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特殊スキル持ちサラリーマンの日常 7

今回は、日常は日常でも休暇中のお話。


半年間、孤島で祟り神軍団と闘ってきて、休日消化もできていなかったため、労組から休暇取得命令がでてしまい、とりあえず2週間の休みを貰った。

会社へもたらした利益を考えると、もっと休みを貰えるはずなんだが、さすがに一ヶ月丸々の休暇は現実的じゃない。


「では、明日から2週間、お休みをいただきます」


俺は、部長へ報告。

部長からは、完全にリフレッシュしてこい!なんなら、海外でも良いんだからな。

と言われた(ちなみに、2000万のインセンティブは、まだ支給されていない。しかし、半年分の給与だけで200万近い貯金ができているので(出張扱いになっていたため、出張費で全て賄うことが可能だった。宿も軍衛隊の関係で格安だったため、出張費すら黒字になっていたのは経理以外の秘密)何処へ行こうが、かなりの贅沢ができる。

しかし、俺は質素な生活を信条としているため、ネットで探した山間の秘湯のような湯治場を選んだ。


で、今現在、俺は北の某湯治場にある旅館へ来ている。

これから2週間、湯に浸かって季節の物を食べ、あっちこっちを散策しつつ、ゆっくり、身体と精神の疲れを癒やす予定。


となるはずだったんだが……

2日めにして、予想外の椿事にぶち当たる。


早朝から露天風呂に入り、麦飯と山芋トロロ中心の朝食。

それが終わったら、秋の紅葉を見ながら、近場を散策。

そして、少し足を伸ばして近くの山で山菜採りでも、と思ったのが運の尽き。


俺の目の前には、全長2m近い、黒々とした熊の巨体。


しかし、俺は少し焦ってしまったが、その場に動かず、熊の接近を待つ(内心は焦りまくっているが。なにしろ腕のひとふりで俺の頭が簡単に胴体とサヨナラしかねない)

予想通り、動かない俺を警戒して熊は飛びかかっては来ず、ゆっくりと近づいてきた。

間隔が1mほどになった時、熊が仁王立ちして、俺に襲いかかろうと……するその時。


俺の口から、歌声が発せられる。

教育チャンネルとかの映像メディアで良くやっている、動物物の童謡メドレーを10分弱。


熊の目から戦闘意欲が消え、今まで感じたことなどないだろう恐怖が浮かび上がる。

獲物である俺を見つめるが、食欲よりも狩猟欲よりも恐怖が勝った。

仁王立ちから4つ足になり、くるりと身を翻して、もう懲りたと言いたげな情けない鳴き声を上げつつ、脱兎のごとく逃げていく。

こいつは二度と人里ヘ出てくることはあるまいと確信する逃げ足だった。


俺は、その場で、震える両足を落ち着かせた後、ゆっくりと旅館へ戻る。

旅館は大騒ぎだった。

聞いてみれば、熊を見たという客からの通報で付近の山を捜索する話も出ていたとのこと。

俺は正直に、熊に出会ったが、その場で動かなかったら熊の方から逃げていったと話す。


「お客さん、何か武道でもやってるのかね?熊が逃げる人間なんて初めて聞いたわ」


と言われたが真実は話せないからなぁ……


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