A:ある日の境
彼のプロローグ 〜Who is this?〜
一人の男性がいつものように畑仕事に行くと、職場でもある畑にとても珍しい野菜がなっていたのだった。季節は秋で天候は雨の日だった。本当だったら大根が出来るはずだった場所に二本の足が突き出されていたのだった。
男性はそれを見ると両足を掴んで引っ張ってやったのだった。引き抜くとそこには全裸の男の子が仰天のまなざしで男を見ていたのだった。そして、次に股間を押さえた。男性は後に
「ええ、初めは新種の大根か?と思いましたよ。え、いえいえ、股の間のものじゃなくて、足のほうです(笑)」と語っている。
彼が収穫したのは畑から生まれた男の子だった。
世界のプロローグ 〜I am god.〜
その世界では人は神に作られたものだといわれていた。だから、生み出すことを製造するという意味で話す。
ある日、一人の男性が神を作ろうとして一つのものを製造した。
それを見ていた一人の女性が悪魔を生み出した。
別に神話や言い伝えなどで出てくるような邪悪なものではない。
誰が言い始めたのか知らないが、彼女が生み出したものを悪魔と呼んだからだ。
悪魔はちょっとひねくれものがおおかったりもした。
そして、悪魔を製造したその場所に居合わせていた別の女性が天使を製造したのだった。
悪魔がいるのなら天使がいてもおかしくはないだろうということで天使と名づけられたのだった。
その後、天使と悪魔は人間に製造され続け・・・・この世界には人間、悪魔、天使という三種族が生まれた。初めに製造された神は悪魔や天使が増え続けると良くないと思い、この世界にルールを造った。その世界では人が生み出すものを悪魔一、天使一という割合としたのだった。そして、そのルールは破られることはなかった。神は
「食費がかさむため」と述べている。その後・・・神は自ら姿を消したのだった。
神の存在が忘れられてある程度時が経ったある日・・・・世界が誰かにのっとられた。誰かはわからない。
一、〜bad day〜
一人の男の子が駅のプラットホームで頭を抱えていた。
「しまったぁ!転校初日から遅刻確定だよ!どうしよ!」
男の子・・・・見た目は十七歳程度の人間で、髪は深く黒くかすかに青い。髪に隠れているが時折見える左眉の辺りに引っかき傷が印象に残る。その瞳は先ほどからずっと腕時計に注がれていた。
「一時間も遅刻しているし・・・・すべては誰が悪いんだろう?」
待望の一人暮らし・・・彼は夕べからの一匹狼ライフを堪能していた・・・・というのは冗談で、コンビニの弁当を食べた後、風呂に入って洗濯をしようとしたのだが機械にどことなく疎い彼は洗濯機を動かすのにも少々時間を労し、説明書を見ながらいじっていて気がついたら深夜になっていたというわけである。おまけに目覚ましは六時にセットしていたのに午前五時に電池が昇天してしまったようで針が止まっていたのだった。ろくなことが続かないなぁと思っていたら今度は道を間違えて彼の目の前で電車のドアが彼を阻むように閉まったのだった。
「既に他の人もいないし・・・・」
寂れたホームには誰もおらず、彼だけが立っていたのだった。おまけに雨まで降ってきたようだった。
だが、一人だけだと思っていたらどうやら彼以外に人がいたらしい。
「や、やめてくださいっ!」
「いいじゃないかよ〜」
「遊びにいこうぜぇ〜?」
「触らないで!」
声がしたほうを見ると一人の女子高生・・・いや、見た目は女子中学生が男たちに絡まれているようだった。
彼は意を決して女子中学生を助けに向かったのだった。
「・・・あの〜すいません」
「あん?何か用かよ?」
がんつけられて彼は足がすくんでいたのだった。女子中学生は少しだけほっとしたような顔をしたのだが・・・
「・・・傘をお持ちじゃないでしょうか?その、僕・・・傘を忘れちゃって・・・絶対に返しますから貸していただけません?」
「ちっ、そのぐらいで話しかけてきたのかよ・・・このビニール傘、やるからあっちいってな!警察にちくるんじゃねぇぞ?」
彼にビニール傘が投げられ・・・彼はそれを掴んであっという間に逃げ去ったのだった。だが、何かを忘れたのかあわてて戻ってくると再び期待の色を映した女の子のほうをみた。女の子に
「いやぁ、ごめんね・・・僕、腕っ節はからっきしなんだ。ああ、それと、雨が降るから、気をつけてね?」そう告げて彼は再び去っていったのだった。女の子はそれを聞いて絶望の色を瞳に映した。
次の瞬間、彼女を囲んでいた二人の男が見事に上空に舞った。目の前でいきなり男二人が雨避けの屋根を突き破って飛んでいったのだ。勿論、誰でも驚くだろう。勢いあまって破壊されたのか・・・・女の子が立っていた場所の上の屋根も壊れており、女の子は雨に濡れ始めたのだが、そんなことを気にせずに上空に飛んでいった二人組を見る。二人は降りてきて
「ぐへっ!」と二重発声して気を失ったようだ。気を失った片方の手が不自然に曲がってしまっているからどうやら、折れてしまったようだが・・・この場合は自業自得だろう。
濡れている女の子のところへ彼がやってくる。その手には倒れている男から彼が借りた傘とは違う折り畳み傘が握られていたのだった。
「濡れますよ。傘、持ってなかったら僕のを貸しますけど?」
「え、あ・・・・」
何が起こったのかぜんぜんわからない女の子だったが・・・彼の後ろから気を失っていたはずの片方が起き上がって彼に襲い掛かろうとしていたのだが・・・
「ぐふぁ!」
という奇声を上げて再び空に飛んでいったのだった。信じられないものを見ながら女の子は半ば渡された傘を掴んだのだった。
そんな二人のところへ電車がやってきた。どうやら女の子が待っていた電車のようで・・・女の子は驚いた顔を維持したまま、それに乗り込んだのだった。彼はその光景を見て
「ああ、僕って今とても輝いてるよね!?いやぁ、人助けをするのってものすごく楽しいなぁ・・・・しかも、かっこいい台詞も言えたぜ!」という顔をしていたのだった。
女の子が去った後、彼は重大なことに気がついたのだった。
「のわっ!僕ってあの電車に乗らないといけないんじゃないか!?」
いまさらながらに気がついて自分がどれだけ愚かなことをしていたかを悟った。ビニール傘をきちんと返却し、彼はあわてて走り出す。向かう場所はいまどき古い公衆電話だった。
そこで番号を押し、相手が出るのを待つ。
「・・・・あ、すいません!」
電話の相手はいきなり謝られたので驚いているようだった。
「あ、すいません!ええっと、輝輝高校ですよね?今日二年三組に転校してくる予定の五月雨時雨ですが体調がすぐれないので・・・・ええ、ばあちゃんの忌引きなんで休みます。いえ、あ、その・・・機嫌が悪いので休みます・・・・あ、違うんです!さぼりじゃなくて・・・ふざけているわけでもないんです。実は僕、ちょっと道に迷っちゃって・・・迷子?迷子じゃありません!僕、もう子どもじゃないんですよ!」
何がしたいのかわかない時雨だったのだが、電話の対応をしてくれた相手がどうやら温厚な先生だったことが幸いだったようだ。相手は
「ああ、確かに地形とかが入り組んでいるからねぇ」といって特別に迎えの車を用意してくれるとのことだった。駅にはそろそろ人だかりが出来ているようで・・・時雨は駅から出て雨宿りをしながら車が来るのを待ったのだった。
「輝輝高校か・・・・」
一人、雨の中呟きながら・・・・
女の子は学校について自分の担任の先生の元に行って朝あったことを告げたのだった。
「よぉぉぉっし!わかった!先生が今から行ってそいつらをぼこぼこにしてやろう!」
「あの、そんなことしなくて・・・いえ、する必要がないと思いますんで、警察を・・・」
「わかったぁぁ!」
やたら熱血な先生が頷いて放送室に侵入。彼は
「え〜開校依頼の緊急事態が起きましたので、先生方は授業を即刻やめて今すぐ、職員室に集まってください!」と音量最大で述べたのだった。放送が終わってもなお、きーんとした音が女の子の耳に残っていた。
「じゃ、お前は教室に行ってろ。遅刻にはしないから気にするな・・・・ああ、ついでにクラスの連中にはこのことは黙っておけ・・・・自習は静かにしていろよ?」
先生だったら
「大丈夫だったのか?」とか聞くのは当然なのだろうが、先生はそんなことを気にしていなかった。いや、この性格ではそこまでいかないのかもしれない。
先生に頭を下げて職員室を出ようとしたところで保健室の先生が廊下を走っていったのだった。
「先生、どこか行くんですか?」
「ええ、そうよ?」
「あの、今の放送聞いてましたか?」
「ああ、あれね・・・・私には関係ない・・」
そういった保健室の先生に
「もっと生徒を大事にして欲しい!」と思ってむっとした女の子だったのだが、
「というより、転校生が一人迷子になっててねぇ・・・しかも、迷子になった自分を認めたくないようで錯乱しているようなのよ・・・」
なるほど、現在進行形で錯乱している転校生のほうが大変だろう。誤って何かしらの事件を起こしかねない。
「そういうわけで、私は急いでいかなくてはいけないのよ・・・・ああ、そういえばあなたたしか二年三組だったわよね?ついでに机と椅子をクラスに持っていってくれないかしら?」
「え、私たちのクラスにですか?そんなこと、聞いたことないんですけど・・・・」
初めて聞いた事実に女の子はきょとんとしたのだった。
「まぁ、あなたたちの担任はおつむがちょっと足りないからねぇ・・・きっと忘れていたのよ」
女の子のクラスの担任の性格は学校の細部まで行き届いており・・・この高校の人に言わせれば
「この地球上に存在するとは思えない身体能力だがいかんせん、頭は尺取虫に劣る」とのことである。
先生と別れ、女の子は用務員さんから机一式を渡してもらってそれをもって自分の教室にようやくついたのだった。女の子はここまで時間がかかるとは思っていなかった。
「あれ?その机どうしたの?」
級友の一人が尋ねてきたので女の子は
「転校生が来るらしい」との言葉を皆に伝えたのだった。
それを聞いたクラスメートたちは初めは小さい会話だったのだが・・・・だんだんと騒ぎ始めたのだった。それを止める先生も学級委員も今、この教室にいないのでものすごい騒ぎとなってしまった。
勝手に話が進んでしまっており
「俺と美少女の運命なる出会いの始まりだ!」
「いやいや、俺様との恋の話さ!」などと男子は騒いでいる。そう騒いでいる男子たちを無視する形で女の子は一番後ろの席・・・窓際に机を置いたのだった。男子たちには残念ながらそこは女子に囲まれている席だった。これでは
「隣の彼女に優しく接する男子」という作戦ができない!と叫んでいる男子もいた。
ようやく席につくことが出来た女の子・・・・レミルシェル・フェルボートはため息をついたのだった。
「どうしたの?元気ないね?」
「まぁね・・・ちょっと信じられないことが立て続けに起こっちゃって・・・・」
未だに夢見心地のレミルシェルだったが・・・・あれは事実なのだろう。先生はしゃべらないほうがいいと思ったのだが彼女は自分が見たことを友達に教えたのだった。
「へぇ、それでレミルはその男の子が自分を助けてくれたって思ってるんだ?」
「う〜ん、でもさぁ・・・信じられないんだよ・・・」
「でも、信じてるんでしょ?」
「まぁね。この置き傘を渡してくれたのもその男のだし・・・男の子のことは言ってないんでしょ?」
首をかしげているレミルに女の子がさらに話しかけようとして・・・・
「はい、ちゅうもーく!」
がらりと扉を開けて白衣の女性が入ってきた。保健室の先生の突然の登場に皆驚いていたのだった。
「このクラスが一番さわがしーぞ!また、クラス全員で熱血のエンドレス・マラソンをしたいのかぁ?」
一同お通夜のように静かになったのを確認して教室の外に呼びかけたのだった。
「さぁ、転校生の五月雨時雨君、はいってきなさい」
「は、はぁ・・・」
申し訳なさそうに言いながらずぶぬれとなってはいってきたひとりの男子生徒に見覚えの会ったレミルは静かになっていた教室の中で一人だけ
「あっ!」と叫んでしまったのだった。不思議に思ったのか、クラスメート全員が彼女を見たのだった。
そして、相手もレミルに気がついたのか世界が滅亡しますということを告げられたような人の顔になっていたのだった。
二年三組に新たに加わった転校生、五月雨時雨はレミルのほうを数分見ていると突然倒れ、その後、生まれてはじめて保健室に運ばれたのだった。




