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最終話 五年後

 私、マグリナ・フィッツジェラルドは十七歳になった。今はお姉様が通ったのと同じ学園で学んでいる。

 学園は楽しい。お友達もたくさんできた。


 お姉様は卒業後、ハリルと結婚した。今は泣くこともなく毎日幸せそうに笑っているよう。時折届く恐ろしいほどの量の手紙に幸せな日々が綴られている。あのハリルの歪んだ愛に最初は心配だったけど、結婚してからカカア天下になったらしい。今ハリルはお姉様の尻に敷かれてる。どうであれ、お姉様が幸せならそれでいいのよ。


 あの、十二歳の頃、お姉様を助けるべく奮闘したのは今ではいい思い出になった。

 そして当時側にいたクロフォード王太子殿下。生意気にも小さかった私は彼に偉そうな態度を取っていた。あれで良く怒られなかったものだ。何度も手紙を書こうと思ったけど、恥ずかしくて書けないまま。

 今はあの頃の彼と同じ歳になった。ちょっとは私も大人になったってことよ。


 最近の変化といえば、結婚の申し込みが後を絶たなくなったことかしら。あいも変わらず、男たちは我が家の財産を狙っている。まったくもう。全部断るのも大変だ。

 今日も結婚の申し込みがあったらしく、早く家に帰ってこいとお父様に言われていた。めんどくさいわ。


 でも、結婚したお姉様はすごく幸せそうで、本音を言うとちょっぴり羨ましい。だから、今日に限ってはちゃんと向き合ってみようかなという気分だった。


 私に起こった別の変化としては、横に広がっていた体が縦に伸びたということ。痩せて人並みになったかな。前はお菓子をばくばく食べてたけど、あれは成長期の食欲だったみたい。



 *


 学園の庭を颯爽と横切り門へと真っ直ぐ歩くマグリナを見て、男子生徒たちは色めき立った。


「見ろよ、マグリナ嬢だ」

「今日もかわいいなあ。なんとかお近づきになれないものか」

「お前じゃ無理だよ。あれほどの美人だぜ。結婚の申し込みもすべて断ってるって話だ」

「ああオレも断られた」

「お前もか、実はオレも」

「はあ。一体彼女のお眼鏡にかなう男は現れるのか……」


 その会話を聞いていた別の男子生徒も話に加わる。


「しかし、ついにあの男が参戦したって話だぜ。昔、居候してたって噂のあの隣国の……」


 

 *



 お見合いの会場は我が家の庭だった。

 まあ別に場所はどこだっていいのよ。

 

 でも、なんだか今日はそわそわする。いつもと違うような気がする。なんでだろう? 何かが起こりそうな、そんな予感がするのだ。


 空は青いし、雲は白いし、風は爽やかだ。なにもかも好調。


 私は持ってる中で一番いいドレスを着て、かわいい髪型にした。いつもはしないお化粧も、ほんの少しだけした。


 そして庭に出る。

 相手はもう待っていた。

 芝生の上に設置されているテーブルには山のようなクッキーがあり、その前には金髪の男性がこちらに背を向けて座っていた。


 私が近づいていくと、足音に気がついたのか彼が振り返る。



 ……ねえ、それが誰だったと思う?



 あえては言わないことにする。

 言ったらつまらないし、だいたい皆が想像しているとおりの人よ。

 まったく、素直じゃないのはどっちなんだか?


 私は嬉しくて、とてつもなく幸せで、せっかく着飾ったドレスも、かわいくした髪型も気にせずにその人に走って飛びついた。勢いよく椅子から転落して、芝生の上に二人で転んだ。

 その人は愉快そうに大声で笑いながら私の頭をぐしゃしゃに撫でた後、思い切り抱き締め返してくれたのだ。



 これで、私の物語はおしまい。

 語ることは語り終えたもの。


 それから二人はどうなったかって?

 お話の締めくくりはたいていの場合こうでしょう。


 そして二人は……ううん、みんなは、いつまでも幸せに暮らしましたとさ!




 -おしまい-

  

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