第一章 No.1 番人
汚れきった世界を変えるため特殊な技術により生み出された組織は法の番人となり犯罪や不正に対して冷酷に立ち向かう。
ここは、違う世界の日本だ!
そう、一言で言うとパラレルワールドの中の1つである。
風景や建物は、どのパラレルワールドも進み方は似ているがどの世界も何か特別なものがそれぞれ違う。
2xxx年の夜、日本の上空を一機の戦闘機が飛んでいた。
戦闘機の貨物室の中で、エンジン音と共に誰かの声がする。
『……これより………………任務を……開始します。』
耳元に付いてる通信機からノイズ混じりの声が流れる。
それを、座って聞く男と女の姿があった。
黒い羽織のような服を纏った二人は互いに顔を合わせ頷く。
顔全体を覆うようなマスクを付け背中にリュックを背負い何やら包みにくるまった物を背負った。
準備をしていると重たい金属音が共鳴し飛行機のハッチが開き始めた。
突風じみた風と共に上空の冷たい空気が流れ込む。
そして、再び通信機から声が流れる。
『……目標点まで……5…4…』
秒読みが始まると同時に、二人の体に力が入る。
『……2……1……神と共に!』
その、掛け声と同時に二人は飛び降りた。
とてつもない風圧と気流がどれだけの高度かを表していた。
男が、耳元の通信機を触りながら話した。
「うひょー高い高い、めっちゃチビりそうだ!」
と笑いながら言う。
その言葉を聞いた女が
「……そう、するなら分からないようにしてね!」
と毎日漏らしているような感じの返答だった。
「いやいや冗談だよ!」
「ってか、毎回漏らしているような感じの言い方止めて……!」
「それとも、パートナーが漏らしてた方がいいのかな!?」
とキメ顔ポーズをして答えたが
「ゴメンなさい……何言ってるのか分かりません。」
と即答で流された、そして続けて
「何かポーズしてるけどマスクしてるから顔とか何にも見えないから意味が分からない!」
とあまりにも冷静に返されてしまい男は悲しみと嘆きに襲われていると。
「さて、そろそろ見えてきたよ!」
と女が言った。
二人の落ちてる先には家や建物の灯りが一面に広がる都市が広がっていた。
「あの、高いビルだな!」
と男が指をさして言う。
建物が密集している中に1つだけ大きなビルが
どっしりと建っていた。
「任務通り私は屋上から階段を使って降りていく!」
「あなたは、下の入り口から徐々に登ってきてねっ!」
そう言って女はお腹当たりにある紐を引っ張ると
後ろのリュックの中からパラシュートが開き減速していく。
「それじゃ、また後で!」
と男は手を振りビルの入り口に標準を合わせた。
「……3…2…1」
男はそう呟きながらパラシュートを開く
地面ギリギリで減速し男は直ぐにリュックを外す。
男が地面に着地すると着ていた黒い羽織が闇夜に舞う。
そして、服のホコリを軽く手で払い静かにマスクを外し羽織のような服に付いているフードを深く被り腰に巻いてあるベルトに手を掛けた。
そのベルトのサイドら辺には埋め込み式のレバーが付いていた。
男が、それを引っ張るとなんとベルトの後ろに何やら黒い塊のような物が腰のサイドに移動した。
そして、背負っていた包みを下ろし開けると二本の太刀が入っていた。
1つ目は鞘から頭まで全体が黒色の刀で鍔と目貫だけが真紅の色になっており月明かりで怪しく輝いていた。
2つ目は鞘と鍔が黒塗りで柄巻が濃い紫で目貫が紺の鮮やかな色の刀だ。
そして、先ほどサイドに移動した黒い塊には2つの穴が空いていてそこに2つの刀をしまう事が出来るようになっていた。
「やっぱり、この刀を固定するやつは快適だな!」
「どんなに動いても、すっぽ抜けるって事もないしな!」
と男は気持ち悪い位のニヤつきをしたのだった。
しかし、その後直ぐに頬を両手で叩き気持ちを切り替えたのだった。
「さてっ!そろそろ準備はオッケーか!?」
男は、耳に付いてる無線を触りながら言った。
「……オッケー……いつでもいいよ!」
無線越がら聞こえてくる女の声は、なんとも頼もしく軍隊のような感じのハキハキした声が聞こえてくる。
それを聞いて男は少し笑みを浮かべながら言った。
「ハハっ!それじゃ行くか!」
男が言うと。
「了解!」
落ち着いた声で返事をする女。
そして、二人が一呼吸整えた後に同時に言ったのだった!
「制裁を!」
その掛け声と共に男は歩き始めた。
入り口には体格のいい男の警備員が二人立っている。
人相的には、いかにも人を殺してきましたよっていうような警備員としては適任の二人だった。
「おいっ!変なフード被った奴さんよ!」
怖そうな警備員の一人が声をかけた。
「何、堂々とこのビルに入ろうとしてるんだよ!」
「この場所は、お前みたいなのが入れる所じゃないんだよ!」
「とっとと帰りな!」
怖そうな警備員の男達は不適な笑みを浮かべバカにしたかのように追い払おうとしていた。
そして、一人の怖そうな警備員が胸ぐらを掴もうとした時だった。
いきなり、その男の腕が血しぶきと共に地面に落ちたのだった。
「……な……なん……なんだこれは!」
あまりにも一瞬過ぎて理解しきれずに警備員の男は焦りながら言った。
その時だった、男は静かに警備員に向かって言ったのだった。
「……280!」
意味深な言葉と共に警備員の男の視界が逆さまになった。
「えっ?」
警備員の視界に入ってる男の姿が逆さまになって見えていく。
「てめっ!何しやがった!」
もう一人の警備員は困惑と恐怖で額から大量の汗が流れた、しかし警備員は直ぐに深く呼吸をし何が起きたのか分からない事を考えるのを止めて、この男の正体を突き止める事にした。
「へぇ~!とても冷静ですね!」
「普通なら、困惑して突っ込んでくるんですが上手く感情をコントロール出来るとはビックリですよ!」
男は、少し笑みを浮かべながら警備員に言った。
「バカにして貰っては困る、それが出来なくてこの場所の警備員なんて出来る筈がない!」
「お前は何者で何しにここに来たんだ?」
っと警備員は質問をした。
簡単に答えが分かるとは思っていなくても焦りが冷静な判断を曇らせてしまい聞きたい気持ちを先走りにさせてしまっている。
「僕は、制裁を届けに来た者だ!」っと男は答えた。
警備員の男は、訳が分からなくなる。
この男は、一体何を言ってるんだ。
「ふっ!どうやら完全にイカれてるらしいな!」
「意味の分からない発言をして困惑させる気か?」
警備員の男は、鼻で笑いながら男の発言を待った。
「僕は、真面目に話をしているんだけど!」
男は、少しムスッとした表情で言った。
しかし、警備員の男はそんな話を信じる訳もなく
「ちゃんとした答えが聞けるとは思ってない!」
「ただ、少しばかり武術の心得があるからと調子に乗るなよ!」
警備員の男は小馬鹿にした態度で言いながら男の方を見た。
(こんな男に負ける筈がない、さっきは不意を突かれただけだ…)
(奴は何かしらの武術を使い俺の仲間を殺したんだ…)
(………でも、どうやって腕と頭を飛ばしたんだ)
警備員の男は、思考を重ねたが困惑状態が酷かった。
警備員が、自分の身体を見ているのに気づいた。
「そんなに、体ばかり見るなよ!」
「男に見られて嬉しいとかそんな趣味は無いんだけど…」と答えた。
警備員の男は、呆れた顔をしながら
(は~い~??)
(この野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁ!)
(俺だって好きで見てるんじゃねえっつうの)
(なんで男の体を見て、わ~い、わ~いってなるんだよ)
(男だぞ~!オ・ト・コ!なんでそうなら□%#*□%#)
警備員の頭の中は、怒りと憎悪でいっぱいになった。
「別に、お前を好きで見てたんじゃないだよ!」
「アイツの腕と頭を飛ばしたのはそれだな!」
警備員の男は、暗闇で怪しく光る物に指をさして言った。
「御名答!良く見えましたね。」男は笑いながら答えた。
それを見た警備員の男はニヤリと笑う。
(これで分かった奴は武術では無く剣術の方に覚えがあるとみた)
(構えてから斬らない所を見ると噂に聞いた事がある抜刀系だ)
(しかし、あれは速さと完全に相手を殺すためのリスクでかなり懐までこないと斬り込めない超近距離だと聞く)
(……フフフ!……勝った)警備員の顔が歪んだ。
そして、おもむろに内ポケットから銃が出てきた。
「遠距離に特化してるこれならどうだ!」
鳴り響く、銃声が静寂な夜をかき消した。
「終わりだぁぁぁぁ!終わりだぁぁぁぁ!」
狂ったかのように撃ち続ける警備員の男。
しかし、警備員の目には信じられない光景が映った。
あれだけ、乱発してるにも関わらず弾の軌道が分かるかのように高速で交わす男。
そして、たまにフードの間から顔が見えると何故か赤く光る物が動いているように見えたのだ。
全部の弾が撃ち終わり、空撃ちの音が鳴り響く。
警備員の男は慌てながら男の居た方を見た。
「あれっ?居ない……?」警備員は辺りを見回す。
しかし、男の姿は無く静寂がピリピリと肌を刺した。
(銃が恐くて何処かに隠れのか?)
警備員の男は勝った気持ちで軽薄となる。
「出てこい!ビビってるのか!」と挑発をする警備員の男。
すると、背後から声が聞こえた。
「245!」男の冷酷な低い声が謎の数字を読み上げた。
それと同時に、警備員の男の首の横から綺麗な黒い刃が飛び出してきたのだ。
警備員の男は恐る恐る、その刀の刃長を目で追った。
切先から縁の根元までが綺麗な黒になっており刃文は紅色が施されていた。
警備員の男は、凍てつくような殺気と絡み付く恐怖の自負が体の自由を奪ってしまい立っているのもやっとだった。
警備員の男は言葉を振り絞りこう言った。
「まっ……まって……待ってくれ……」
「殺さずに助けてくれるなら、お前の望む物をやろう。」
「金か?女か?ボスに報告していいポストを用意するから!」
「頼む!殺さないでくれ……」必死に訴える警備員の男。
それを聞いた男が口を開く。
「僕の欲しい物……僕……欲しい物」
その時、男の脳裏にはある光景が映る。
「・・・!こんな所に居たの!?」と謎の女性が出てきた。
その姿は、とても美しく肩位の長さの茶色の髪の毛で頭の上には狐の耳が、お尻からは尻尾が生えている女性だった。
男は、少し声を荒立てた。
「お前達が……居るから……」
「欲しい物なんて……何も無い……」
今まで以上に殺気が警備員の男に伝わった。
「そろそろ長話も止めにしよう!」
「……さようなら!」と男が冷酷に呟いた瞬間だった。
警備員の男の視界が逆になり静かに倒れていく。
そして、倒れた骸を眺め男はこう呟いた。
《永久に眠れ、黒の番人の名の元に》
そう呟くと男は入り口へと向かっていった。