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みなと君と料理部10

 苛立ちが乗った靴音を盛大に打ち鳴らしながら、階段を下りる人物――――響かせている足音は、ヒステリックな女性の話し声と混ざり合い、一つの騒音(おんがく)って、階段と通路中にとどろかせている。






 あああ、やっぱりあの声は、なのだ先輩たちとバチバチ争っていた人たちじゃん。うわっ、面倒臭そうな予感がするし、絶対に関わりたくない。


 あの二年生たちが下駄箱から離れる瞬間、チラッと見られたような気がするんだよな……俺たちは大丈夫かな。視認されてないといいけど。



「あの騒々(そうぞう)しい方たちとは、お知り合いですか?」

「いえ、全然知らない人たちです」


 なのだ先輩たちとは、顔見知りというか彼ピさんの争奪戦をするくらいだから、百パーセント知り合いだと思うけど、俺たちとは初対面です。



「なるほど、そうですか……ならば、予定を変更しましょうか。おにぎりは、ありがたく、この場所で頂くことにしますね。相風さん、よろしいかしら?」

「あっ、はい、どうぞ……?」


 竜頭さんは、かばんを床に置いて、革靴を履かず靴下のまま、段差に腰を下ろす。

 そして、足裏を汚さないように、簀子すのこにちょこんと足を乗せる。



「本当に真面目な人だこと」

「……?」


 靴箱に寄り掛かっている蛍都さんが竜頭さんの顔を見て、何かを感じとった。え、エスパー蛍都さん、再び。俺と違って、カンが鋭い御方だ。



 …………えっ、なに、なに、なに? 何に気付いたの?

 気になる! 俺、全然分かんないんだけど。

 ヒントが欲しいです。俺、自分で言うのもなんだけど、鈍いのでどうかお願いします。



 俺は蛍都さんを穴が空く程、じっと見つめる。


 俺の困り顔を見てくれ~、俺に理由を教えてくれ~、俺を置いてきぼりにしないでくれ~

 クレクレ三連発! 気付いてくれるのを期待して発射、オーライ。



 静かなる熱い視線(アピール)が伝わったのか。

 蛍都さんは俺の方へ顔を向いて、


「……後で教えてあげるわ」


 ボソっと小声で言った。






「――もう、もう、ハニーは何処どこに行っちゃったの! みんなで一緒に、はしゃいで楽しみたかったのに! 上手くいかなくてイライラするーー!」

「はわわっ、残念! でも、また次の機会があるよっ」

「結局、彼は見付かりませんでしたね。先に帰ったのかしら……全くつまらないですわ! あたくし、とっても楽しみにしていたのに!!」


 二年生、遂に下駄箱へ到着っ!!

 かなり不満が溜まっており、大声で愚痴ぐちっておられる。怖い先輩たちだ。



「ん、この梅味のおにぎり、とても美味おいしいですね。形も綺麗な三角形で、見た目も美しいです」

「!! 実はそれ、料理部の部長さんが作ったおにぎりなんだよ~」

「それなら、納得の出来栄できばえですね」


 竜頭さんはモグモグとおにぎりを頬張ほおばりながら、のんびり食レポをし始める。


 おおーっ! さすが、部長が握ったおにぎりだ。天下一品だぜ! 俺は塩むすびしか食べなかったけど、梅味も美味しかったのだな。



 さて、ほのぼの系ムードで、このままいけるかな……いや、心配だ。一応あの先輩たちを軽く探ってみましょうか。



 横目でチラッと二年生の下駄箱の方へ視線を向ける。

 顔は固定。顔面まで向けていたら、俺が見ているのがバレバレだからなぁ。飽くまでも、目だけを使う。

 からまれた時に言い訳が出来るようにしないと。ここは重要ポイントだ。



 先輩たちは上履きを靴箱に仕舞い込んで、外履きを手に取ろうとしているところだった。


 んー……彼女たちは、俺らを多少は気にしている様子だが、どうやら話し掛けたりはしなそう。一安心。

 というか、俺と蛍都さんよりも竜頭さんの方が気になるのかな? なんとなく、俺たちよりも目を向けているような……何故だ?

 


 



 




 

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