101
兵士たちは、ドアの前に並ぶ。だから俺は、ドアの前で壁の近くで間抜けな表情で立っていた。
どうもこのグリゴンの顔は、目や口が細長く、いつも眠たそうだ。
サラの持っていたリュックを、右肩にかけて見ている。
無論、変なことが起こるはずもなく、暇な時間が続く。
だけど、眠ることはなく目を光らせていた。
(次から次へと)俺は重い体を起こして、一人の人間を呼び止めた。
それは黒い仮面に黒いマントといういかにも怪しい人間が、並んでいた。
「お前はなんだ?」
「私だ、気にするな」
「そうはいかん」
ドア越しに並ぶ黒い仮面の男を、俺は呼び止めていた。
不服そうな態度で、俺に呼ばれてじっと見ていた。
無論、仮面越しでどんな顔をしているか知らないが。
「なんだ、前に見たことがあるではないか。クマ男」
「悪かったな、クマ男で。影医者マウンだっけ?」
「よく覚えているな、クマ男」
「マトイだ、ちゃんと覚える気がないだろ」肩に手をかけて、行列から引き離した。
「私を外すのかね?」
「明らかに、ケガしているようには見えない」
「人を見た目で判断してはいかんよ、クマ男くん」
「お前のほうが、よっぽど見た目で判断しているしな」
やれやれと俺はため息をつく。
「サラはこの中か?」
「そうだが……会いに来たのか?」
「そういうことだ」マウンは静かに頷いていた。
「彼女は、レジスタンスの仲間になったのか?」
「いや、医者として契約している」
「そうか、サラはここで施術をするのか」
「ああ、あんたも見た目は闇医者で悪い薬でも使いそうに見えるが」
「そうかもな」怪しくポーズを取っている闇医者マウン。
突然マウンが、かかとを上げて背伸びをしてから俺に耳打ちをする。
「もしかして、お前らは『ノクセント』を探しているのか?」
その言葉に、俺の顔が驚きに変わった。マウンは背伸びをやめて、俺を笑いながら見ていた。
「どうしてそれを……」
「私はなんでも知っている、影医者だからな。だが私もそれを先に手に入れるつもりだ。
健闘を祈っているよ」背中を向けて、手を上げて俺から去っていった。
しばらく、俺は影医者の背中をじっと見ていた。




