A:夢の続き
誰かのプロローグ 〜My brother.〜
誰かが小さい頃・・・・その誰かは泣き虫だった。周りの子どもたちからはいじめられていたが、誰かにとっては兄が優しくしてくれればそれでよかった。ある日、友達を作りたいと兄に告げると誰かの兄は
「大丈夫、あきらめなければなんでもできるよ」といったのだった。しかし、予想に反して誰かはその日もいじめられた。泣いている誰かの元へ、兄はやってきていじめっ子たちを説得するも失敗。兄は単身、いじめっこグループと血みどろの戦いとなった。兄は誰かが既に帰っていたと思っていつもは絶対に見せないような表情を見せていじめっ子グループを解散にまで追い込んだのだった。怖くて隠れていた誰かだったのだが・・・・物音を立てて兄に見つかってしまった。自分ももしかしたらいじめっ子グループみたいになるかもしれないと思いながら震えていると苦笑いをしながら兄は近づいて誰かの頭を撫でたのだった。彼は困ったように
「見られちゃったか・・・・まぁ、困るってことでもないけどね・・・いや、困るかぁ・・・ま、誰にもしゃべんないでね?」と誰かに告げた。誰かは
「あきらめなかったけど、駄目だった」と兄に告げた。兄は
「駄目ってことじゃないさ。どうしても駄目だって時に僕はいるんだ。だから、失敗しても僕がいつでも助けに入る。失敗なんて気にしないでいいよ」と言って去ったのだった。その後、誰かは成長して兄のようになりたいと思ったのだった。
二、〜I feel like taking a rest.〜
時雨は保健室のベッドに寝ていた。
「五月雨君?」
「・・・・・」
「五月雨君、起きてるなら返事をしなさい」
「・・・・・」
「じゃ、この液体を投与してもいいのね?」
「はい、僕は起きてます!」
ものすごい勢いで起き上がって時雨は保健室の先生を見たのだった。
「よくもまぁ、倒れた振りして保健室まで逃げてきたわねぇ・・・」
「いえ、まさか保健室の先生にばれるとは思いませんでしたよ」
先ほど、教室で倒れたのは演技だった。
「何で倒れたの?」
「その前に教えて欲しいことが一つ・・・なんで嘘だとわかったんですか?」
「あのねぇ、パニックになっている生徒と違って私は場数を踏んでるの・・・・顔色がとってもいい奴が倒れて体温も脈も正常な生徒が・・・書類、見たけど持病の欄は白紙だったわよ?・・・倒れるのは不自然。前にもそんな奴がいたからねぇ〜」
保健室の先生はなかなか侮れない・・・と時雨は思いながらベッドに座ったのだった。
「で、何で倒れたの?」
「いやぁ、少々厄介なことがありまして・・・」
「厄介なことって何?」
先生は立ち上がってコーヒーを作り始めた。
「そ、それは・・・まぁ、ちょっと・・・実は、さっき叫んだ女の子がいたでしょう?」
「ええ、いたわね?それが?」
コーヒーを手渡されたのでそれをちょっとだけ飲んで続きをしゃべり始める。
「それが問題大有りなんですよ・・・僕、ちょっと変わった体質してて・・・・今朝、あの子を助けたんです」
「助けたならなんで騒ぐ必要があるの?いいことじゃない?」
「いや、そのとき普段の自分とは違うような口調でこっぱずかしいことまでいったんですよ・・・・てっきり女子中学生だと思ってましたから、もう会うことはないだろうと思っていたんです」
ああ、これからどうしようという顔をしながら時雨はコーヒーを飲み干した。そんな悩める高校生を見ながら保健室の先生は一つ提案した。
「それならあくまでも初対面だと言い切ればいいんじゃない?」
「え・・・そんなの、無理ですよ。顔だって見られてますし・・・・」
「大丈夫大丈夫。さっきの演技は私から見たら大根役者だったけど・・・女の子一人ぐらい騙せるでしょ?あっちがそのことについて触れてきてもはぐらかせばいいのよ」
「だ、大丈夫ですかね?」
不安そうに尋ねてくる時雨に保健室の先生は頷いた。
「勿論よ。可能ならば私も協力するわ」
そういってくれた保健室の主に時雨は頭を下げたのだった。
「ありがとうございます!ええっと、すいません、名前は?」
「白波優奈よ。生徒の悩みを聞くのも先生の勤めだからきにしないで・・・・ああ、そろそろ戻ったほうがいいと思うから・・・」
「はい、失礼します!」
時雨はそういって保健室を後にしたのだった。
時雨がいなくなった保健室では優奈が独り言を呟いていたのだった。その手には保健室に置かれているテレビのリモコンが握られていた。そして、めったに動くことがないテレビには時雨とレミル・・・・レミルに絡んできた二人組の姿が映し出されている。
「なるほど、こりゃとってもいい宝石を見つけたわ・・・きっと日ごろの行いがいい私への神様からのプレゼントかしらねぇ?」
不適に笑う優奈は生徒から評判のよい先生とは違う顔をしていたのだった。
教室に戻ってきた時雨に先ほどようやく知り合ったクラスメートたちが心配そうな表情を見せていた。身を案じるような表情を見せるものから話しかけてくるものまで・・・そういうことが苦手な部類の時雨は
「ああ」とか
「うん」とかいいながら自分の新たな席を探したのだった。
「ええっと、ごめん、誰か僕の席知らない?」
「ああ、五月雨君の席はあそこだよ?」
指差したところにはレミルが座っている席の右側の席だった。時雨としてはさっきまであの机には別の女子が座っていたような気がしたのだった。
「ありがとう・・・」
教えてくれた相手に礼を述べて時雨は席についたのだった。クラスメートが彼に話しかけようとしてくる前に今度は熱血先生がやってきたのだった。
「すまん!転校生の五月雨はもう来たそうだな?」
「はい」
「おお、なかなかよい面をしているではないか!存分に学校ライフを楽しんで欲しいところだが・・・ご家族からの電話だ。何でも、緊急事態で一応帰る準備をして職員室に来てくれ!他のものは自習だ!」
面食らっている時雨・・・そりゃそうだ。倒れて戻ってきて、またいなくなるとは誰も想像してはいまい・・・・・。
複雑な心境の時雨にこれまた複雑な心境のクラスメートたちは手を振って時雨もそれに答えたのだった。最後にレミルと目があったような気がしたのだが、相手から目を伏せたので時雨は何も言わなかった。
時雨のいなくなった教室では今のところ謎の多い転校生についての自己分析が語られており、一人上の空のレミルの下へ元、彼女の隣の席だった女の子が話しかける。
「嵐のような転校生だったね?」
「・・・そうね・・・」
「レミルから聞いた感じの王子様って感じじゃないけどなぁ・・・」
「のほほーんとしたような性格だったし・・・」
そんな話が行われていたのだった。
時雨は電話を取ると驚いた。
「ええっ!?それって本当!?」
『そ、そう、本当・・・おにいちゃん、聞いてないの?』
相手は時雨の妹の五月雨春乃だった。
「う、うん・・・母さんと父さんが書きおきのこして外国に行くなんてぜんぜん聞いてないけど?ほら、僕もここ最近忙しかったから・・・引越しの準備とかでさ」
一歳年下の妹に事実を告げる。
「それで、書置きにはなんて残ってたの?」
そう告げた時雨だったのだが、妹の返事がない。
「春乃?」
『え、ああ・・・ええっとねぇ・・・・』
なにやら気が動転している妹に
「まぁ、普通は驚くだろうなぁ・・・両親が目を覚ましたら書置きを残していなくなっているんだからなぁ・・・」と心の中で同情している時雨だったのだが、本当はちがうところで妹は緊張していたのである。
『えっとね、行き先は書いてないし、いつ帰ってくるってのもわかんないんだけど・・・お兄ちゃんが借りたアパートに一緒に住みなさいって・・・そ、その・・・か、書いてるよ?え、えっと・・・私がいっても迷惑じゃないよね?』
なるほど、そう来たかと時雨は思ったのだった。幼い頃からずっと一緒に妹がいたので時雨は
「これでは妹が自立できない!」という理由を含めた今回の引越しは困ったことに失敗してしまったようだ。だが、それも事実だろう・・・・妹は料理が下手な挙句に一人という状況が大嫌いなのである。親戚の家に行こうにも飛行機に乗らねば遠いに違いない。
「・・・わかった、それならしょうがないね・・・・家、わかる?」
『うん!大丈夫・・・といいたいけど、既に迷子になってる・・・』
今にも泣きそうな声が聞こえてきて
「どうしよ、お兄ちゃん!」との言葉も聞こえたのだった。
「わかった、僕もちょうど帰る準備をしていたから今からそっちにいくよ。悪いけど、今自分がどこにいるかわかるかな?」
『えっと、近くに輝輝高校があるよ』
「・・・・」
これもきっと両親の仕組んだことなのだろう。あの両親は裏で動くことが大好きらしく、母、父ともども農家ながら怪しい客をよく家に連れ込んでいたことを時雨は覚えているのであった。
「それなら場所は・・・校門の前のレストランで落ち合おう」
途中聞こえてきたウェイトレスと思われる人の
「御注文はお決まりでしょうか?」という声に時雨はそう告げたのだった。どうやら、相手は既に待ち合わせ場所にいるらしい。
『う、うん・・・おにいちゃんは何頼む?コーヒー?』
「いや、コーヒーはいいよ・・・もう、飲んだからね・・・」
適当に何か頼んでおいてと告げて時雨は立ち上がって職員室で会議を行っている先生たちに頭を下げて職員室を出たのだった。
下足箱へと向かう途中、保健室の先生に時雨はあった。
「あら?もうお帰り?」
「ええっと・・・緊急事態なんですよ、白波先生・・・」
「優奈でいいわ。それで、何が起こったの?」
「・・ちょっと両親が旅に出ちゃったみたいで・・・しかも、滞在期間と不明なんです。パスポートとか持ってないっていってた気がするんですけどねぇ・・・・いつも金がないって言ってるし・・・」
「どっちとも手作りでいったんじゃない?」
少々話をして時雨は優奈に別れを告げたのだった。
「なるほど、やっぱりあの二人の息子か・・・・こりゃ、本当にいい宝石を手にいれちゃったわ♪」
非常にうれしそうに笑っている優奈はそのまま職員室へと向かったのだった。
傘を既に所持していない時雨は鞄を上に掲げて走り、学校を抜け出したのだった。こんな時間帯からファミレスへと向かう高校生を見かけたらウェイトレスさんたちはなんと思うだろうか?
「・・・いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
「ええと、連れが・・・」
片眉をちょっとだけひそめたウェイトレスだったのだが、マニュアルどおりの言葉を時雨にたずねてきたのだった。
「お兄ちゃん!こっちこっち!」
そろそろ恥らう年頃なのになぁ・・・と時雨は思いながら春乃の元へとやってきたのだった。彼女の前にはイチゴパフェが二つおかれていたのだった。花火まで無駄に載っている。とても高級そうなイチゴパフェだった。
「・・・・はぁ、貴重な食費が・・・」
「おいしいよ、お兄ちゃん」
とりあえず座ってパフェに手をつける。
「・・・・春乃、書置きは持ってきたのか?」
「ええと、これだよ?」
手渡された書置きを見ると、なるほど
「外国に行ってきます。春乃は時雨ちゃんの借りたアパートに住まわせてもらいなさい。月に一回ほど連絡を入れます。ちなみに今月は今日連絡する予定です。5回コール音がなってもそちらがとらない場合はまた来月を待っていてください」とだけ書かれていたのだった。
「え、まじ?何、このやる気ない内容は?」
「私携帯来月かってもらう予定だったのに・・・どうしよう?」
「とりあえず、僕の携帯にかけてくるってことかなぁ?」
そういって時雨は自分の携帯を取り出したのだった。
「ええっと・・・・着信あり?非通知設定・・・これ、間違いなく母さんたちだよね?」
連絡手段を失った時雨はがっくりと頭を垂れたのだった。




