みなと君は閉じ込められました
「……いい気味。ふんっ、古賀様にまで、ちょっかいを出すからこうなるのよ!」
「そこって自殺した女の子のコワーイ幽霊が出るらしいんだって! 気を付けた方がいいよ、相風さん♪」
「うふふ、私たちが覚えていたら出してあげますわ。これから部活動見学に行くので、記憶に残ってたらの話ですけど!」
彼女たちは俺に向かって大声で捲し立てると、満足して去っていった。
モブ三人娘に誘われてホイホイと付いて行ったら、これだよ。失態だ、ナンテコッタイ、体育倉庫っぽい場所に閉じ込められました。
騙された、とても悲しいです。この哀れな気持ちをポエムにして発表したいぜ…………発表しないけど。
鍵をかける音がしなかったので、つっかえ棒みたいなもので扉を塞いでいるのだろうなぁ。引っ張っているのに全然開かないし。
さてさて、この後どうしようか。
助けを呼ぶとしたら、今んとこ純ちゃん一択なんだよな。蛍都さんは用事があるらしく、学校が終わって速攻で帰ったし。連絡先はその二人ぐらいしか分かんないしなー
そうだ! 良い機会だし、今度、竜頭さんの連絡先を教えてもらおうっと。
私服先輩に関わってしまった為に発生した不幸エピソードを知って、責任感ある竜頭さんは心配してきっと教えてくれる……はず、だよね? 拒否られたらポジティブな俺でも凹む~
とりあえず、純ちゃんにメールで「ヘルプーミー」と伝えるか。最低でも部活見学が終わったら、来てくれるだろう。
気付いてくれるまで暇になる。
そうだな、退屈しのぎに室内を物色するか。ついでに噂のゴーストちゃんも捜そう。
パッと見回してみたけど、授業や部活で使うものは無さそうだ。
玉入れや大玉、綱引きに使うと思われる長い綱、それと棒倒しの棒が置いてある。まぁこれらは、体育祭の競技に使うポピュラーな用具だ。
問題はワッショイ・ワッショイするお神輿と大河でお姫様を運んでいる輿があったり、何故かスーパーで見掛けるカートや買い物かごが仕舞ってあることだ。
これらは一体どんな競技に使うのだろうか。応援合戦で団長クラスを高い高いでもするのか? 借り物競走ならぬ買い物競走?
ユニーク過ぎて謎だ。みなとちゃんの学校、相当はっちゃけてんな。
ふむふむ、ここは体育祭の競技に使用するものを仕舞う倉庫なのは分かった。若干、変な用具があるから、少しだけ自信がないけど。
但し! さっき挙げた用具は、まだ使い道は想像することが出来るからまだ分かる。
しかし、このちっちゃいお子様が乗るキャラクター物の押し車や遊園地にありそうなゴーカートの車は何なんだ、おい!
繰り返しになるけど、マジで何の競技に使うんだよ。ドライブテクでも競うのか? 謎だ、謎過ぎる、ミステリ~
はっ!? 突っ込み所が満載の用具に気をとられてしまった。俺はここで何をさがしていたのだ……?
What? Where? When? Who? Why?
教えてくれ、英語の授業で覚えたクエスチョン五人衆。
あれ、何だか一人足りないような気がするが、気のせいか……? 単語が出てこないから大して重要じゃないはず。スルーして忘れてしまおう、そうしよう。
で、俺は何故この場所に来たのか? それは可愛いチャーミーゴーストを見付けに来たのだ!
そして、俺が閉じ込められてしまったのは、その女幽霊ちゃんに出会うための重要なフラグだろう。フフフ、全ては予定調和ですね。
よし捜そう、今捜そう、とにかく捜そう。捜そう三☆連☆星☆ 徹底的に現場を漁るのだーーっ!!
草の根分けても、倉庫の隅から隅まで、現場を洗い出すのだーーっ!!
……何かポリスメンが言いそうな言葉が集まったなぁ。
結果、何も見付かりませんでした、チャンチャン♪
何なんですかね、この残念な収穫は。俺はメチャクチャ頑張って捜索活動したんですけど、手掛かりゼロ、成果ゼロですよ。
……もしかして、ここではなく違う倉庫なのではないか?
おぉーー! その可能性ありです。そうだよな、お化けちゃんもここよりも人気のあるスポットの方が良いか。
うむうむ、今時の幽霊は不可視よりも可視だよ。まずは見付けられてから勝負が始まるもんな~
俺が心の中で納得していると、外から物音が聞こえてくる。
ドダン、バタン、ドタン、バタン
扉を無理矢理開けようとしたが、残念ながら失敗してしまった音が聞こえる。つっかえ棒的なものが塞いでいるから仕方ないね。
カーン、カーン、カーン
今度は金属の音が反響する。邪魔をしていたつっかえ棒は金属性だったか。
ガラガラガラッ
おっ、開いた、開いた。やれやれ、これで倉庫から出られる。
倉庫の戸を開けてくれたのは、メールで救助要請を送った相手……純一君かな。ヘーイ、純ちゃん、サンクスです。
「…………湊いる?」
この声は純ちゃんですね。
はい、みなと君は、ここにいまーす。
今すぐお返事しますよー
「純ちゃん、ここにいるよ。助けに来てくれて、ありがとう」
オホホホオーイ、何だか悪者に捕らわれたヒロインがヒーローに言う台詞みたいになったなぁ。
しかし、悲しいかな、ザ・ヒロイン=オレだ。中身が残念すぎて笑える。
「湊! 湊! はぁ、良かった、凄く心配したよ……」
純ちゃんは走りながらそう言って、俺を抱き締めた。
ホギャアアアアアアアアアア……
「湊、怖かったんだね。ここって人気がないし、薄暗いから。もう大丈夫だよ!」
……アアアアアアアアアアアア、いい加減、純一、離れろ。
「俺がいるからね、大丈夫だよ、湊。こんなに震えて怯えているなんて、ごめん、俺がメールに気付かないばかりに……」
抱き締めながら背中をポンポンしなくていいから。
俺がブルブルと震えているのは、君が抱き締めているせいだからね? 速やかに俺から離れたまえ!
だいたい、なんで、何も考えず異性に勢いよく抱きつけるのだ? 抱き付いても嫌がられないかなぁとか思わないのか! 俺は女の子の手を握る時だって緊張するのだが。
くそーっ、イケメンだから許されるのか――いつでも許されていたのか。くぅぅーっ、その思考が羨ましい。えぇ、貴方の常に許されていた思考が心底羨ましいです、今畜生。
グギギギ、今の俺はみなとちゃんだ。みなとちゃんなのだ。鎮まるまるまるなのだ、俺の心、俺の魂よ。
落ち着け着け着け、俺の精神よ――――着けを連呼したらお尻を心の中で呟く変人になってしまったじゃないか、アウチ!!
何だかお尻のおかげで冷静になったな。
うん、興奮していた気持ちが冷めた。
お尻は偉大だ。何故なら、連呼するだけで心がこんなに落ち着く。
「…………純ちゃん、ありがとう。その、もう心配いらないよ」
「湊、本当に? 無理してないのか?」
「うん、本当に大丈夫だよ」
安心したのか、やっと離れてくれた。
もうここに用はないし、出るか。
……嫉妬心で心が荒れていた時には思わなかったけど、悪い奴ではないんだよな。寧ろ、善い奴なんだよね、普通に考えたら。
恋人は無理だけど、友達になりたいタイプの人間だ。
「倉庫の鍵を借りてきたから、職員室に返しに戻らないといけないんだ。だから、湊、昇降口で待ってて」
純ちゃんはガチャリと倉庫の鍵を閉める。
「分かった。鞄預かるね」
「うん、鞄をよろしく。じゃあ、ダッシュで行ってくる」
俺に鞄を手渡すと、純ちゃんは駆け足で校舎に向かった。
……さすが運動部、足が速いな。
離れて行く純ちゃんを見てないで、俺も早足で昇降口に向かわないと。
その前に幽霊が居ない残念倉庫に別れを告げよう。
「謎の用具が盛り沢山な残念体育祭倉庫よ、また扉を開ける日までさよならだ――――バイバイシチューアゲインハンバーグ、アデューソース&あばよっ!」
今度来る時は幽霊がいなくてもいいので、素敵なイベントを用意しておいてくれよー
「……俺としたことが大変申し訳ない。HowのHな君を忘れてしまうなんて、とんでもない失態だ! H君、君を省いてしまいロンリーにしてしまって悪かったな。今ここで君の言語で俺は謝罪をしよう、アイムソーリー」
「ミナミナは何で英語の教科書に謝っているのだ……? 変なヤツ」




