みなと君と料理部3
おにぎりか……部長さんが言うように、難しい調理は必要ないし、重要なところは炊飯器が担ってくれるお料理だ。
まさに、初心者向け。低年齢のお子様にもオススメの料理である。
それに、料理に必需品といわれる愛情という名の目に見えない謎物質も注入しやすい。
なんてったって、白米と共に『愛♡情』とやらを、ギュギュッと握れば良いのだから簡単だ。
しかも、いつの間に混入しているのではなく、意図的に混入することが出来るし。うむ、愛情は見えている方が好ましい。俺は判りやすい方が好きだ。
「最初に、具なし・海苔なしの塩むすび(塩おにぎり)を作ります~♡」
おおっ、おにぎり界のシンプル・イズ・ベストじゃん。部長さんがそれを担当するのか。やはり、コツとか技術とか簡単に作れるおにぎりにも必要なのか……?
部長さんが、にぎにぎと握ったおにぎりは綺麗な三角の形をしていた。
何ていうか、デフォルメした動物の耳に似ている。具体的にいうと、ネコチャン、ネコチャン。白いお耳のネコチャン。
そして、部長さんは、塩むすびをラップにパパっと手早く包んで、白い平らのお皿にサッと置く。手慣れていて、早い。
直ぐに、お皿はいっぱいになった。
「次は梅味のおにぎりね~♡ 私は種無しが好きだから、とっちゃいます~♡」
新しい白い皿が置かれる。
バイバイ、天神様。いらっしゃい、梅肉。因みに、俺は種有りでも全然気にしないぜ。
「二年は梅おかかにするみたいだから、私たちはそのままを具にします~♡」
おーーっとぉ、部長さんの周辺に散っている♡を、先ほど握ったばかりのおにぎりが、何故かギュンギュンと吸い込んでいる。
もしかして、具の梅干しが部長さんの愛情的なハートを集めているのか……? 梅よ、それを集めてどうするのだ……? 部長さんのハートのポイントカードが梅界隈にあるのか……?
それにしても、愛情を独り占めするなんて、なんという貪欲で強欲な梅干しなんだ! 魂とらない方が良かったんじゃないか、部長さーん。
俺が静かに興奮していると、突然、背後から肩をぐぐっと力強く掴まれる。
「……ほう、一年! あの梅おにぎりに目を付けるとは、なかなかの慧眼ダ。褒めて進ぜよう……と言いたいところだが、あれは此方の獲物。先輩の獲物に手を出すのなら、相当の覚悟が必要ヨ。お前、血がみたいのカ?」
「あ……いえ、お、私は見ているだけですからーーっ!」
後ろに立っている先輩、こわっ! 滅茶苦茶こえぇーーっ!!
絶対に副職業が殺し屋でしょう、この先輩!
っていうか、何か、さっきから背中に当たってるし。
お約束ごとの大きくて柔らかい女性の胸……ではなく小さくて固いもの――多分、これカメラだ。カメラは繊細な機械なんだから、威圧に使わないでくださいよ。あと、ゴリゴリと痛いんですが、それ。
とにかく、おにぎり牽制やめてくれ。
「あっ、来てたんだ、見て見て~♡ 上手く出来たの、写真撮って撮って~♡」
「はい、マイ・エンジェル、すぐにでも……一年、料理部の写真係兼副部長ダ。あたしの名前は覚えなくていいが、入部するならよろしく頼むゾ」
まじかよ、このぎらつく鷹の目の持ち主が副部長なのか!? 包丁よりも日本刀を握ってそうですけど!
しかも、写真係なのかよ!? 首にぶら下げているカメラよりもライフルを持ち歩いてそうですけど!
うーん、部長さん関係で悪いことをしたら、雷鳴の如く瞬時に仕留められそうだなぁ、俺。
くわばら、くわばら。




