな種類があるんだよ」
風魔は説明を開始した。
『魔術』 咎力を放出して相手を攻撃する最もスタンダードな使用方法。
『法術』 咎力を対象者に流し込み、傷付いた身体を癒すことができる。
『身術』 咎力で自身の肉体を強化したり、身体の一部や全身を変化させる。
『秘術』 咎力で武器などを作り出す。バリアなどの防御壁を発生させるのもこの術。
『呪術』 咎力の力で相手を拘束、操作する高等術。
『召喚術』 別世界の生物と契約し、この世界へ呼び出す高等術。
これらの中で二種類以上を扱える者も珍しくないそうだ。
蒼輝「そんな種類があったんだ…知らなかった」
風魔「女性のE兵器は魔術の扱いが一番得意でね。後は法術、呪術、秘術も得意。それに比べて男性のE兵器が得意なのは主に近接戦メインの身術か秘術くらいなんだ。勿論、例外はいるけどね」
マテリア「それと女性のE兵器が多いのは、どういう意味があるですか?」
風魔「咎力の扱いに長けていることから女性の個体数が多い。単純に割合が多いことがあるから失敗作も多いのさ。男のE兵器は数が少ない代わりに強力な個体が多い」
蒼輝「ほえー…」
昔から風魔はイーバのことに詳しかった。蒼輝はそれについて聞いたことあるが、イーバについて調べただけと言っていた。最初は疑問に感じていたが、付き合う内に気にしなくなっていた。知られたくない過去だってあるだろうし、なにより頼りになる以上、深入りすることもないと感じていた。
桔梗「そんな積極的に言われても、ぜんっっっっぜん! わかんない!」
桔梗が大きな声で言った。
芙蓉「わからなくていいわよ…私達には関係無い退屈な話だから」
桜羅「あ…あの…」
芙蓉と桔梗の近くにいる桜羅が、蒼輝達を見て言った。
桜羅「桔梗ちゃんとボクも…芙蓉ちゃんと一緒にいていいの…?」
全員が何を今更…と言った表情で桜羅を見た。しかし思いついたように蒼輝は言った。
蒼輝「よーし…それじゃ条件がある」
蒼輝は桜羅の前まで歩く。桜羅は少し怯えだす。桔梗が桜羅の隣に来る。
桔梗「ち…ちょっと! 桜羅に何かするのは許さないよ! アタシが積極的に守るんだから!」
蒼輝「桜羅だけじゃなくて桔梗も一緒にするんだよ」
桔梗「えっ…!?」
桜羅「じょ…条件…? 一緒にいれるのなら…ボク…精力的に頑張る…」
蒼輝は桔梗と桜羅の後ろに回って二人の肩に手を置いて押していく。
芙蓉「ち…ちょっと…!」
蒼輝「二人、借りていくぜー」
制止しようとする芙蓉だったが、蒼輝は気にせず桔梗と桜羅を連れて歩く。
奈樹「ど…どうしますか?」
勾玉「…どうするって…放っておくわけにもいかんだろう…」
風魔「放っておけばいいんじゃない? 何か考えあるんだろうし。俺は用事あるから帰るよ」
マテリア「わ…私は皆と一緒に…」
芙蓉「別に疑ってるわけじゃないけど…桔梗と桜羅を放っておけないわ」
風魔は帰っていった。皆は蒼輝の後を追うべく、向かった方向へ歩いて行く。
桔梗と桜羅は蒼輝に背を押されながら歩いて行く。
桔梗「ちょっとー、お兄さん」
蒼輝「なんだ?」
桔梗「条件ってなによ?」
蒼輝「行ってからのお楽しみだ」
蒼輝はヘへっと笑う。
桜羅「痛いことはしたくない…」
桔梗「あー! わかった! アタシ達連れ出して、イヤラシイことする気でしょ!」
蒼輝「するか!」
ギャーギャー喚く桔梗。皆が追いついて後ろを付いてくる。しばらくすると目的地に到着した。そこは大きな家。昨日、芙蓉の家にしようと言っていた屋敷だった。
桔梗「うわー、ここでイヤラシイことされるんだ…」
桜羅「ボク…桔梗ちゃんと一緒なら…」
蒼輝「するか! 二人にはここの掃除をしてもらう!」
桔梗と桜羅は振り返り、キョトンとした顔で蒼輝を見上げる。
蒼輝「ここがお前達二人と、芙蓉の家だからな。ただし掃除しないと住めない。一緒に居たいならここを綺麗にするんだ」
芙蓉「最初からそう言えばいいのに…性格悪いわね」
蒼輝「芙蓉に言われたくねーよ」
芙蓉のビンタが空を切る。予測して蒼輝は避けていた。
桔梗「よーし! 積極的にやろうか! 桜羅!」
桜羅「うん…ボクも精力的に頑張るよ…桔梗ちゃん…! 」
二人は家の庭へ入った。雑草が生い茂り、家の中は埃だらけだった。前日の内に庭に清掃用具を用意しておいた。バケツに水を入れ、雑巾に水を染み込ませる。桔梗と桜羅は二人は広く長い廊下で、クラウチングスタートのような姿勢で雑巾がけを開始して走り出す。
桔梗「おりゃおりゃおりゃおりゃー!」
桜羅「あうー…」
桔梗は勢いよく走って行き、桜羅は途中でコケた。芙蓉は掃除機で他の細かい場所を掃除していく。
蒼輝はバケツの汚れた水を新しいものに取り替えつつ現場監督をして、奈樹と勾玉とマテリアは買い出しに行った。桔梗と桜羅の二人は頑張って、広い広い屋敷の掃除を始めるのであった。




