忘れ物が起こした悲劇
それから私は、部活の無い放課後に膝枕をすることで、猫くんが寝ている授業中と膝枕の時間に、頭を撫でさせて貰えるようになった。
一週間は足がしびれたけど、今ではもう大丈夫になった。
「今日は部活だったよね?」
「うん」
「そっか、お休み」
「お休み」
昼休み中に確認の会話をこっそりと交わすのも日課になってきた。
部活のある日、私は部室に来た後であることに気がついた。
「あ、筆箱がないや」
「ん?鈴ちゃん、机の上に置きっぱなしじゃなかった?」
サヤカちゃんに言われて、思い出した。鞄に入りきらなくて、手で持ってこようと思ったのに、すっかり忘れていた。
「そうだった、そうだった。取りに行ってくるね」
「はいはーい」
校庭からは元気な運動部の子達の声が聞こえてくるが、廊下には誰もおらず、静かだった。
今日も、猫くんは寝てるのかな?
少しの好奇心でドアについている窓から教室を覗いてみた。
机の上に、私の筆箱と猫くんのバックが置いてあるのが見えた。
そして、少しだけ視線を下に下げると……。
心臓が止まるかと思った。
教室の隅、いつも私と猫くんがまどろんでいる場所。そこに、猫くんを膝枕する長い髪の女の人が見えた。
上履きの色で、女の人が三年生の先輩だと言うことが分かった。
私は、それ以上そこにとどまることができず、その場から逃げ出した。




