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オープニング

「お前、もう仕事辞めた方がいいんじゃねぇか?」


酒癖が悪いことで有名な俺の上司は、酔うといつも俺のような仕事が出来ない後輩を

ネチネチと説教する。そして今日、上司は普段以上に酒を飲んでいた。



「正直言って足手まといなんだよね。お前、この仕事をやるまではバンドやってたんだろ?

 またバンド結成していくらでも夢を追ってろよ」


俺はこの上司より年上だったが入社時期、キャリアと共に劣る為後輩。

インディーズでロックバンドをして、それなりに順風満帆な人生を送ってたが

メンバーの一人が癌で脱退してからはここら辺が節目だろうと

皆新しい人生を歩んでいき、バンドは解散してしまった。


そしてロクな学歴をもってなかった俺を拾ってくれたのがこの会社だった。


「いえ、もう僕はバンドをやるつもりはないです」


「いやだから聞いてた?お前はこの会社のお荷物なんだよ」


「はぁ……」


「いや、はぁて。お前そうやって返事すれば良いと思ってるの?

 社会でそれが通用するとでも思ってんの?」


「いえ、そういう訳では……」


「まぁいいわ。お前もう帰れ」


上司はチッと舌打ちをしてから手で帰れとうながした。


「失礼します……」


悔しさと怒りで胸が張り裂けそうになるもなんとかこらえ、

俺はやるせない気持ちでいっぱいになりながら飲み会の席を去った。







目を覚ましたとき、俺は自宅アパートのソファーの上だった。

そうだ……俺はあれから一人で酒をかっくらってベロベロになって帰宅したんだっけ。

身体を起こそうとすると頭に鈍い痛みが走った。まだ酔いは醒めてないようだ。

うぇっぷ。気持ち悪い……水が飲みたい。


よろよろと立ち上がって洗面台の蛇口から浴びるように水を飲む。

ひとしきり落ちついた所で水を止め、ふと時計を見ると入社時間はとっくに過ぎていた。


「うっわマジか……!」


ぼっさぼさの髪、シワだらけのスーツだったがそんな事どうでもいい。

俺は急いで家を出て、駅へと向かって走り出した。


が、しばらく走って後悔する。頭を内側からハンマーで殴られてるかのような頭痛が

押し寄せてきたのだ。


その場でうずくまり、通りがかりの人に救急車を呼んでもらおうと

「誰か……!!」今出せる声を全力で叫ぶも、通行人は誰もいない。

普段は車が常に走行してる大通りなのに今日に限って閑散としている。

こんな事ありえない。夜中でも車のライトで明るいこの道路だぞ?


……とにかく自分で救急車を呼ぶしかない。

買いたてのスマホをスーツから取り出し

慣れない手つきで操作し、百十九番をプッシュした。

「何でだよ……」


コール音は鳴っても出るものはいない。二十四時間体制のはずの緊急通報番号なのに。


もうどうにでもなれ……今日は欠勤して明日全力で謝ろう。

それでクビなら仕方ない。上司が言ったようにまたバンドやるか?はっ。

アホらし……。







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