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Adonai's Failure  作者: 白河田沼
第三章 裏切りの魔女の代理

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第41話 協力者との邂逅

「貴方達に話したい事がある。」

魔女のような笑みを浮かべて紫藤達を見上げ、言った私である。

裏切りの魔女の代理について、あり得ない筈の言葉を吐いたのだ、

それは私自身からの交渉開始の合図そのものだった。

けれどその前に一つ気になる事がある。







「ペストマスクなんて付けちゃって随分変わったね、赤神泣。」





「・・・・・そう言う、裏切り者の魔女の代理とは関係無く貴方こそ魔女(ウィッチ)と成ったのですね、

なり損ない(フェイラー)。

いいえ、再び処刑対象になった予言の魔女と言うべきでしょうか。」

「益々、あの"呪い子"に似て来ましたね。」と赤神は言った。

聞き馴染みの無い声が私の耳朶を打つ。

処刑対象の魔女である私をどうしてすぐ殺さないのか、

紫藤藤乃の声がどうして聞き覚えがあるのか、

赤神泣がどうして聞き馴染みの無い声を話すのか、

そもそもどうして、私が殺した傲慢の魔女の代理や、副代理の五人の内の一人、

裏切りの魔女の代理についてどうして知っているのか、

憤怒の副代理、赤神泣が復活したのか、

第二特性、情報の「収集」と「集積」を用いて情報を把握し、

魔女(ウィッチ)の基本能力の一つ、情報解析で解析し理解する私である。




魔女(ウィッチ)の持つ五つの基本能力を私は使えていた。


支払った全ての代償の偽物を「蛇」に与えられた時から、

魔女(ウィッチ)としての新しい力と都(・)市(・)を(・)滅(・)ぼ(・)せ(・)る(・)七(・)割(・)程(・)の(・)魔(・)力(・)を与えられた時から、

本能的に五つの基本能力を使う事が魔女(ウィッチ)として生まれ変わった私には出来たのだ。

エレベーターを含めた周囲に魔素を拡散させ、

調べる為に第一特性「模倣」で情報解析を模倣したのは全ての特性が使えるか一つずつ試す意味があった。

私(・)は(・)死(・)ぬ(・)度(・)に(・)強(・)く(・)な(・)る(・)の(・)だ(・)・・その性質を彼女達としては活かしたく無かったのだろう。

だからこそ、きっと私が見つかった事には彼女達にとっては意味があるのだ。





「だからこそ、これまで通り魔女であろうと私は殺せずに、捕える命令しか下されず。

「SILENCE」の副長であり、

それ故にあらゆる顔を持つと言われる紫藤が、

他ならない裁判所で三島に杖を向けていた紫髪の魔女(ウィッチ)である事も、

傲慢の魔女の代理や赤神達、

五人の副代理が魔女(ウィッチ)の基本能力の一つ、

輪廻転生で記憶の実感を失いながらも復活した事も、

そして裏切り者の魔女の代理の正体についても、

復活した赤神が戦力増強の目的から代行会から"旗持ち"に派遣され、

「SILENCE」のペストマスクに付いた変声機能で声を機械的に変え、顔を隠し、変装しているのも全て理解してるよ。」



「その察しの良さについてはこちらは気付いていなかったな。

魔力の流れは感じたが、

まぁ魔女(ウィッチ)としての五つの基本能力の使い方は及第点と言った所か。」




「異質な魔力の流れを感じたから下に行こうと言ったのは貴方でしょう、「SILENCE」の副長。

最も当たりの一人を釣れたのはいい事でしたけど」

機械的でけれど先程とは違い砕けた紫藤の言葉に、

赤神が機械的な口調で続けて丁寧に返す。

そのやり取りはどうしてか恣意という一人の友達とのやり取りを私に想起させた。



第五特性「全知全能」を第二特性で解析して私は知った。私の辿った結末と彼女の末路について


なり損ない(フェイラー)の復活の末路が、

過去の私のこれまでの旅路と同じ様に代償を必要とする物である事を

魔女(ウィッチ)の蘇生の末路について、

これから「偽物」の私が記憶の実感を喪失し続ける道を辿る事を

これら二つの事を第五特性「全知全能」を

第二特性、情報の「収集」と「集積」で解析して情報を取り込み理解していた。

井伊波恣意が「魔女」と同様に扱われ、

呪いを背負った"呪い子"同然に彼女が扱われて来た事を、第五特性を解析した結果として知っていた私である。




かつて、井伊波恣意は全知全能だった。


彼女に見渡せない過去は無く。

彼女が知らない現在は無く。

彼女が干渉出来ない未来は無い。

兄のように嫉妬の魔女の代理として魔女刻印(ペイントアウター)を受け継ぐまでも無い彼女は、

魔女の血そのものである血印(ペインター)を持っているだけで「魔女」に匹敵する権限を持っていたのだ。







「そうだ、彼女は呪い子でありながらその呪い故に「魔女」に匹敵する力を持っていた。

魔女の器の一人として見出される程の逸材だったのだ。

彼女こそが「魔女」の生まれ変わりだと"呪い子"だと知りながらも、賢人会は持て囃した。」



「だけど、彼女は鏡の世界(クルシア)を捨てた。

自身の名誉、立場や力も全て捨てて、

燭台の間に立ちその力を用いて、

魔女の代理の立ち合いの元、「計画」通りに、

七つのマスターピースを選ばれた者達に再分配したのだ。」




「それによってマスターピースを得たのが、七人の魔女(ウィッチ)だった。

喪失した傲慢のマスターピースを継ぐ者、クリミナル・エフェソス

憤怒のマスターピースを継ぐ者、弩怒蛇明楽(サタン・スミルナ)

強欲のマスターピースを継ぐ者、富田神女(マモン・ペルガモ)

嫉妬のマスターピースを継ぐ者、井伊波(レヴィアタン)乃瑠夏(・テアテラ)

怠惰のマスターピースを継ぐ者、怠編殖(ヴェルフェゴール)埜呂懸(・サルデス)

暴食のマスターピースを継ぐ者、蝕指(ベルゼブブ・フィ)鈴(ラデルフィア)

色欲のマスターピースを継ぐ者、禍根鳥(アスモデウス)憂喜(・ラオデキヤ)

などなど、一人の無性別の魔女(ウィッチ)と六人の魔女の代理が、

「燭台の間」の等しく力を分け与える力と、

呪い子の力によって、

マスターピースをそれぞれ再分配されたのだ。」




「再分配した後の彼女は燭台の間の力を用いたとは言え、既に「全知全能」の権限を持ちながらも"呪い子"としても酷く弱っていた。

そう魔力量等も含めて魔女の代理程度の実力に落ち着いていたのだ。

そうして14歳の夏、正式に彼女は現実世界へと旅立った。マスターピース七人に向けた七つの手紙を燭台の間に置いてな。」

「「SILENCE」の魔女(ウィッチ)が常に監視しているとは言え、願いを彼女は叶えた訳だ。」と紫藤は独言する。

機械的ながらも怒涛の暴露に紫藤を見つめた、けれど私は言葉を飲み込む。

井伊波恣意、彼(・)女(・)と心の中で読んでいた私の友達について、

よもやそこまでの過去が有ったとは知らなかったのだ。

その魔女の血を殆ど受け継いだ私としては、

まさか彼女が「全知全能」だったとは思わなかった。







「だけど、その力は私には渡す寸前に奪われた。

他ならない「魔女」の手によって、

彼女自身に残った魔女の血の殆どをそ(・)こ(・)に(・)居(・)た(・)私(・)ご(・)と(・)喰(・)ら(・)っ(・)た(・)ん(・)だ(・)と(・)思(・)う(・)。」




「私が聞いた、人(・)の(・)半(・)身(・)を(・)噛(・)み(・)砕(・)い(・)て(・)飲(・)み(・)込(・)ん(・)だ(・)よ(・)う(・)な(・)音(・)は私の残った耳で聞いた「魔女」が恣意と私(・)を喰らった「証」だったんだ。」




「・・・そう言う事か、だが一つ疑問がある。

何故君は生きている。

聞く所によれば君はなり損ない(フェイラー)として復活したのか、

或いは魔女(ウィッチ)として復活したしたのか。

これまでの七度の復活という回数と仕組みに矛盾が生まれるのだ。」

機械的な口調で紫藤が言ったのを私は聞いた。

この答えについて私は知らなかった。

ただ、「復活」する時に聞こえた言葉がある。






「「君(わたし)にとって最も大事な記憶を奪い、

これを唯一の例外として王(ドミネイト)として少女(わたし)を復活させるね。

なり損ない(フェイラー)や魔女(ウィッチ)を通り越して一時的に王(ドミネイト)として覚醒する事になるだろうけど」

・・・って「蛇」に(・)似(・)た(・)声を聞いた気がしたんだ。」



「・・・そうか、「蛇」はそう言ったんですね」

機械的な口調で赤神はそう言ったのを私は聞いた。

弩怒蛇家という憤怒の大罪七家と赤神家は、

元七大貴族と名家という関係からなり損ない(フェイラー)の「王」である「蛇」を、

憤怒のマスターピースごと継承する責務を持っているのだ。

おそらく、思う所が有ったのだろう。

ペストマスクから覗く赤神の憂いを帯びた赤い瞳から理解出来た。

代々、「蛇」を管理し受け継ぐ者として不甲斐ないとでも考えていたのだろう。








「そうは、考えていません。

遺灰城にある地の底そのものである"ある場所"。

そこに封じられていた「蛇」を盗んだのは井伊波恣意でしょう。

赤神家に所属しているとは言え私には殆ど関係ありませんので。」



「・・・へぇ、そうなんだ。

私はてっきり彼(・)女(・)の事についてや裏切り者の魔女の代理について、もっと咎められる物かと」

肩を竦めて平然とした風にそう言う私である。

この時の私は二つの事を考えていた。

一つ目は「蛇」の事について、

二つ目は恣意の事についてである。

「蛇」が憤怒のマスターピースの付属品だったのか、

恣意がどうして魔女の代理程度の力を持っていてあの黒カス先輩に犯されたのか、

・・・気になったのだ。







「それが気になるのか。

「蛇」や友達の事について、その根底にある矛盾について疑念が生じたのだな。」




「彼女達が現状に収束する道しか選べなかった事、

肝心な時に力を使え無かった事に疑問を覚えているのでしょう。

分かります、私も最初はそうでした。

・・・であればこそ赤神家の次期当主、赤神泣として答えましょう。」

機械的な口調で赤神が言えば私は見た。

赤神が息を吐き出して息を整える所を、

自身の気持ちに何らかの整理をつける光景を、

そうして赤神が気持ちを落ち着けている様子を見れば、けれど赤神は言った。















「それを為した物こそが「魔女」です。」

厳然たる事実として赤神がそう言えば、

けれど魔女のような笑みを私は浮かべた。

まるで私の「計画」通りに



◾️

シアの「計画」には三つの段階があった。

まず第一段階「構築」

して第二段階「遂行」

そして第三段階「実証」

・・・これら三つである。



第一段階ではまず「予言」を知り「計画」を構築する。

第二段階では「計画」を遂行する。

第三段階では鏡の国(クルシア)の人々を「平和」にし実証とする。

この三つに分けられているのである。

聖十字教の聖書、

その裏表紙に書いていたシアの終末のシナリオ通りに進めばこれらが決定されるのだ。

現在の段階は第二段階「遂行」にある。

予言について既に第五特性を解析し情報を断片的にではあるが得ているシアなのだ。

それを知る彼女からすれば、明らかに失敗しようが無い「計画」だった。





七階と八階の狭間の階段、

紫藤と赤神がいる場所を、

七階の踊り場から見上げシアが第二段階「遂行」にある時点で、先の結論を口にした。

・・・筈だった。

けれどそんな未来は訪れない。

貴方の思い描いた現在には成らない。

そう言う風に赤神はこう言った。








「それを為した物こそが「魔女」です。」

事実として赤神は言った。

「蛇」が「魔女」の干渉によって力を失っていた事を、

恣意が黒カス先輩に犯されがかった時に、

魔女の代理程度の力も行使できなかった理由として「魔女」から力を奪われていた事を、

けれど魔女のような笑みをシアは浮かべた。

まるで彼女の第二段階「遂行」の「計画」通りに








「・・・憎らしく無いのか、「魔女」が」




「偽物の感情しか持たない私が?

勿論憎いとも、

嗚呼、なんて憎いんだろう!

最低でも魔女の代理に匹敵する私の友達の力を奪い、

ただの人間にして犯されるのを黙って見ていたなんて!!

「蛇」を憤怒のマスターピースの付属品にしたただなんて!!!

憎く無い訳が無いだろう!!?」

けれど、同時に思うシアなのだ。

偽物の感情の思うままに魔女の笑みを浮かべながら、

けれど、明らかな憎しみを顔に浮かべるシアであるのだ。



この時のシアは偽物の魂を持ちながらも心から「魔女」を憎んでいた。


心の底から「魔女」のせいで恣意が凌辱された理由を知り、怒って

心根から「蛇」が付属品として扱われた事に、憎しみを抱いていた。

偽物の感情で魔女の笑みを浮かべて、

けれどシアは心の底から「魔女」を憎んでいた。

恣意の仇である事を理解して尚、「魔女」を憎まなかった彼女であったとしても・・・

憎しみを抱いてしまったのだ、

全知全能である「魔女」に

決して勝てないであろう存在に









「哀れな物だ、予言の魔女という存在も。

とっとと賢人会に付き出して処刑した方が彼女の為にもなるのでは・・」



「そう言わないで下さいよ、

「SILENCE」副長。

彼女にも理由があるんですよ。

それを無視してしまっては賢人会や"旗持ち"と同じ機械のような存在に成ってしまいますよ。」

機械的な口調でペストマスク越しに赤神がそう言った。

七階と八階の狭間の階段に居る彼女達、二人を

七階の踊り場から見上げながらシアは見た。

あらゆる顔を持つと言われる「SILENCE」副長、

彼女はしかし本当にそう言う側面を持つ。




「SILENCE」の副長は本当にあらゆる顔を持つ


機械的な口調で話す時も、

人間的な口調で話す時も、

そして神のような口調で話す時も在るのだ。

あらゆる顔を持つ彼女はある性質を持つ。

話(・)す(・)人(・)物(・)に(・)合(・)わ(・)せ(・)た(・)人(・)格(・)が(・)表(・)出(・)す(・)る(・)の(・)だ(・)。








「そう、理解してくれて構わない。

元来、私とは私達であり、私自身だ。」




「何も言ってないに等しいね、どう言う意味。」





「複数の人格が対面した個人に合わせて表出していると考えてくれて構わない。」

「・・・・成程、解らん。」そう言いながらもシアは心の中で理解する。

要するに話している人に合わせた人格が出てくるのだ。

粗暴な人が相手であれば粗暴な人格が、

穏やかな人が相手であれば穏やかな人格が、

悲哀に満ちた人が相手であれば悲哀に満ちた人格が、

それぞれ出てきてその人の相手をするというタイプの多重人格者だと言う事だろう。

果たして何の人格を有しているのか、

何人の人格を有しているのかは解らないが、

そういう魔女(ウィッチ)こそが「SILENCE」の副長であるらしい。





多重人格者についてシアはどうこうは思わない。

便利な時は便利なのだろうが、

大抵はトラウマを抱えている為、何かを言いづらいのだ。

悪意を持つ者も当然いるのは理解している。

ただ、それだけの理由で差別するつもりは無いとだけシアは心の中で記した。







「であれば、話は早い。

君が賢人会や鏡の世界(クルシア)と共に「魔女」を相手取る為に二つの選択肢を用意した。」




「・・・唐突だね、それで何が言いたいの?」

そう静かに言えばけれど紫藤は階段に足を掛けた。

カツンカツンというヒールの鳴る音と共に彼女達、二人が降りてくる。

紫藤と赤神の二人がヒールを履いた足で階段を降りてくる。七階の踊り場に足を掛けた後、

けれど紫藤は言った。

機械的な口調でこう言った。










「我々に捕まるか、死かだ。」

そんな言葉と共に私の手首に手錠が嵌められた。

そうして、シアは選択の余地すら無く、

「SILENCE」の副長、紫藤藤乃と赤神泣に捕まり、

手錠を嵌められながら、

光輪(ヘイロー)が鼓動する空の下で、

イノセント・エフェソスの居る10階へと足を踏み入れた。



又してもシアの「計画」通りに






◾️

白い天井の下、廊下を歩く。

歩く、歩く、歩く。

「SILENCE」の副長である紫藤と赤神に連れられ、

「SILENCE」の魔女(ウィッチ)達に周りを囲まれながらも私は歩いた。

「イノセント・エフェソスに合わせてやる。」それが「SILENCE」の副長である紫藤藤乃の言葉だった。

「病塔」の中央に七機あるエレベーター、

「SILENCE」の魔女(ウィッチ)に封鎖されていたエレベーターの中で、

10階まで登りながらも聞いた言葉である。





勘違いしないで欲しいが私には反対する気はない。


どうにも怪しい点は多い物のそれでも私の目的の一つが叶うのだ。

それに乗らない理由は無かった。

仮に罠だとしても、それは恐るるに足りないと私は考えていたのだ。

私は強い、それも魔女の代理に匹敵する程に、

その私が単純な力比べで負けるとは思えなかったのだ。









「それは驕りだと思うがな。

実際私に瞬時に手錠を嵌められていたでは無いか。

その事から考えても私達「SILENCE」の魔女(ウィッチ)や、魔女の代理。

旗持ちの隊員には勝てないのでは無いかと考えるのが自然では無いのか?」




「手錠については態と嵌められたんだよ。

抵抗することも出来たけどこれ以上無駄に体力を使いたく無かったからね。」



「そうであれば良いのだがな。」

そう言えば、バリケードの様に廊下を占拠している魔女(ウィッチ)達を私達は見た。

「SILENCE」の魔女(ウィッチ)がイノセントの居る部屋を守っているのだろうと直感した。

この距離からして奥の角部屋に居るであろう事も、

もっとも、円柱の端にある部屋を角部屋というかは分からないが。



その彼女らに私の手錠の紐を持ちながら、紫藤が近づく。

一言、二言話せば紫藤と魔女(ウィッチ)の二人が右手を左胸に当て、

足をピシっと揃えて背筋をピンと伸ばした。

おそらく敬礼だろう。

初めて見たが何処かで見た様にしっくりくる。

問題は無い、理解は出来ている私なのだ。

そうした敬礼の後、「SILENCE」の魔女(ウィッチ)達が道を慇懃な足取りで隅により、人が居なくなって視界が開いた。







「・・・では行くぞ。」




「・・・・・・」

その言葉と共に手錠に付いた紐を紫藤が私の手錠に付いた紐を引く。

そうして歩いていれば赤神達や、

護送する様に周りを取り囲む「SILENCE」の魔女(ウィッチ)と共に私達は歩いた。






「所で、イノセント・エフェソスについて何処まで知っている。」




「クリミナの弟とか、

裏切り者の魔女の代理に関係があるとか、

少年の姿をしているかも知れないとかだけだけど、

何、それ以外は何も話さないよ、藤乃。」

「・・・そうか。であれば語るのは野暮だろう。」

静かに独言する紫藤をけれど私は眉を顰めて見る。

何を言いたいのか理解できなかったのだ。









「であれば、話す気は無くなってきたな。

二つの選択肢を強制した手前、忠告を一つ与えようと思ったのだが、」




「・・・・あ、そう理解できないけど教えてよ。」

「何故?」と大きな声で紫藤は言った。

「SILENCE」の魔女(ウィッチ)が護送する様に周りを取り囲む中、である。

当然だが、周囲にフードを被り、

顔の見えない人がいる状況に私は脅威を覚えない。

これでも何度も死から復活した身だ、

私にとっては問題が無い。





問題なのはその質と数である。

勝てない・・とは思わない。

だけれど「SILENCE」の魔女(ウィッチ)が何処までの実力を持つのか、

この「病塔」に何人居るのか分からないのだ。

得体の知れない物は脅威にしか感じれないのが現実だった。







「ならば理解している筈だ、私が話すアドバイスについて。」



「・・そうだね、この状況では断りづらいかもだ。

なら聞かせてよ、

イノセントについてのアドバイスを、一つだけ。」

静かに言葉を発すればけれど私は聞いた。

機械的な口調を、

けれど当たり前の事実として

紫藤の口から聞いた。








「イノセント・エフェソスとは敵対するな、奴は危険だ。」

その言葉と共にある扉の前に足を止めた私達である。

「SILENCE」の副長、

して赤神以外の「SILENCE」の魔女(ウィッチ)達が

横に捌け、

右手を左胸に当て、

足をピシっと揃えて背筋をピンと伸ばし敬礼の姿勢を取った。



「この先は貴方しか入れない。」そう示すように












「行ってくるね。」

そう魔女のような笑みを浮かべて私は扉を開けた。









◾️

魔女暦2998年8月14日、13時30分、

壁に掛かった多機能の時計を見ればそう示されていた。

秒針がチクタクと時を刻む中けれど私は見た。

金髪翠眼の少年・・・では無い。

少女の姿をしたイノセント・エフェソスの姿を、

患者衣を着た華奢な肩をした少女の姿を見た。










「・・・・・・・」





「・・・・こんにちは、 イノセント・エフェソス。一応初めましてだね。」

そう動揺しながらも言えばけれどスッとイノセントは立ち上がった。

ベッドの上に立てば、点滴の束を持ち

そして外した。

ポタポタと赤い血が滴る中でけれどイノセントはその腰まである絹の様な長い金髪を風に靡かせる。

そうして腕から血液を滴らせながら私に近づいてくる。




そうして、歩きながら患者衣に手を掛け一枚、一枚あっという間に脱いでいく。


そうして眼前に晒されたのは、

起伏に乏しい胸に、

男女を逸脱した程細く美しい腰に、

陶器の様に白い肌であった。

確かにそれらがあったのだ、

けれど彼女・・いいや彼(・)にはある物が無かった。

股(・)間(・)に(・)何(・)も(・)付(・)い(・)て(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)だ(・)












「・・・・・・」

その状況に黙って目を見開いていればけれどイノセントは言った。

私の目の前で、

まるで自分を慰める様に、

まるで辱められた乙女の様に、

頬を紅潮させながらも無(・)性(・)別(・)者(・)は私に言った。




















「私の首を絞めて下さい。予言の魔女(親亡き子)」

そう恍惚とした表情で私の目の前で全裸で立ちながら、

全裸を私に晒しながらも、

目を見開いて驚いている私に言った。








「ごめん、無理。」

はっきりとした声で苦虫を噛み潰した様な表情で、私は言葉を吐いた。

出会い頭、変態に殺してくれと頼まれた。

私にとってはそれだけで貴重な体験の一つだった。

・・・残念ながら、第二段階「遂行」にある私の「計画」通りの

哀れな無性別者には語ることは無い

彼はただの可哀想な被害者であり、

ただの憐れ極まる加害者だからだ。

〜人助けの魔女〜

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