病室で。
ご覧いただきありがとうございます!
湊人は父親からの助言を受け、実行します!
コンコンコン
「はい」
俺は体を起こして座った。
「失礼しまーす。湊人、来たよっ」
「華、わざわざごめんな。」
「何言ってんの!私が来たくて来たの。」
華がにこりとした。
あまりの可愛さに俺の口元が緩んだ。
「調子…悪くなさそうだね?」
「あぁ。華が来てくれたから調子良くなった」
「ふふっ。今日の湊人おもしろいね」
華がベッドの隣の椅子に座った。
「今日は1人で来たのか?」
「ううん。お母さんと。お母さんは売店で飲み物買ってる。私、早く会いたくて先に来ちゃった」
えへへと照れ臭そうに笑っている華も可愛い。
なぜだろう。
会う頻度はいつもと同じかそれ以上だ。
それなのに、いつもよりすごく可愛く感じる。
いや、元々可愛いんだけど。
愛おしいと言うのか。
今、猛烈に抱きしめたい。
「湊人?」
「…あ、ごめん」
「湊人、やっぱり無理してる?横になったら?」
「違うんだ。なんか、俺…華の事見惚れてた。」
「え…」
「…あ、俺何言ってんだ!キモいよな!ごめん!華はいつも可愛いのに、今日はなんか、その…」
俺は自分が言っている事が恥ずかしくなって最後まで言えなかった。
「…。湊人にそう言ってもらえると嬉しいよ」
華は微笑んだ。
俺もつられて微笑んだ。
(今からいけるかもしれない)
俺はベッドにあった華の手に自分の手を乗せた。
華はほんの少しだけ震えている。
「華、大丈夫だ」
俺はニッと笑った。
すると華の震えがおさまっていく。
「湊人…私っ!」
華は信じられないという顔をしてこちらを見た。
「良かった…」
俺は心の底から安堵した。
「湊人。ありがとう」
華は俺の手をギュッと握った。
「俺、今まで華の事怖がらせてたんだな。ごめんな。」
「ううん、そんな事ない。湊人はいつも真剣なだけだよ」
俺たちは笑い合った。
コンコンコン
華のお母さんがやって来た。
「湊人くん、具合どう?…華?!」
華は俺たちが手を繋いでいる所を見てとても驚いているようだ。
「お母さん。湊人、具合良さそうだよ!あと、私も」
華は微笑んだ。
「そうね。良かったわ!じゃあお母さんはお邪魔だから出るわね。迎えに来るから帰るときに連絡してちょうだい。湊人くん。無理しちゃダメよ!お大事にね」
「はい、ありがとうございます」
華のお母さんが出て行った。
「ふふっ。お母さんびっくりしてたね」
「あぁ。そりゃびっくりするだろうな。華が俺の手を握ってるんだからな」
俺は幸せだった。
このままずっとこうしていられたらどんなに幸せなんだろう。
その後も俺たちは手を繋ぎながら他愛のない話をしていた。
ブブブッ
華のスマホが鳴った。
「あ、お母さんから催促のメール来ちゃった。そろそろ帰らなきゃ」
「あぁ、長い時間ごめんな。」
コンコンコン
「お母さんかな?はい」
「失礼しまー…荒井さん来てたんだ」
やって来たのは華のお母さんではなく美奈だった。
「お、おう」
「山形さん。こんにちは」
華が微笑む。
俺の手をギュッと強く握りながら。
「こんにちは。ごめんね、お邪魔しちゃって。これ、サッカー部で作ったから渡しに来たの。」
美奈は袋からサッカーボールを取り出した。
ボールには部員達の寄せ書きが書いてある。
「お〜すげー!わざわざありがとな!」
「本当だ〜愛が詰まってるね!」
華も嬉しそうに見ている。
「…。じゃあ私帰るね!」
美奈はそう言うとすぐに病室を出てしまった。
「「…。」」
「私も行かなきゃ!湊人また明日、来てもいい?」
「俺はいつでも待ってるよ。華、無理すんなよ」
「うん、じゃあまた明日」
「あぁ」
ーーーーー
1週間後。
俺は無事に退院した。
1週間だけの入院だったが、体力が明らかに無くなっている。
今日は華とリハビリがてら外へ散歩に行く。
「母さんついて行かなくて平気?」
「大丈夫だよ。デートについて来る親なんていないだろ?」
「まぁ、そうなんだけど。あなた達病み上がりだから心配なのよ」
「何かあったらすぐに連絡するよ」
「少しでも変だと思ったらすぐに連絡するのよ」
「分かったよ。じゃあ行ってくる」
俺は家を出て華の家に向かった。




