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至福の時
猫くんは人が居なくなったのを見計らって、口を開いた。
「鈴ちゃんって呼んでもいい?」
「うん。別にいいけど」
「ねぇ、鈴ちゃん。俺の髪の毛、ちょくちょく触ってるでしょ」
思ってもみなかった言葉にひゅっと息を飲んだ。
「気がついていたの?」
「うん。いつも眠いけど、いつも寝てる訳じゃないから」
「……ごめん。猫に似てたから、つい」
「……俺の毛って、猫に似てるの?ふーん」
猫くんは、少しだけ考え込むと、笑った。
「撫でたいなら、撫でていいよ。俺も、撫でられるのわりと好きだし」
「い、いいの?」
私が恐る恐る、といった感じで尋ねると、猫くんはまた考え込み
「鈴ちゃん、部活どうするの?」
と言った。
今から行けば十分に間に合うが、正直言って面倒くさかった。
「んー、サボろうかなって思ってる」
「じゃあさ……膝枕してくれる?」
いたずらっぼく笑った。
「ふぇ!?」
「だめならいいけど」
「だ、だめじゃない!」
「じゃあ、お願い」
私が必死に言ったのが、どこかおかしかったのか、笑われてしまった。
膝の上で眠る猫くんの頭をなでなでしているのは至福の時だった。
一、二時間膝枕をしていたため、足がしびれて家まで送って貰ったのは忘れたいが。




