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(MINTO’S EYES)
――私は、あの人に仕えることになった。
そのきっかけになったのは、彼女に力を授かる前からだ。
あの人は、目的を決して忘れなかった。五年前、あの人は私の元を訪れたのはそのためだ。
今、あたしはここにいる。
帝都ラバンティスの城の中だ。
ラズリ共和国により迫害された私たち召喚民は、彼女に会ったのだ。
「どうかしら?わらわの国は?」
「見事です、辺境のテスコンダルにはない文明です」
「そうか、だがどんどん大きくするぞ。この国は、大きくしなければならない」
私が話している相手は、皇帝フロランタン。
威厳のある女性だ、皇帝とはこうも強い存在なのだろう。
田舎のしかも、魔物が多い島に転生した私とはまるで違う。
きらびやかで優雅な生活をしていた。
「魔王の存在ですか?」
「ええ、このままではこの世界は魔王に滅ぼされてしまう。
だからこそ、わらわは世界を統一する皇帝にならねばならぬ」
「はい、わかりました。私も協力しましょう」
「本当か?」私が快諾すると、フロランタンはうれしそうな顔を見せた。
その顔は、高貴というかかわいらしかった。
「やはり転生者同士、話がうまく進む」
「でも、私は何をすればいいのですか?戦争ですか?」
「戦争には、黒兵衛がいる。彼の軍略や悪魔脳があれば、戦争はうまく進む。
戦力としてはアンジュにも転生者を呼び出してもらい、補強はできる。
だけど、ミントには別のことをしてほしいの」
「別の事?」
「あなたの居城は、フロウフラ……いえあそこでしたね」
「あの地ですか」
それは私が生まれた場所。
転生先のフロウフラは、ただの廃墟だった。
そこで、『召喚民』という一族と一緒に私は暮らしていた。
数十人程度の小さな集団、子供も生まれた。
そんな中で、彼女は兵士を引き連れてフロウフラに現れた。
そして、私をこの城に連れてきた。
「ええ、あなたたち召喚民は優れた魔法技術がある。それを提供してほしい。
代わりと言っては何だけど、地位と物資を送らせてもらう」
「それには及びません。私は……」
そういいながら、私はフロランタンの前で笑顔を見せていた。
「仕事がしたいです」
「やはり、わらわの目に狂いはないようだ。
では、お主には魔王の復活を阻む役目を担ってもらおう。
いずれ、その地には魔王の原形が現れるという予言が出ている」
「魔王の原形?」
「そうだ、それは一匹のノケモンだ」
フロランタンは、そうはっきりと言っていた――
(MATOI’S EYES)
廃墟の町フロウフラは、一人の少女の登場で流れが変わっていた。
短い茶髪に、黄色いシャツとホットパンツ。現代的な洋服のいでたちだ。
だからこそ、他の召喚民と姿が大きく変わる。
ましてや、ケーンやケーナを子供に持つ母親には到底見えない。
「ユキがノケモンと一緒にいる噂は、本当なのね」
「どうしてミントが」
「ミントって……」
「帝国の三賢者の一人、ミントよ」
ユキの言葉に、胸を張っている少女ミント。
だけど、俺はこの顔をどこかで見たことがあった。
間違いなく、彼女は転生者だと俺は確信できた。
(なんだ、アニーの工房でも、安土剣豪でもこんなキャラはいないよな)
アニーの工房の世界観はファンタジーで、安土剣豪は戦国時代だ。
共に世界観が違っているが、現代的なキャラクターはいない。
「何見ているのよ」
「俺か?」ミントが俺の視線に気づいた。
「お前は、転生者なのかと思って」
「転生者よ、あなたと同じノケモンドゥの」
「え?」意味がよく分からない。
ノケモンはモンスターだ、普通の人間はいない。
「どういう意味だ?」
「ノケモントレーナー、そう言えばわかるかしら」
「あ、そうか」俺は手を叩いて納得した。
ノケモンドゥには、ノケモン以外にも人間が出てくる。
主人公のアバターではなく、一部敵はトレーナーバトルで人間がいた。
「そう、それが私、ミントよ」
「つまりはただのモブか」
「モブっていうな」
ミントは、俺のことを睨んでいた。モブと言われるのが相当、いやらしい。
「帝国は滅んだぞ」
「そう、そうなのね」
「驚かないのか?」
「私は仕事をするだけ、ここに現れたノケモンをすべて倒す」
それは、はっきりと言い切っていた。俺に対しての敵意を感じる。
「それは、どうしてだ?」
「あなたが危険だからよ、グリゴン」
そういいながらもミントの指には、指輪が見えた。
魔法を使う媒体の指輪が、怪しく光りそのまま彼女は石を三つ放り投げていた。




