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Deviant ー妖魔転生ー  作者: 是色
第六章 侵食
62/100

6-7

 ノエルの案内で到着したのは、職人街の中でも貧民街に近い場所にある食堂だった。店内は薄汚いが不潔と言う訳でもなく、どこと無く人情味を感じさせる雰囲気がある。

 ココでノエル達親子は何かと世話になり、母親の死後はノエルを新しい家族として迎え入れていたらしい。

 そんな子供がゴブリンを連れて帰ってきたのだから、少しばかり騒ぎになったのも仕方がない事だろう。

 しかも事情を説明しようとしたノエルの口を俺が押さえたりなんかしたから尚更だ。

 我ながらあまりいい対処法だったとは思わないが、いきなり「おじさん!わたし、ゴブリンさんのどれいに……」とか言い出したので咄嗟にやってしまった。


 その後の事はあまり思い出したくない。

 とにかく店主とその娘、更に客の大半(全員ノエルのファンらしい)を何とか宥め、事の起こりを順序だてて説明する。

 当然の事だが店主達は納得しなかった。

 しかし一つ一つ問題点を挙げ、その解決法を提示してやれば、最後には店主も折れた。

 何しろ店主達が説得しなければならないのは俺ではなくノエルだ。

 借金なんてどうとでもなると店主が言っても、ノエルは「どうやって?」と純真な目を輝かせて聞き。

 私が何とかすると店主の娘が言えば、ノエルは「でも、おねえちゃんひとりで泣いてた」と悲しげに返す。

 客達も口々に意見を言うが、全てノエルに撃沈され店内は沈鬱な静けさに包まれた。

 そんな中、最後に俺が口を開き「無利子無担保催促無しのある時払いで金を貸してやるから借金の事は気にするな」と言ってやれば、ノエルを含めた全員が不思議な物を見るような目で俺を見た。

 ノエルにしてみればさっきとは話が違うからだし、店主達にしてみれば金を貸すにしても無利子無担保催促無しのある時払いなんて条件では金をただでくれてやるのと変わらないからだ。

 疑問の声を上げようとするのを制して理由を説明して行く内に、店主達の顔は苦い物を噛み締めた様になり、ノエルは更に不思議そうに首を傾ける。

 店主達には俺の金を受け取らないとノエルがまた無茶をやらかすぞと言ってやればよかったんだが、ノエルが奴隷になってまで作った金で救われても店主達は嬉しくないのをノエルに納得させるのが一番骨が折れた。

 ノエルが動いた結果借金の問題は片付いたのに、ソレだけでは納得できないらしい。

 なので医者になった時に借金が残っていたら、ソレをノエルが働いて返すと言う約束で何とか納得させた。

 まぁ、これだけでは店主達の不信感を拭えないので金を貸す理由も話す。善意からではなくノエルに投資しただけだ、と。

 ノエルの才能(・・)に関しては店主達も理解しているらしく、こんな場所(職人街の片隅)で眠らせておくにはもったいないと感じていたようだ。

 だから一人前になったあと俺の下で働く事には難色を示しつつも、俺が金銭的な援助をしようとする事には理解を示した。


 とりあえずはソレで全員の納得が得られたので、店主には借金に当座の資金を上乗せした金額を渡して、スラムに戻る。

 スラムにはレナードと話をするつもりで戻ったんだが、レナードの家に着くとそこには怪我人と病人が人だかりを作っていた。

 俺の噂を聞きつけて集まってきたらしい。

 さすがに追い返すのもなんなので夕方まで治療し、診れなかった者達については明日また来るからその時に見てやると言って、スラムを後にする。


 何とか日の落ちる前にマルグリットの家に帰りつくと、すでにマルグリットは帰宅していた。

 夕食の準備ができていて、今日の出来事を話しながら食事を楽しむ。 

 控えめがちに家の扉がノックされたのは、夜も大分更けてからだった。



 ・



「――って訳で、コイツがバサラだ」


 窓の無い黒塗りの馬車の中からバサラを背負ってマルグリットの家の中でも奥まった一室に運び、マルグリットとフェリシアに紹介する。


「…………」


 紹介してやったのだが、三人とも妙に気まずげで言葉を発しようとしない。

 何と無く、張り詰めた空気を感じる。

 バサラの方はともかく、二人には夕食の時に今夜裏社会の連中から荷物が送られてくる事、ソレがオーガの女であり捕獲された際に四肢を失ってしまった事、そしてオーガにとって勇者と呼ばれるほどの功績をリサが保障した事でオーガが俺に忠誠を誓った事などは話してあるので、マルグリットとフェリシアが固まる理由が分からない。


「どうした?食事の時にも話したとおり、オーガだとは言っても俺に忠誠を誓うらしいんでいきなり暴れだしたりはしねぇぞ?」


「あ、いえ、その……。ねぇ?」


「うん……」


 マルグリットとフェリシアは、はっきりと言葉を作らずに目で会話をする。


「なんだ?なにか問題でもあったのか?」


「あの……、想像していたのとあまりにも違っていたので……」


「……あんたがオーガだって言うからどんなバケモノが来るかと思ってたら、連れて来たのがこんな綺麗な人なんだもん。びっくりしたわよ」


 そう言う事か。

 たしかに前任者の記憶の中でも、森の奥に住むオーガってのは魔獣以上に恐れられていた存在なので、実物を見た事がなければ戦々恐々としていてもおかしくはない。


「あー、なるほどなぁ。

 ――で、オマエの方はナンで固まってるんだ?」


「い、いやぁ、ダンナが人間の女と一緒に居たからって驚いたりはしてねぇよ!?」


 の割には声が裏返ってるぞ?


「言っておくがマリーもフェリシアも俺の奴隷じゃねぇし、俺が二人のどちらかの奴隷って訳じゃあねぇぞ。

 嫁と言うと色々と差し障りがあるんで、今のところは肉体関係有りの相棒ってところだな」


 俺の言葉にマルグリットが不満げな顔をするが、人間の領域でマルグリットを嫁と呼ぶにはまだ早い。

 実質似た様なモノだとしても、明言してしまうとどこかで揚げ足を取られかねないからなぁ。


「そ、そうなのか」


「ああ。俺は誰かを飼ったり誰かに飼われたりってのは好きじゃあねぇ。

 一応奴隷になってる奴らは別にいるが、ソイツラも用が済めば開放する予定だ」


 用済みになるのが何年何十年先になるかは分からないがな。


「そんな事よりも、オマエはこれからしばらくの間この二人に世話になるんだ。新入りなら新入りらしく、きちんと挨拶するんだな」


「おわっ、すまねぇ!オレはシ……、いや、バサラだ。

 ダンナの為に一生懸命働くつもりなんで、どうかよろしくやってくれ」


 ふむ?もしかしたらバサラの本名は、シから始まるのかな?


「そう。私はマルグリット。まだ胸を張ってレドの奥さんって名乗れないけど、いつかはそうなるつもりよ」


 いや、そん事を胸張って宣言されてもなぁ。

 と思ったんだが、バサラは圧倒されるかのように身を引いていた。

 なにか、俺には分からない戦いでも繰り広げられているんだろうか。


「あたしはフェリシア。ニグレドとはあんまり関係ないけど、こっちのマルグリットと友達だから巻き込まれたようなもんよ」


 フェリシアの言葉に、バサラは不思議そうな顔をした。フェリシアも俺の女だと勘違いしていたのだろうか?


「ねぇ。このバサラって人、本当にあたし達には手を出さないの?」


「ああ、その筈だ」


 そう言いながら目を向けると、バサラは強く頷き返した。


「じゃ、こんな事をしても?」


 ソレを見たフェリシアがバサラの胸をつつく。


「わぁ、ポヨンポヨン!」


 突くだけでは飽き足らなかったのか、フェリシアはバサラのワンピースをたくし上げて直接触りだした。


「ちょ!まっ!!!」


「スベスベでフカフカァ。ねぇねぇ、マリーも触ってみなよ!」


 たっぷりと堪能してもバサラが反抗しないのを確認すると、フェリシアはにんまりと笑いながらマルグリットにまで声をかけた。


「えぇっと……。ほんと、凄く気持ちいい」


 フェリシアの誘いに少しだけ逡巡したが、慌てるバサラの姿に悪戯っぽい笑みを浮かべ、マルグリットは大胆にバサラの胸をまさぐる。


「ちょ!ダンナァ!これ、どうしたらいいんだよぉ!?」


「あー。二人とも、バサラが困ってるし、そこら辺にしとかねぇか?」


 自分の頭と変わらないような大きさの胸だからオモチャにしたくなる気持ちをも分からなくはないが、やりすぎてバサラがキレても困る。


「えー、どのみち4人でヤるんでしょ?なら、今堪能したって変わんないじゃん」


「いや?バサラに手をだすつもりなんかねぇぞ?」


「え?なんで?こんなに美人なのに?」


「あのなぁ、俺が美人だったらほいほいと手を出すような男だとでも思ってるのか?

 第一、顔が良けりゃ誰にでも手を出すって言うんなら、オマエに手を出してない筈が無いだろうが」


 三人で何度も楽しんではいるが、フェリシアとはまだ最後の一線を越えていない。機会は何度でもあったが勢いでヤってしまって後で気まずくなっても困るしな。


「ちょ、え?あたしなんか……」


「おいおい、自分をおとしめるのは良くないんじゃなかったのか?」


「仕返しのつもりぃ?!どうせあたしなんてねぇ……」


「確かに男みたいな体形だが、そりゃ裏を返せばしなやかで引き締まった体だって事だ。触ってみれば軟らかい女の体だってちゃあんと分かるしなぁ」


 フェリシアのコンプレックスには気がついていたので、こう言う時にナニを言うかは想像がつく。

 

「顔だってそうだぜ?作りは悪くねぇのに表情がキツイせいで男受けしないだけで、磨けば十分に光る筈だ」


「あ、あ、あたしを……!」


「おだててもバカにもしてねぇよ。オマエは十分に魅力的だ。

 なぁ、マリーだってそう思うだろ?」


「うん。シアは可愛いしカッコいいよ!」


 俺とマルグリットの言葉に、フェリシアは顔を紅くして下を向いてしまった。

 フェリシアの反応が面白からって、弄り過ぎたかもしれない。


「それにな、顔の美醜やスタイルは俺にはあんまり関係ねぇんだ。

 相手の同意がありゃ魔法で俺好みに変える事だってできるからな。だから俺にとって一番大事なのは心ん中だけなんだよ」


 そう、大事なのは心だ。

 壊すにしろ、染めるにしろ、楽しくなけりゃあヤル意味が無い。


「……じゃ、まずかったかな?」


「まぁ、女同士で親交(・・)を深める分には悪いとは言わねぇよ。しもの世話だってオマエ達に頼まなきゃいけねぇんだしな」


「じゃ、遠慮なく~」


 俺の言葉に、待てを解除された犬の様にフェリシアがバサラに飛びついた。


「って事でバサラ。嫌がるのは構わんが、怪我はさせねぇようにな」


「ダンナ~~!」



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