彼女は追い掛ける
お弁当箱を湊に預けて、わたしは急いで純の元へ向かう。
湊はまだ純を意識していない。
それならば、恋心が灯る前に、少しでもわたしを見ていて欲しいし、短い間でもいいから二人っきりになりたい。
いいえ、少しでも、なんて嘘。わたしを何度でも受け入れて欲しい。
短い間なんて馬鹿みたい。わたしは、ずっと貴方のそばにいたいんだから。
「わたしは生まれた時から、彼に恋をしている欠陥品ね」
溜め息のように、意図せず言葉が零れる。
――いた。純を見付けた。
お弁当の入ったレジ袋を右手にぶら下げながら、すたすたと自販機の方に足を向けている。
「純~!」
「……ん、あれ、蛍?」
純に見付かるように、勢いよく手を振る。
純は、わたしに視線を向けた後、きょろきょろと辺りを見回す。
誰を捜しているのか、想像はつくけど、ちょっとがっかりだわ。
「……湊なら外のベンチで待っているわよ。早く済ませましょう」
「わざわざ、俺を迎えに来たんだ? そんなに待たせたつもりはなかったのだけど……」
純は足を止めず、そのまま自販機の列に並ぶ。前に並んでいる人は数人。すぐに順番が回って来る。
「ち、違うわよ! 少し用事があったから、その帰りに貴方を拾いに来ただけ。その、ついでよ、ついで……」
小さな嘘をつく。
純の前だと、わたしは嘘つきになってしまう。
「そうか、悪いな。ちゃっちゃっと決めて、さっさと回収するから、そこで待っててくれ」
わたしは頷いて、壁に寄り掛かる。
純がわたしを気にかけてくれている。
いいえ、わたしだけを気にかけている、この瞬間。
わたしは堪らなく幸せだ。




