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俺にしか見えない黒いオーラが、サラの周りにまとわれていた。
そこには純粋で、可憐で、人を救うことに情熱を持った医者のサラはいない。
サラの体をのっとり、俺を探していたゴンラーの姿がはっきり見えた。
だけど、それはノケモンである俺にしか見えない。ほかの人はサラしかみえないのだ。
ベッドの上に立って、サラは俺たちを見下していた。
「サラの体から出て行け、ゴンラー!」
「それはできない。彼女の中にいる以上、ボクは攻撃されないから」
「ちっ」俺は右手を握っていた。
だが、言葉通りにその腕を振るって攻撃はできない。
「お前の目的はなんだ?」
「君には消えてもらう」サラと同化したゴンラーは、右手を突き出した。
それを俺に向ける。
「避けないでよ」そう言いながら、右手に黒いエネルギーが、溢れて、ビームのように出てきた。
「《サイコこうせん》かよ!」
無論、黒い光線を俺は避けた。
前転して避けたその黒いエネルギーは、そのまま城の白く分厚い壁まで飛んで行き、壁に大きな穴を開けた。
「な、なんて破壊力なの?」レティアとルデースは驚いていた。
軽く城の壁を開けていく、黒い光線。
「避けないでよ」
「当たりたくないな」
「知っているだろ、これは《はかいこうせん》」
すると、サラの口から血を吐き出した。
「サラっ!」俺の前で血を流しながらも、黒いオーラが立たせていた。
「使う人間の体力を削り、威力を発揮する。まさに自分も相手も破壊する光線だよ」
「お前……許さないぞ」
「さあて、次の一発を打とうか」再び手を俺の方に向けた。
動くたびに、黒いオーラが反応する。手に集まっていくのだ。
「くそっ、どうする?」
ここには俺の他にもレティアと、ルデースもいる。
おまけにゴンラーの力は、やはり半端なく高い。
「サラ、もうやめてよ!」
「こっちを殺すか?」叫んだレティアに、手を向ける。
「おい、やめろ」俺は全力で止めに行く。巨体を揺さぶって、ジャンプしてサラにタックルをした。
ベッドがミシミシと言いながら、サラはそのまま倒れる。
だけどサラの表情は変わらず、すました顔だ。
俺がサラに覆いかぶさったが、技の構えは全く解けない。
「やっぱりきた、グリゴンよ」
「お前の好きにはさせない」
「攻撃できるのか?」
ゴンラーがしゃべっているが、俺の下にはサラの小さな体がある。
華奢で、可愛らしい顔がそこにあった。どう見てもその姿はサラ。
「できないだろ、じゃあ死んでくれ」
そう言いながら、二発目の《はかいこうせん》を放った。
近距離で、覆いかぶさった俺は避けることができなかった。
「いっ、いでえっ!」そう、その黒い光の帯は、俺の体を貫いていた。




