#9 後始末
翌朝、携帯を起動させたらすごい数の着信が…(一分に20回って…ストーカー?)チョット怖くなって背中がぞわっとしました。腕に出た鳥肌を撫でつつ気のせいだよね。と自分に言い聞かせながら朝食を食べに食堂に移動。朝食がバイキングなので、好きなおかずを取って隅の席に座る。
それほど早い時間でもなく、込み合っていない状態なのにも関わらず、目の前に人が立っている。それに気づいたのは、おかずを半分食べ終わりご飯のお代わりをもらいに行こうと顔を上げた時だった。立って居たのはスーツ姿の男性。別に珍しくもない服装だが、着ている人が問題だ。光の加減では金髪に見えそうな茶髪。目鼻立ちがすっきりしているイケメンさん。(但し、奥さんを溺愛しすぎて逆に引かれているふしがあるのがたまに傷。)周りのオッサン達がチラチラと見ているくらい美形なこの人は、実力主義の本家で唯一無能と私を罵らず、存在を認めてくれた人だ。昔は、お兄ちゃん。お兄ちゃんと金魚のフン見たいに付いて回っていたっけ。空のお茶碗を持ちながら思い出し小さく笑う。
「変わってないみたいで、変わったのかな?うちのちびっこさんは」と言いつつ対面の椅子に座るので、お代わりとお茶を持ってくる為に席をたつ。「コーヒーね」とリクエストもあり、自分のほうじ茶・お代わりとコーヒーを持って席に戻る「ありがと」と笑顔を貰いご飯を再開するとコーヒーを一口飲んでから本題に移ってくれる。
「君が落としてくれたストロング君だっけ?彼は、優秀だね。君の躾た犬達《部下》に命令を出してきちんと機能させている。それに、こちらの理に興味があるのか、昔の君見たいに熟読しているよ。訓練しながら覚えた技を身に付けて居るようだし。本当に優秀過ぎて、もて余しぎみなんだよね」モグモグと残りのおかずを平らげながらで?と先を促すと、困った顔をしながら「でね。一度、何を思っているのか探るか〜って軽くお酒の席を作ったんだよ。ほら、女にも後腐れない人しか手を出さないし、お金なんて余り要らないみたいだからさ」と言って困った顔を作ってますが、口の先震えていますよ?何をこらえてるんだか。ごちそうさまをして、ほうじ茶を楽しみながら痛み止めを飲んでから目線を向けると「面白いことを話してくれたんだよ。彼は」耐えきれずくくっと笑いだしながら「自分の飼い猫の育った環境を見ている。って面白い猫で、どんなに可愛がっても、家族の元に帰りたいと泣く。それが、どんなものか知りたかった。っていとおしい物を語るように言うんだよ」もーダメだと。いいながら思い出し爆笑をしているこの人は、これさえ無ければ…と良く奥さん
に言われていたな。と思い出し、後から会いに行こうと画策する。どうせ、前と変わらずゆるゆるな警備なんだろうし。半日くらい遊びに行っても良いよねと考えていると復活したらしく「で、その猫って?って聞いたらお前たちも知っているだろ。とそっけないから、君の幼い頃の写真とか出して見せたら凄い食いつきようだったよ。欲しそうだったからプレゼントしたよ。あと、君が好きだった場所とか案内したら期限が良くなって。ああ。この事を。とか言いながら術を発動して綺麗な景色を出したり、浄化したりしてたね」と取り出してタブレットで動画を見せてくれた。
幼い頃から好きな庭を見ながら淡く光る蝶々を出しているストロングさん。その風景は、とても神秘的だった。しかも、術自体は浄化の作用が有って昔から縛り付けられていた人たちが上に行けたようだった。以前からちょいちょい手入れをしていたからなのか、浄化後も本家を守る術は壊れていないようだし、手入れの際に組み上げていた新しい機能が動いているのか動画を見る限りではランクアップしているようである。
「これってさ。君がちょいちょい手入れをしていた術だよね?強化と浄化によるランクアップ。あと、本家を守る機能の正常化」はぁ。とため息をつきながらタブレットを閉じカバンにしまう。
「無能。無能と言われながら本家に来ていたのも、浄化の舞を毎年やっていたのも、ダメだと言われていた物を引き取り教育していたのも全部」真剣な眼差しで見てくるから答えるため、お茶を置く
「全部、御祖母さんのお願いを叶えるためですよ?私のことを見捨てず、基本を教えてくれたり世の中を生きる術を教えてくれた。大好きな先生の為ですよ。喜んでくれてますか?」恐る恐る聞いてみると、本当にっと呟きながら「喜んでいたよ。珍しく奥から出てきたと思ったら庭を見てにこやかに笑っていたよ。伝言だ。「私の可愛い生徒《孫》は、やっぱり優秀だわ。今度、お茶を飲みに来なさい」だと」と頭をわしわしと撫でてくれる。良かった。喜んでくれたみたいだ。いいことも聞いたしご飯も食べた。さて、チェックして観光して帰りますか。といい気分で席を立つとお兄ちゃんが話が終わっていない。と言い出した。あれ?なんか有ったっけ?と首を傾げていると大有りだ。と言いながら後からちゃんと説明するから荷物を持ってきなさい。と送り出してくれた。なんのようかしら? チェックを終えて兄ちゃんに言われた通りタクシーに。タクシーで告げた行き先は本家の住所。
「なんで?」不思議に思いながら聞くと。お前はな〜。と脱力しながら説明してくれる「本来、無能と言われていたお前が、本家の守りを強化したのと優秀な人材を地味に育成していた事。そして、本家の“優秀”と言われる者より優れた術を使うことがわかったからだよ。本家にある理をきちんと理解して改造・機能させたのは、君のたゆまぬ努力と家族の愛からだろ?」
「良く理解してくれてますね。お姉ちゃんが輿入れする時に完成させたんですよ。姪っ子・甥っ子達が安心して遊べる場所も作りたかったし。孫を見に両親が行きそうだったんで、危険は排除しないとダメじゃないですか」あったり前でしょ。と言うとそうだよな。お前はそう言う人間だよな。と納得している。「で、それについて、奥の院にいるやつらに説明・利用方法を教えて欲しい。御祖母さんやお前の姉はきちんと理解して使えているから問題ないし、お前を理解している使用人や部下たちも一応使えている」
「なら問題ないはずですよね?変更をしたところは基本。使用人と御祖母さん・姉ちゃんが使うであろう所だけだし。義兄だって使える用に簡略化している部分もあるから」モーマンタイ。モーマンタイ。笑って言うと。
「何がモーマンタイ。だ。本家の重鎮と小うるさい分家どもが、集まって会議を開いている。お前は召喚されたんだよ」面倒だよな〜。私を呼ぶために色々と頑張ったが無理だから兄ちゃんに頼ったんだ〜。お疲れ様。
「分家は潰せば良いし、重鎮は理を持って説明すれば良い。面倒な事を言う分家は言えないように躾ればいい。なにか問題でも?目に余るようなら当主か次期が出てくるだろうし。私の厄介さを理解している執事長が上手く取りなしてくれますよ」タクシーが着いたようなので、さて。行きますか。と本家の奥の間へ 襖を開けて二間続きにした奥の間には、多くの分家が下座に重鎮が上座に座っている。無論一番の上座は空けてあり、いつでも当主が座れるようになっている。分家と重鎮の間には少し距離が空いており、そこに座らせてもらう。前後左右人に囲まれた公開裁判みたいだな。と薄笑いを浮かべていると重鎮達が動き出した。
「久しぶりだな“無能”」口を開いたのは、重鎮にも成れない本家筋の分家。声の方を向くのも面倒なので、重鎮に向かい挨拶をすることにした
「お久しぶりでございます。重鎮である皆様はお元気そうですね。私、分家筋の分家“無能”でごさいます」
「久しぶりだな“無能”何年ぶりか?また、奉納の舞をやってもらいたいものだ」と言われている重鎮方は私の事を“無能”と言いつつ認めてくれた人達だ。実力主義だからこその清々しさだ。
「奉納の舞ですか。私、乙女ではないので」暗に年を忘れていませんか?と聞くと
「最近“乙女”がおらんでの。年増でも、乙女ならば。とな」などと言ってくる。
「そうなんですか?緩くなったんですね。本家も」ため息をつくと「ネズミが入っているようでな。蛇か猫でも飼おうか。と話していたんじゃが」どうかな?と聞いてくる。成る程。
「蛇の方に当たってください。猫は手負いですから」断りを入れると困ったな。と話し合っている。「猫は家を過ごしやすいように変えていたようじゃから居座るのか。と話していたんじゃよ。ご当主様にも許可を頂いたしの。蛇は猫と一緒なら飼われても良い。と言っていたので、飼育小屋も用意していたんじゃがの」いや。外堀埋めないで。つか、頭の悪い人は疑問だらけですよこの会話。
「猫の気持は無視なんですか?」
「無視はしとらんよ。現に読んで聞いておるじゃろ?しかしながら、猫は家を気に入って居るからな。邪魔をせねば、居着いてくれそうじゃと考えておるんじゃ」と重鎮達がうなずき合っている。いや、大好きですよ。本家の奥は。好きにさせてくれるなら警護位はしますし、摘発したら面倒事は丸投げで良いなら。
「猫は鼠を仕留めればいい。後の問題は飼い主がやるのでの。たまににゃ〜と鳴きなから顔を見せれば御の字じゃな」成る程。定期的に会議に出席して居ればいいんだ。摘発したら後の処分は重鎮がしてくれると。
「つかぬことお聞きしますが、犬は?」使える分家もいるだろ?質問すると。フム。とうなずき合いながら「犬はな〜。今は、貸し出しとるんじゃ。何日かすれば、帰ってくるがな」いや。分家を貸出しって…
新聞に石油系の一族と提携したとかなんとか書いてあったな。それ関係か。
「犬は表に。猫・蛇は中に配置したら、鼠も入らないだろう?」障子を開けて入ってくるのは、当主様。空いている上座に座り良い案だろ?と聞いてくる。
「良い案ですが…」言いよどむと「ちゃんとバカな犬達も躾直すさ。子犬をちゃんと躾れば、優秀な番犬になるだろうし。そのための人材も居るかならな。犬が蝶々になる場合もあるだろうしな」とにこやかに笑っている。本家がしっかり躾をするなら分家も大人しくなるだろう。
「わかりました。但し。猫は、躾には関知しません。と言うか、出来ませんので、ご理解を」頭を下げると。わかっている。と言いながら笑みを深める。足元に陣が揺らめき、体に刻み込まれる“猫”であると。抗うつもりもないので、身を任せると四肢に紋様が出てくる。
「それが、猫である印だ。その身が朽ちるまで、我々が世話をする代わりに」
「ネズミを狩れば宜しいのですね」良い子だと。喜びながら手を叩き執事を呼ぶ。
「お呼びで」とビシッとした燕尾服を身に纏い右腕に私と同じような紋様を刻み付けているであろう執事長が出てきた。
「猫を部屋につれていけ。獣医にも見せろ」と指示を出す。「わかりました」おいで。と私の前に来ると手を出してくれるが、さっきの術式で体力無いっす「猫は体力が無いな。手負いの用だな」両脇に腕を入れて立ち上がらせるとそのまま抱っこで運ばれる。つれていかれた部屋には既に医者が待機していて、全身検査。術式を使って内部まで検査されたら「内臓がなおるまで、治療食。ある程度、治ったら体力回復の為に運動は許可するが、今は激しい運動は禁止」と言われてしまった。狩り禁止なら防衛策をと術式を作ろうとしたら「禁止!」とお叱りを受ける。
「術式を発動させるのは完治後だ。何を考えている。治りきるまで、その手の活動は、奥の院と連携しなさい」とドクターストップをかけられた。残念。奥の院に居る、力をもて余している人にお願いして網でも張るか。
月日は流れ、数年後。日向ぼっこをしながら身に纏っている術式を発動している人がいる。その人の隣には、楽しげに術式を展開し侵入者を捕獲・無効化している外人。
国内有数とは行かないものの、ある程度の勢力をもつ一族の奥の院(私塾)では、よく見られる光景。女性の事を“猫”と呼び敷地の守りを任せている。外人を“蛇”と言い外部の侵入者を撃退させているこの一族の警護力は国内トップと言って良いだろう。




