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いきなり泣いているサラは、俺に抱きついてきた。
いつも笑顔でおっとりしているサラが、泣いていた。
モフモフの俺にしがみついて、泣く。
レティアも、驚いてサラを見ていた。
「どうしたの?」
「私は、行きたいです」
「行きたいって……」
サラの後ろには、一人の男が入って来た。
困った顔を見せた、白いスーツの男。シブーストだ。
「シブースト……」俺はシブーストを見ていた。
「サラちゃん」
「お前、何をやったんだ?」
「ほんと、最低ね」
レティアが横目でシブーストを見て、俺はそのシブーストに問い詰めた。
「僕は、サラちゃんのためを思って言ったんだ」
「だから何を?」
「彼女は、明日の船で帰るべきだ」
それはシブーストの、突然の提案だった。
だけど、サラは顔を上げて俺を見ていた。
涙目で、俺に何かを訴えかけるように俺を見ていた。
「嫌です!私はママを、探しに行きたいです」
「マトイ達は知ったのだろう。この大陸の現状を」
「魔族か?お前は知っていたのか?」
「当たり前だ、僕は君に話を聞く前から知っていた。
この大陸には魔族がいて、魔王の復活をするべく動いている」
シブーストは、悪びれた様子もなく俺に言い放つ。
「あなたは、どこまで知っているの?」
「この大陸に魔族が、いることだけだ」
「魔族」サラは、シブーストの放ったその単語をつぶやいていた。
落ち込んだ弱気のサラに対し、シブーストがさらに言い放つ。
「ああ、魔族がこの大陸にいる。だから君はこの大陸から帰るべきだ。
君のことを、僕たちは守ってあげることができないんだ」
「そう……ですね」サラの顔に、元気がない。
魔族という言葉を、サラも何となく意味を理解しているようだ。
「なあ、そんなにやばいのか?魔族って」
「数が多いんだ、倒しても倒しても無限に沸いて……」
「みなのもの……食事ができたぞ」
シブーストの言葉を遮るように、ユキがこの部屋に入って来た。
唯一食事の用意をしていたユキの登場で、くしくも俺たちパーティが部屋にそろっていた。




