みなとちゃんと苺みるくと教室
「ゴクゴクゴク……プハーッ」
はぁ~~、体育の授業後に飲む苺みるくは、最高に美味しい! 格別です。幸せ~♡
朝、ペットボトルのお茶を買ったんだけど、運動したら別の飲み物を飲みたくなったんだよね。
なので、急遽紙パックの苺みるくを自販機で買っちゃいました。
余計な出費かもしれないけど、この疲れに染み入る癒しの一時が味わえるならば、私は後悔なんてしない。
「おっ、良いもの飲んでるね。一口ちょうだいー」
私がチューチューとストローで、苺みるくをチマチマ吸っていると、姫森さんが私の座っている席にて現れる。
クラスが違うのに教室内にいるなんて、何か用事でもあるのかしら。
「どうしたの、忘れ物でもした?」
私がそう訊ねると、姫森さんは声を荒らげて、
「ちょっと! あたしのことを忘れん坊扱いとは心外なんですけどー!」
と、少し怒り気味に答えた。
「わっ、ごめん、ごめん」
勝手に決め付けるだなんて、大変失礼な態度をとってしまった。ちょっと反省しないと。
「素直な態度でよろしい。というわけで、御詫びとして火置のそれを二口ちょうだいー」
イライラとした表情から一変して、今度はニコニコし始める姫森さん。
怒り顔を笑顔にするなんて、苺みるくは凄いなぁ。正にスマイル・みるくだ。
それはそうと、半分以上は飲んだから、姫森さんがそんなに欲しいなら渡そうかしら。
「そんなに残ってないから、いっそ全部あげるよ」
「おおっ! 火置ったら判ってるー♪ サイコーの判断だよ、それ!」
飲みかけの苺みるくを姫森さんに手渡す。
すると、彼女は直ぐにストローで、それを美味しそうに、ジュルジュルと一気に吸う。
幸せそうな顔をしているなぁ――先程の私もこんな顔をしていたのかな?
「おい、そろそろ休み時間が終わるぞ。自分の教室に戻らないで、ここでのんびりしていいのか」
あら、二人でまったりと過ごしていたら、田所君に注意されてしまった。
うーむ、休み時間か。
黒板の上にある壁掛け時計を確認してみると、あと数分で授業が開始される時刻になるようだ。
ふふふ、態々時間を教えに来てくれるなんて、田所君は真面目で優しいなあ。
「……んー? やだやだ、小姑かよ。細かいこと気にし過ぎだしー」
紙パックに刺さっているストローを噛み噛みしながら応答する姫森さん。
どうやら、飲み終わったみたい。
……でもって、残念ながら、彼の優しさに姫森さんは気付いていない。わ、分かりにくいから仕方がないね。
「はっ、ストローを咥えながら喋るなんて、行儀の悪い女だな。飲み終わったら、さっさと捨てに行け、時間が勿体無いぞ」
「はぁ? 小姑に言われなくても、す・ぐ・に・しますからー…………っというわけで、火置、後始末よろしくねー!」
姫森さんはそう言うと、ベコベコに凹んでいる紙パックを私の席へ、スッと置いて行く。
「ふんっ、お前、あまり甘やかすなよ。こういうことを平気な顔でする女は、大抵碌でもない……って、ベランダから帰ろうとするな! ちゃんと廊下から回って行け!」
「繊細・神経質マン、超・ウザいんだけど! あっ、火置、ご馳走さま。じゃあねー」
姫森さんは、田所君に向かってあっかんべーをしたら、ベランダから去っていった。私の机に苺みるくを置いて……
さてと、置きっぱなしにするわけにもいかないし、急いでこれを捨てに行こう。
「渡せ、俺の方がゴミ箱に近いから捨てて来る」
イライラしながらも田所君は、私のごみを持っていった。やっぱり優しい。
それにしても、彼って姫森さんと仲が良くないんだね。虹野さんも攻略対象と仲が悪かったし、妨害する系の人は皆そうなのかしら。少し気になる。
…………あら、そういえば、姫森さんは私のいる教室に何故いたのかしら?
小桃「自分の物より他人の物の方が美味しく感じるのってさー、不思議な感覚だよねー?」
土筆「……また誰かの物を貰ってきたの?」




