みなとちゃんと幼馴染
愛巣高校に登校して二日目、みなと君の通学路をだいたい把握した。なので、今日からは探索しながら帰宅しよう。もしかしたら、近道が見付かるかもしれないし。
タッタッタッタッタッ
背後から軽やかな走りが聞こえる。
……随分と急いでいるなぁ、誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。
「……はぁはぁはぁ、やっと追い付いた。港、おはよう」
「えっ、あっ、オハヨウ?」
考え事をしながら歩いていたので、うっかり挙動不審な挨拶をしてしまった。ちょっとみなと君らしくなかったかな、失敗、失敗。
それにしても、みなと君を名前呼びするなんて、かなり彼と親しい人物なのだろう。誰かしら?
――後ろを振り返ると、紺色のセーラー服を着た三つ編みの女の子が、荒い息をして立っていた。
わぁー、愛巣高校の女子制服だ! ここの高校のセーラー服ってスタンダードな色で可愛いよね。人によっては色合いが地味だと思われがちだけど、私は落ち着いた色合いだから好き。
……ついセーラー服に気を取られてしまったけど、彼女はみなと君の幼馴染である沢村土筆さんだ。瑞々しい葉っぱに似た髪色に、オレンジの果実のような瞳の色は、プロフィール写真で見覚えがある。
「はぁーー、中学は遅刻ぎりぎりで登校してたから、高校も同じかと思って失敗した。まさか、港がこんなに余裕をもって出るなんてね」
「あはは、ま、まぁ心機一転するのもいいかなーって」
実はみなと君の通学路が慣れてないから、迷わないように早めに登校していただけなんだよね。
だけど、みなと君はもっと遅く家を出てるみたいだし、私も合わせた方がいいのかしら。
「ふーん、三日坊主にならないようにね。それはそうと、港、学校まで一緒に行かない?」
「うん、いいよ」
ぼっち登校から二人組登校へ格上げです。いつも蛍都と一緒に登下校してたから、本当に嬉しい。やっぱり一人だとちょっと心細いよね。みなと君は平気なのかな。
「つくちゃんおはよう、ついでに火置もおはよー」
下駄箱にて上履きに履き替えていると、明るく緩い喋り方をする女の子に話しかけられた。
「小桃か、おはよう、今日は早いのね」
「まあね、いつも一緒に登校する誰かさんに断られちゃったからねー」
「……朝から嫌味?」
「まっさかー、言ってみただけだよ。あたし、全然気にしてないし」
小桃さんって、沢村さんのお友達の姫森小桃さんかな? なんというか橙色の髪と瞳色も相まって、明るく気が強そうな雰囲気の女の子だ。大人しそうな沢村さんと並ぶと対照的だなぁ。
あ、挨拶しないと、感じ悪く思われちゃうね。
「姫森さん、おはよう」
「はぁー? さん付けって、火置もしかして高校デビューのつもり? やめてよね、いつも通り呼び捨てでいいよー」
あちゃー、みなと君は呼び捨てだったんだ。何とかみなと君らしいことを言って挽回をしないと!
「あはは、冗談だよ、冗談。改めて、おはよう姫森」
「んんー? 何か怪しい……でも、火置だから、どうでもいいかー」
うーん、上手く誤魔化せたのはいいんだけど、反応が困る。同じ中学の同級生だから、みなと君らしい行動を心がける必要があって大変だなぁ。
みなと君もやはり私と同じ苦労をしているのかな。後で確認してみよう。
えっと、みなと君だと……純ちゃんと蛍都と壬生君かな。三人か、怪しまれないといいね、みなと君。




