表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷だらけの関係を君と。  作者: 真曽木トウル
43/87

42.  後輩はなにか不届きなことを考えている気がする

 そういえば……おとといと昨日の騒動は報道されているだろうか。

 ローカルニュースだし、単に、学生同士の喧嘩のような扱いかもしれないが…と、テレビをつける。


 京都テレビは入っているが、サンテレビは入っていないし、再放送時代劇の時間でもない。

 よくわからない競馬番組からチャンネルを変える。

 つづいてうつったのは、とぼけたおじさんが司会の、関西の人気ワイドショーだった。


『ほら見てくださいよ。

 疑いが、かなり濃厚と言われてるケースだけで、もうこんなですよ?』


 大きな画面に移った地図の表示を、ひとつひとつ指す司会者。

 ――――取り上げていたのは、関西圏の“性犯罪者狩り”だった。


『この通り。多くの目撃証言、というか被害者にならはった性犯罪者たちの証言にはなりますけど、身長175cm~185㎝と証言にばらつきがあって、とにかく足の長い男性ですね。

 ごく一部、背の高い女性だという証言もありますけど……』


 ふむ。関西圏での“性犯罪者狩り”と報道されるほどには、皆、和希が起こした事件をひとつひとつつなぎ合わせて考えるようになっているのらしい。


 和希の体型ゆえか、目撃した者の多くが実際より大きいと判断している。また、胸は完全に潰し切れていないかと思っていたが、先入観からか、男性と証言されていることが多いようだ。


 携帯に電源はいれず。

 慶史に許可をとってWiFiにつないでいたノートパソコンを開く。


 いつも見ている、性犯罪者の情報交換サイト……を見る前に、念のため和希は、巨大掲示板にできている『三条和希スレ』を見る。


 あれから……勝手に個人情報を書き連ねているやつがいないとも限らない。


 例えば、三条和希はこのサークルにいて、この後輩と仲が良くて、その後輩は情報学科1回生のこのクラスだとかなんとか。住んでるマンションはどこの通りだとか。


「…………うん、大丈夫かな」

 

 ここしばらくの書き込みは、和希の容姿や闘い方の評価ばかりだ。

 和希は深くため息をつく。

 とはいえ、新入生の中に実は和希のことを知っているやつがいないとも限らない。

 見かけたり聞きかじった情報を、嬉々として報告しやがるアホがいるのがこの世の中だ。


 ――――実際、和希の高校バレ、大学バレはそれで起きたのだから。


 高校と道場では、まったく違う名前を使っていたはずなのに。同じ高校の格オタ野郎たちが同一人物と特定しやがった。


 以前、高校生のころ、最寄り駅を公表されて引っ越さざるを得なく(というか身を寄せる家を変えざるを得なく)なったのだが、それを同級生に問い詰めたら、

『え、住所じゃないのにそんな問題?』

ときょとんとした。

 最寄り駅を公表される危険性が、男にはわからないと知り、全身の力が抜けた。


 そういったこともあって極力頻繁に名前を変えていたのだが。


 三条和希に名前を変えた今も、色々なところに前の名前の戦歴が残っているのを、格闘ファンなのかネットストーカーなのかが……しつこく、しつこく、追いかけ特定してくるのだ。


 引き続き、注意をしなければ……。


(……ところで)


 今日、月曜もサークルの練習があるのだが。慶史には参加するように言うべきだろうか。


 もちろん、休んでしまったら、慶史の体づくりの計画が狂うのは確かだし。

 ファルス本山たちが和希の参加サークルをもしも突き止めたりしたら「いつも来ているのに今日に限っていない」今井慶史を疑うことにはなるだろうし。


 それに、和希が休んだところで、慶史もいないと、また勝手に誰かが二人の仲を疑うようなことを言い始めるのではないか。


(よし――――サークル行ってから帰りな、ってメールしよう)


と、和希が、電源を落としている携帯電話を手に取ると。


「ただ今帰りました――――!」


 バン!とドアを開けて、元気よく後輩が帰ってきた。


「…………………」


 どん、と、ランドリーバッグにぱんぱんに詰まった服らしきものを差し出して見せる。


「すみません、干してあった服とか、いろいろ持ってきました。

 三条さんのうちの周りには誰もいないというか、むしろ警察官?みたいな人たちがうろうろしていましたよ?

 だから安心して、結構、たくさん目に荷物を持ってきてしまいました」


「………あ、ありがと」


「なので、すみません、晩のおかずはこれからまた買いに行ってきます…

 って、あの、……どうしました?」


「そう、だね………」


 時計と彼を交互に見て。


「別に?」

 ……ああもう、仕方がないな、と和希は割り切った。


「あの……?」


「大丈夫。

 気にしなくていいことを、気にしそうになっただけ」



◇◇◇



「やっぱこの時期はキャベツになるか……」


「2人なんで、キャベツまるごと1個買っちゃいました。

 ソーセージ買ってきたので、炒め物で良いですか?」


「一人暮らしでソーセージ買うって、ブルジョワめ……」


「え!?そうなんですか!?」


「だって、タンパク質をとるための食品だろ。グラム当たりの値段考えたら明らかに贅沢品じゃない?

 こっちなんて、業務用の冷凍鶏肉と特売の豆腐でタンパク質の摂取量ようやく維持しているし」


「ああ、豆腐…なるほど」


「なにがなるほど?」


「……い、いえ別に!?」


「まぁいいや。

 ソーセージあるんなら、他の野菜と刻みまくってコンソメで煮ない?

 トマトもあったよね?」


「あ、そうか。。。コンソメ買ってないんですよね」


「じゃあいいや、それなら…」


「あ、買ってきますよ。隣に百均ありますし」


「本当?それならお願いしたいな。

 コンソメは好きでさ。

 お金ないときはキャベツのコンソメ煮が主食になってて」


「ああ、なるほどキャベツが主食……」


「……だから、何がなるほど?」


「い、いえ!?

 いや、三条さんの食生活って、意外と何と言いますか……

 逆に健康に悪そうですね」


◇◇◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ