みなと君と料理部5
副部長によるおにぎりの写真撮影が終わると、愈々お食事会が始まる。
料理をする時は二年生と三年生で分かれていたが、食べる時は皆で囲むらしい。なので、一台の調理台に学年関係なく集まることになる。
因みに席順は、俺たちの反対側に二年生が座り、俺たちは三年の先輩の隣に座る。
だいたい四個から六個のおにぎりが、平たい一枚のお皿に、デデンと聳え立っている。その中でラップという透明な神秘の霞に包まれているのは、二個か三個。全部に巻いてある訳ではないのだなぁ。法則性は何だろう。
調理台には、おにぎりが乗ったお皿が何枚も置いてある。おにぎりもこれだけ集まれば、山のように壮大で雄大だ。「おにぎりヤッホー」と叫んだら、山彦が返ってきそう。
そうして、俺は、おにぎりを嘗めるように、じろじろと見つめながら評価する。
……待て待て待て、おにぎりはペロペロよりもパクパクの方が絶対に良い。おにぎりはエッチじゃないからな。
――リテイク、行きます! そうして、俺は、おにぎりを食い入るように、じろじろと見つめながら評価する。
おー、こっちの方が雰囲気が良いな。
うむ、それでは評価発表! 二年生と三年生、どちらの握り飯も美味しそう~♪ 選べない美味しさ~♪
「ラップに包んでいるのは、お持ち帰り用だから食べちゃ駄目よ~♡」
部長さんはハートを振り撒きながらビシッと指摘した。
勿論、俺たちの返答は、
「はい!」
「分かりました」
了解なのです! 俺は良い子なので、勝手に食べません。絶対に食べません。信じて欲しいぜ~~
「結構の量を握ったんだナ。土産もそこそこの数が有りそうダっ!」
「そうね、でも、ちょっと消化不良だわ~♡ 今日の部活動は、炊飯器と冷蔵庫しか許可が下りなかったから、少しつまらないのよ。包丁も使えなかったし不便だったわ~♡」
三年生の先輩たちが料理の感想を言う。
そういえば、鮭は瓶詰めだったし、他の具も袋に入っていたものを使っていたなぁ。
なるほど、一部の電化製品しか使用出来なかったから、そうなったのか。
ならば次回は、焼きおにぎりや卵巻きおにぎり、あとは、焼きたらこ・焼き鮭・ハムチーズ・唐揚げ等を具にすれば良いんじゃないか?
俺は主食×たんぱく質の組み合わせが大好きなんでね、大好物を推していくよー
「今日は、おにぎりだから、お箸いらないよね? 必要な人います?」
二年の先輩に、そう訊かれたが、首をふるふると振って断った。隣に座っている蛍都さんも同じ仕草で断る。
「あたしは、ちゃんと割り箸を持って来たゾ」
あっ、鷹の目の先輩は、箸でおにぎりを食べるのか。直で食べてそうなのに意外だ。
実はポテトチップスも箸で摘まんで食べるタイプなのかな? 俗にいう、手を汚さないタイプってやつなのか!?
「……そういえば、指に絆創膏を貼っているものね~♡」
「うむ、指を怪我した時は、手掴みで食べるのはNG主義者だからな、あたしハ。それに、食べるのにラップをいちいち巻くのも面倒だヨ!」
あれまー、辻斬りチャレンジが失敗して傷を負ったのかな、先輩。
「副部長、箸で食べるなら小皿を用意した方が良いと思います。というわけで、どうぞデース!」
「おおっ、ありがとう、気が利くのだナ」
二年生は戸棚から小皿を取り出して、副部長に手渡した。
ちらっと他のメンバーを見回したけど、どうやら、箸を使うのは一人だけだ。
……では、そろそろ、食べ始めるのかな。全員着席したし、もうすることはないし。いただきますコール、入っちゃいます?
それに、なのだ先輩もソワソワしてるし……って、ンンっ? よく見たら、なのだ先輩、ランチョンマットを敷いているじゃん。
わーーっ、ちゃんとしているというか、几帳面と見なすか。どう判断するか悩むなぁ。
なのだ先輩、本当に期待を裏切らないな……ランチョンマットなんてロリ☆懐かしいぜ。
「それでは皆さん、いただきます~♡」
「いただきまス!」
「いただきますなのだ」
「はい、いただきます」
「いただきます、なのデース」
「……いただきます」
「……いただきます」
皆の反応が見事にずれていて、バラバラの『いただきます』宣言になってしまった。フリーダム。まあ、誰も気にしていないみたいだから、深くは突っ込まないけど。
つーわけで、ごはんタイム! おにぎりタイム! もぐもぐタイム!
俺が選んだのは、塩むすび(塩おにぎり)と梅おかか味(たまご味のふりかけ)である。
塩むすびは、艶やかな白米に、引き立つ海塩がベスト・マッチしている! シンプルに、最高に、うまいぜ。嗚呼、噛む度、白米の美味しさが脳に伝わる~~
あーー、お米が美味しい、マジでお米が一粒一粒美味しい。米自体が美味しいと、小手先のテクニックなんて要らないんだなぁ。
梅おかか味は、潰した梅肉と鰹節を混ぜ混ぜ、仕上げに醤油をぽっちりと掛けた黄金配合で出来ている。
うむ、このおにぎりの具は、梅の酸っぱさと鰹節の旨味が堪らなく良いかんじで、おにぎりの白米部分に抜群に合うな。これぞ、錬金術師が考えた黄金レシピである! 天才的にウマーい――パチパチパチって、ゴールデン拍手を送っちゃう。
ところで、今食べている梅おかか味って、梅部分の方が圧倒的に多い気がするんだけど、名前表記は梅おかかでいいのかな。本当は、おかか梅なんじゃないの? おかか梅と何が違うの? 教えて有識者さんっ☆
そして、俺の大好きなたまご味のふりかけが塗してあるだけで、神・最強なおにぎりだ。スーっと吸い込まれるかのように、思わずおにぎり(たまご味ふりかけ)を手にとってしまったからね、俺は。
多分、おにぎりが「お前、オレのことが好きなんだろ――いいぜ、オレを食いなっ!!」と俺に働きかけたに違いない。おにぎり囁き洗脳事件、とても美味しい事件だったね……
口にするおにぎりは、どれもめっっちゃくちゃ美味しい。
だけど、夕飯が入らなくなってしまうと困るので、きちんとセーブしていかなくては……くっ、お腹いっぱいに食べられなくて、本当に残念で仕方がない!!




