第二冊目:土砂降り【宇坂編1】
第二冊目:土砂降り ‹宇坂編›
「はぁっはあぁっ……つ…っ!」
やばいやばいやばい!!あんな、足早すぎる!
あたしの脚じゃあ、あと少しで追いつかれる。
ぁあ、もうやめて!こないで……。
ジメッとしたような生暖かな空気を切りながら、汗だくだからかシャツが張り付くことを鬱陶しく感じる。
道の半分を占領する自転車に膝が当たって、後ろで道をふさぐ。
「よしっよしっ……自転車っ」
意味もない言葉を発しながら、自分を奮い立たせるも、背後で聞こえる自転車を飛ばす音に心拍数は上がる。
「宇坂、さぁ~ん。……いい加減疲れてきちゃったよ~。ほら~」
後ろからのろりとした声が聞こえる。
「うぅ……んっ……はぁっ……」
呼吸がもう辛い!だめだ!
どこか……どこかの建物っ!
曲がり角を曲がり、とりあえず身を隠す場所を探していくが、なかなか見つからない。
あった!!
「う~さ~か~さん~」
怖い怖い怖い、こっわぁい……。
もう怖すぎてテンションおかしい!
緊張しすぎて笑っちゃう。あぁ、だめだ……。
カフェにありそうな看板…だろうか。固いものを蹴っ飛ばした。
不意に足を止めてみてしまった。
『この先、ヒトミ図書館』
図書館……。
「宇坂、やっと……」
くっそ!!もうやめて!
泣き出しそうな感覚を収めて、再び走る。
ほんの一瞬だったのに、『ヒトミ図書館』はものすごく印象に残った。
「と、しょっか、ん……」
図書館しか、もう頭になかった。
「宇坂!なんで逃げるんだ!!いい加減にしろ!!」
もう追ってくる奴は、どんな姿だったかも覚えていない。
なんで逃げるかって?追いかけてくるからだよ!!あたしを追いかけるから!
いつまで追いかけてくる気なんだよ!
お前なんか知らない!知ってるはずなんかない!
図書館
あぁ!ここだ!
曲がり角を曲がると、突き当りに図書館を見つけた。
じめじめと気持ちの悪い空気は、やがて降ってきた雨によってさらに増した。
勢いの強い雨粒は、はだけた服をずっしりと重くして、肌に当たれば体温と体力をさらに奪っていった。
もうあそこに入るしか……戻る道もない、一直線に図書館へ向かう道しか…。
地面はアスファルトから、タイル張りへと変化し滑りやすくなる。
あぁ、転びそう。だけど走らなきゃ。
「宇坂………瑠璃。………瑠璃、わかっているんだろう?」
返事なんてできるはずない!できるはずなんか!
わからない、わかりたくなんか………。
ズザザザっ………!
靴が!足、首……いたっ…!
「宇坂」