みなとちゃんの尾行4
「なっ!!」
「……くっ……不意討ちとは……」
男子高校生は片手で頭を掴んで、道路にゴリゴリと擦り付ける。男子高校生の加害行為のせいで、結城さんの鞄は肩からずり落ちて足元に落ちる。
男が手を放したため、結城さんも道路に落ちる――嗚呼、俯せの状態で倒れてしまった。
「よう、あんただろう? うちの子分を随分と可愛がってくれたなぁ」
彼は結城さんを拘束しながら、機械が喋っているような感情のない冷たい声で話す。
こ、恐い。前に透輝君を襲っていた他校の生徒たちよりも、ずっと、ずっと……
「そっちの男はお仲間か? 不運だな」
「!!」
結城さんの耳元で喋りながら、ゆっくりと顔を上げる。
男子高校生は結城さんと同じ髪色だが、稲妻のように走る紫色のメッシュが一線入った印象的な髪をしていた。
そして丈の短い学ランを着ていて、腰にジャラジャラと手錠を着けている。この学生服はあの不良三人組と同じ黒色の制服だ。
もしかして、彼は不良生徒たちの親玉かしら。
「なんで孫の手を持っているんだ。おれの背中でも掻いてくれるってのか? 変な奴」
喋っている内容は軽いのに、抑揚がない。淡々と話すテレビのアナウンサーの方がよっぽど気持ちがこもっている。
私をじっと観察する冷徹な表情と感情が抜け落ちた声のせいで、手がカタカタと震えてきた。
「…………不覚です。まさか、この私がアスファルトの上で這いつくばるなんて……」
結城さんは襲ってきた男子高校生が私に気を取られている隙に、手を使って起き上がろうとしていた。
結城さんも頑張っている。今は親玉の分析は後にしないと。
私には彼と戦う力がない。ならばせめて隙を作って彼女の援護をしましょう。それが最適な判断なはず。
「へぇ、人間にしては力があるなぁ――やるじゃん、お前」
そう言いながら男子高校生は、片手で結城さんの両手を纏めて背中に跨がる。
さらに結城さんの背中に乗った後は、何故か空いた手で頭をよしよしと撫でるというあり得ない行為をする。
くっ、まったく隙が見付からない。こんなに挑発的で余裕な態度で侮られているなら、見付かってもいいのに。
悔しい。何も出来なくて、役に立てなくて悔しい。
「貴方こそ(人間にしては)とても強いですね」
「まあな、普通の人間とは生まれも出来も違うし。なんつーか最強……じゃなかった最強(笑)ってヤツ?」
「自信家ですね。ならば、私にハンデを与えてもいいのでは?」
「ほぉ、どんなハンデが欲しいんだ?」
結城さんは首を動かして、間近で視線を交わしながら交渉をする。
「そうですね、貴方と一対一で戦えるというハンデが欲しいです。正直な話、彼処にいる彼が気になって、貴方に集中が出来なくて困っているのですよ」




