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Act.10 二匹の山猫

ちょっと尺が微妙です

『お主ら、別に其の様なところに行かずとも、私が教えてやるぞ?』


『「................はぁ?」』


二人揃ってアンビリーバボー、と言わんばかりに口を広げ、言葉の意味を飲み込もうとする。


『だ、か、ら、私が教えてやる、と言っておるのじゃ』


先に動けたのは日向夏だった。


〔あの、えっと、お名前は?〕


『先にそちらが名乗るのが礼儀というものじゃろう』


〔あ、そうですね。私は日向夏、ヒナカ・S・ヴァイサイトです〕


『なるほど。それで、先のもう片方の声は?』


あ、俺のことだな。


『俺は兄者だ。この名前は日向夏につけてもらった』


『兄者?なんじゃそのへんぴな名前は?』


はは、へんぴな名前で悪かったな...とりあえず名前はロザらしい。そんで山猫のほうも名前があるらしく、ニガ、と言うらしい。けど、なんでこのタイミングなんだ...?


『それでじゃ、話を戻すがこやつの種族は「小さな巨人リトル・ジャイアント」じゃ。此処の固有種じゃから知らなくても何ら驚きはない。それでじゃ、実を言うとこやつの魂は今かなりあやふやな処におる。お主らはこやつを連れていきたいのじゃろ?それで一つ取引とはどうじゃ?』


ほう...取引と聞いちゃあ元商人の血が滾っちまうなあ。


『いいだろう。そっちのカードは?』


『ふむ、話が早くて助かる。先にも話した通り、こやつの魂はかなりあやふやな状態じゃ。私はこれを引き戻すことができる。もちろん、健全な状態でな』


『なるほど...こちらとしては歓迎するけど、もうひと押し欲しいところだな』


『んな...まあよい、なら私が戦闘補助をする、というのでどうじゃ?一応神様をしていた身じゃからの、それなりに役に立つとは思うぞ?』


『ふむ..それで、そっちの要求は?』


『お主らと混ぜてもらいたい。こちらとしては色々便利じゃからの』


『よし。その話、乗った』


『取引成立じゃの。よろしく頼むぞ、兄者』


『よろしくな。ロザ』


日向夏もこれにはいい顔をしてくれたので、良しとするか。


すると一変、日向夏が何か疑問を抱いたようで、


〔...これは私の勝手な推測なんですけど、ロザさんってもしかして秘神・ロザ...?〕


『ふむ。何故そう思った?』


〔さっき言っていた神様をして居た身、と、名前からそう推測しました〕


『聡いな、お主。お主の言う通りじゃ』


『秘神・ロザって何なんだ?一応ロザの事だってのは分かるんだけど...』


〔そういえば兄者には神々の話をしてませんでしたね。説明しましょうか?〕

『頼む』


そこで日向夏に説明してもらったのは、今の神様達(新興神と呼ぶらしい)が何処からともなく現れて古代神達(ロザ達のことだな)と今の星の覇権を巡って聖戦を起こしたらしい。そしてこの聖戦で古代神たちは全員滅びた、ということになっているらしい。


『全員滅びた?嘘じゃん』


〔そうなんですよね...私も最初は神様、って聞いて驚いたんです。けど、本来神々は地上には現れないはずで、別の神々を当たってみたら、ロザさんの名前を思い出したんです〕


『なるほどなあ...でもさ、今の神様たちも取り逃がした奴を野放しにするほど野暮じゃないだろ?』


『その通りじゃ。奴ら、この星の住民たちから私らの記憶を奪い、迂闊に接触しようものなら直ぐ奴らに私の存在を感知できるようにしたのじゃ』


だったら何で俺とは喋れてるんだ?訊いてみると、


『秘密、じゃ』


それはなあ...予想がつかないこともないけど...


『いちいち焦らしやがって...まあいいや。それで、何で俺たちに接触したか教えてくれるか?秘密、じゃは無しだぞ』


『拒否する』

『お前なぁ...』


『嘘じゃよ。教えてやる。簡単に言うと、滅ぼされた古代神たちの残滓を集めたいのじゃ』


『集めて何になるんだ?』


『ただの自己満足じゃよ。それにさっきこちらの用件を詳しく伝えていなかったの。どれ、これをくれてやろう』


《承認。名称:兄者に豪風、金魔術.Lv.Maxを付与》


......はぁ?何かスキルが手に入ったんだけど...


『やはり少し疲れるの、これは』


犯人は貴様か。まあ新しいスキルが手に入ったからいいんだけどさ...それより、なんなのさこのスキルは?


『どれ、少し身体を貸してはくれんかの?』


『...?』


『なに、お主は何もせんくてもよい』


『ならいいけどさ...』


俺がそういうなりロザが俺の体の中に入ってきた。感覚的にはあの、なんだっけな。観光地によく置いてある顔入れて写真撮るやつ。あれみたいな感覚だった。


ロザが俺の体に入ってきた後、業焔魔法とさっき手に入れた豪風魔術を使った。


すると、業焔魔法で出した小さな火が、豪風魔術の追い風によって一気に燃え上がり、鑑定なしでも分かるぐらい凄まじい威力の魔法になった。感じ的には火を息で吹き消そうとしたら、もっと燃え上がっちゃった、みたいな感じだな。


もちろんロザが防護魔法みたいなのを事前に唱えてたから、テントと俺たちへの被害はゼロだ。


『ほお-、上手く風の力を利用して、小さい魔力で高威力の魔法にするのか。凄いな』


『じゃろう?これは他の魔法や魔術にも言えることじゃ。覚えておくといい』


『けどさ、さっき何気魔法と魔術の同時使用してなかったか?どうやったんだ?』


『ふむ。確かにさっきはちょっとやり辛かったの。どれ、これでどうじゃ』


《承認。名称:兄者に演算.Ⅲを付与》


...またかよ。ホント神様ってすごいな...


『これは?』


『さっきお主が言っていた魔術を同時使用するためのスキルじゃ。ランクは低めじゃがの』


『ほう。ありがとさん』


『それとヒナカ、お主は魔法の同時使用以上はせぬほうが良いぞ。処理能力が生物の頭じゃ足りんからの』


〔習ったので大丈夫ですっ〕


『なら良い』


『...俺は?』


『お主は大丈夫じゃ。生身の体を有しておらんから理論上は無限に使えるはずじゃ』


『無限...』


ホント何でもありだな、この世界。

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