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傷だらけの関係を君と。  作者: 真曽木トウル
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7. 嵐の予兆

◇◇◇



 大学のサークルは、授業と極力重ならない時間帯・曜日に活動することが多い。


 特に多いのは、4限目や5限目の講義枠が終わった夕方以降。

 そうした活動が終わると夜8時や9時前後。

 自然と、そのまま夕食を皆で食べて帰ることが多くなる。



 和希の所属するこの運動サークルにも、活動後に皆で食事をして帰る習慣があった。


 今日は何と、見学しにきた新入生が最終的に15名弱。

 普段よりもかなり大人数のまま、活動終了後は集団で学食に移動したが……。



「珍しいな、三条。ここのところ」



 学食の食事用の盆を抱えて主将の日比谷がつぶやいたのを、聞こえないふりをして和希はスルーした。


 基本的に和希は今まで、練習には参加してもそのあとはさっさと帰っていた。

 それが4月に入ってから練習後の食事には必ず出席しているのだから、首をかしげているのだろう。



「―――――あ、三条さん。お先どうぞ」



 今井慶史に、譲られ、テーブル席に着く。

 慶史は和希の隣の席に座った。



 和希が食事に欠かさず出ているのも、例の新橋からの依頼のせいだ。


 慶史に対して日比谷が何か『余計なこと』を言うとしたら、練習時間中よりも、むしろ食事の席の方だろう。


 なのでこの食事の時間は、常に今井慶史の近くにいるようにしていた。



 幸い、最近あと2人新入部員が入ったらしく、日比谷の関心も分散しているようだ。

 今井慶史以外の新入部員。

 和希はまだ一言も話していないが、しばらくの間は避けたいと思っている。

 これは和希の個人的事情からだが。



「……三条さん。

 それだけで大丈夫ですか?」


「ん?」



 慶史の前にある盆には、大盛りご飯にボリューム感のあるカツに小鉢のおかずがみっちりと載る。

 新歓期間中につき、食事は上回生のオゴリ。

 それをフルに活用している。


 一方。和希の前にある盆に並んでいるのは、皿の上にさくっと盛られたサラダバーの生キャベツと、小皿の冷ややっことキムチのみ。


 少なすぎやしないか?と慶史の顔が言っている。



「………ああ。大丈夫。

 帰ってからちゃんと食べるから」



 和希は、パック入りのキムチをぱかっと開いて、冷ややっこの皿に投入した。

 主食なし肉魚なしのそのような献立を盆に載せているのは、ほかに誰もいない。

 強いて言えばタッパー詰めのご飯を持参している者が二、三人いるぐらい。



「普段あまり学食には来られないんですか?」


「そうだね、自炊。

 嫌いなわけではないけど、食べられるものが少ないから、自炊の方がまだ栄養が偏らなくて」



 そこで日比谷の号令がかかり、和希も慶史も手を合わせて

「いただきます」

と大人しくつぶやいた。



「今井くんは、取る授業は大体決めた?」


「あ、はい。

 専門と語学は決まってます。

 でも全共は……数が多くて、選びきれなくて」



 講義は、各学部・学科の専門科目と、全学共通科目に分かれる。

 全共は、教養・自然科学基礎の科目であり、学部横断的に受講が可能だ。

 内容的には人文・社会系から自然科学、健康・スポーツ科目、キャリア形成科目など多岐に渡る。



「専門と語学とスポーツ実習の時間を先に確認しておくのと、自然科学系の実験とか実習は、履修登録の前に履修申し込みが必要だから」


「え? あ、本当ですか?」



 慌てて慶史は食事をとめ、自分のリュックサックから分厚いシラバスを引っ張りだし、ページをぱらぱらめくって「ああ、これかぁ」とつぶやく。



「単位、ややこしいですね。

 結構しっかり確認しておかないと必要なのが取れていなさそうで…」


「単位コレクターだった人が必須なの落としていて留年するとか、ちょいちょい聞く話だしね

 あと、ブラックバイトに捕まって、授業に出れなくなるとか」



 そう話しながらドレッシングなしのキャベツをかきこみ、続けて冷ややっこをかきこむと、和希一人、食事が終わってしまった。

 慶史の方も食べるのが速い方らしく、もう残り3分の1ぐらいになっているが。途中で帰るわけにもいかないだろう。


 手持ち無沙汰のままに、和希はスマホを取り出し、いつも見るサイトをずっとスクロールしていて。


 ふと、ある文章を見つけそれに見入った。



(……………………これは…………?)



 思わず息を呑む。



「どうか、されましたか?」



 慶史に尋ねられた。


 後輩の顔は心配げだったが、極力なにげない風を装って、

「何でもない」

と携帯をバッグにしまった。



 ……鼓動が、密かに早まって。


 胸の辺りに、息が止まりそうな痛みが走った。




◇◇◇

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