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第二十八話 「ハミルトン邸のディナー」の話

拓海君みられてるねぇw

ハミルトン邸・夕食シーン


夕食の席は、静かだった。


長いテーブル。

磨き上げられた銀器。

無駄のない配置。


そのすべてが、音を立てることを許さないような空気を作っている。


「……こっちでいいのか?」


拓海は、小さく呟いた。

案内された席は、やや端。

広いテーブルの中では、客としては自然な位置だ。


そのとき。


「そこではない」


低い声。

エドワードだった。

使用人が一瞬だけ動きを止める。


「こちらです、サエキ様」


案内が変わる。

エドワードの隣。


「……おい」


拓海が小声で言う。


「なんだよこれ」


「効率が悪い」


「は?」


「会話が届かない距離だ」


真顔。


「……いや、別にそこまで話さねぇだろ」


「私は話す」


即答。


「座れ」


軽く椅子が引かれる。


(……なんだこれ)


妙な違和感。

だが、言われるまま座る。


「……サエキ様、お飲み物は」


「水でいいです」


「いや」


エドワードが遮る。


「最初は軽めのものを」


「は?」


「急に重い酒は合わない」


「誰が飲むって言った」


「飲むだろう」


「飲まねぇよ」


「……そうか」


ほんの一瞬、間。


「ならば水でいい」


引かないのかよ。

食事が始まる。


ナイフとフォークの音だけが、静かに響く。


「……タクミ」


「ん?」


「それは左だ」


「え?」


「持ち方」


小さく指摘される。


「ああ、悪い」


無意識に直す。


「……よく覚えているな」


「は?」


「さっき、部屋で見た」


「どこ見てんだよ」


「必要なところだ」


さらっと言う。


「……お前な」


少し呆れる。

だが、どこかおかしい。


(……なんか)


さっきまでと、違う。

距離は同じなのに、妙に、近い。

向かいの席から、小さな声。


「……サエキ様」


別の使用人だ。


「こちらもお試しください」


料理が差し出される。


「ありがとうございます」


手を伸ばそうとした瞬間。


「……待て」


エドワードの声。


「それは後だ」


「なんでだよ」


「順番がある」


「知らねぇよそんなの」


「今、覚えろ」


「急だな!?」


周囲がわずかにざわつく。

だが、誰も口を挟まない。

ただ、見ている。


「……タクミ」


「んだよ」


「問題ない」


一拍。


「ゆっくりでいい」


その声は、ほんの少しだけ柔らかかった。


「……なんだそれ」


「事実だ」


「便利な言葉だなそれ」


思わず笑う。

ナイフを置く。


「……にしても」


周りを見る。


「落ち着かねぇな、ここ」


「慣れろ」


「無茶言うな」


「合理的だ」


「そればっかだな」


エドワードは、わずかに口元を緩めた。


そのとき。向かいの席から、視線。

ハミルトン伯爵だ。


何も言わない。

ただ、一度だけ。


二人を見る。

そして、視線を戻す。


(……あー)


分かる。

見られてる。

でも。


さっきと違う。


「……なぁ」


小さく言う。


「俺、今大丈夫か?」


「問題ない」


即答。


「だから雑なんだよそれ」


「十分だ」


短い言葉。

だが、妙に重い。


拓海は少しだけ肩の力を抜いた。

食事は続く。

静かなまま。


しかし。

さっきより、少しだけ呼吸がしやすかった

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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