9-A -襲来する邪の化身-
前回のあらすじ
ノスタルジアへ降り立った者は、今まで森にある小屋で生活していたが、人数が増えてきたので奈樹、マテリア、刹那、芙蓉に服や家を用意した。
その後、島の地下にある図書室を訪れたことで奈樹の気が動転してしまう。芙蓉の迂闊な発言と挑発により、奈樹と芙蓉が衝突しそうになるが、何とか理解し合うことができた。
翌日…奈樹がノスタルジアへ来てから六日目。
奈樹は自分が選んだ家、自分が選んだ場所の寝室で目を覚ました。刹那に飛びつかれた時に痛めた首は治っていた。見渡すとインテリアに乏しく、やや殺風景だが落ち着く空間。ベッドの上で伸びをする。ベッドから出てクローゼットから着替えの服を取り出した。
部屋を出て廊下を歩く。一階に吹き抜けとなっており、リビングを見下ろせる。奈樹は階段を降り、脱衣所へ向かう。パジャマと下着を脱いで、バスルームへ入る。ボタン一つでシャワーから出る水が温かくなる。
奈樹「ふぅ…」
湯気が立ち込める空間で、地に付きそうなほど長い髪と身体が濡れてゆく。奈樹は自分の小さな身体を両手で抱き締めるようにした。
奈樹「今のままじゃ…イーバは倒せない…」
自分の力は絶大だと思っていた。しかし芙蓉とぶつかりあうことで『井の中の蛙』だったと気付かされた。イーバの生み出す力は今の自分を超えているのかも知れない不安があった。
奈樹「下層部にいるE兵器でさえ…あんな強大な力を秘めている…。じゃあ…エース級のE兵器に…私の力は…」
しばらく考え込みながらシャワーを浴びた奈樹は脱衣所へ戻る。濡れた身体と髪をバスタオルで拭き、ドライヤーで髪を乾かす。我ながら乾くまで時間が掛かると感じる奈樹だったが、この蒼い髪が、この長い髪が大好きだった。自分の育て親だった人が自分の髪をいっぱい褒めてくれた。いっぱい撫でてくれた。大袈裟かも知れないが、この髪は自分自身の生きている証そのものだと感じていた。
奈樹は櫛で髪を梳く。用意していた服を着て、脱衣所を出た。
蒼輝「おーい、奈樹! 起きてるかー」
奈樹「あっ…蒼輝、おはよう」
蒼輝「おう、おはよう」
脱衣所から出ると、蒼輝が玄関を開けてリビングに来た。このように全員が家の鍵をしていない。この島に盗難するような者はいないと確信があるからであり、自由に出入りできる状態にしてある。
奈樹「迂闊に…そのまま出てこなくてよかった…」
蒼輝「?」
もし怠けて脱衣所から服を着ずに出ていたら…などと思うと奈樹の顔は少し赤くなった。
蒼輝「そうだ、外へ来てくれ! 芙蓉の所に!」
蒼輝に連れられて、奈樹は外へ出た。
奈樹「何があったの?」
蒼輝「ホームに行ったら増えてたんだよ…」
奈樹「増えた?」
足速に森のホームへ向かう。他の皆、勾玉、風魔、マテリア、刹那が既に居て挨拶交わした。
奈樹「何があったの?」
なにやら芙蓉がいるはずのホームが騒がしい。風魔は人差し指を建てて小屋へ向けた。
風魔「今、着替え中」
そう言ってしばらく待つと、扉が開いて人が出てきた。その数三人。
「じゃーん! これすっごいアタシに似合ってない?」
「ボク…ちょっと恥ずかしい…」
小屋から芙蓉と、ミニスカートの巫女服を着た女の子が二人出てきた。その二人と一緒に芙蓉が呆れ顔で出てきた。
また島が騒がしくなるだろうなと感じるノスタルジアの一同であった。




