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敢えて

早乙女華恋と蛇亀子は激しい火花を散らすようにして睨み合った。両者の顔はスレスレに近くて鼻息が荒かった。


二人は引き下がると、しゃがみ込んで、さらに睨み合った。


「はっけよーい、のこった!」と蛇亀子は叫ぶと頭から早乙女華恋の額に目掛けて飛び込んだ。早乙女華恋は間一髪で避けると蛇亀子の顔をビンタした。


蛇亀子は怯まずに突進してきた。早乙女華恋は真正面から受け止めるとズルズルと後ろへ退いていく。早乙女華恋の胸元が赤くなっていた。


蛇亀子は早乙女華恋のズボンを掴むと激しくがぶり寄った。またもや早乙女華恋は後ろへと追い込まれていった。それでも元横綱を相手に奮闘するのは、さすがだった。


埒が明かないと悟った早乙女華恋は一般人には使いたくはなかったが早く帰りたいので使う他はないと判断した。


「近くにいて四!!!!」


一瞬、蛇亀子は不思議そうに顔を上げた。


早乙女華恋は蛇亀子の首をヘッドロックをすると猛スピードで屋上を走り回った。


「痛たたたた!」と蛇亀子は叫ぶと、早乙女華恋の背中にギブアップ宣言を示すタップをした。


「お兄さん、首が痛いですよ!! 今のは相撲とは違う技ですよ!?」と涙目で首の不調を訴え出す蛇亀子だった。


「では、失礼します」と早乙女華恋は素早く敬礼をして、この場を去ろうとした。内心、稀に見る極端なブスを相手にしたくなかったから早く帰りたいのだった。美人なら帰らないのは当然という心境でもあった。


「ちょっとお兄さん!! ワテの何処がいけないのかしら? なぜワテには男が寄ってこないのよ?」と蛇亀子は首を回しながら言った。


「スバリ言わせてもらおう。ブスだからだ!! 髪型がベッタリ付けたポマードの七三分け、眉毛が繋がってるし、口臭も臭いし、鼻毛が出ていて、鼻の下には黒々としたヒゲを蓄えているのが1番いけない。まるでアポロ・クリードの口ヒゲだ。厳密にはバート・レイノルズの口ヒゲに近い。何で女にそんな黒々としたヒゲがあるんだよ? スネ毛も剃らずに酷いありさまだ。密林みたいなスネ毛だ。へんな、ゲボみたいな、生臭い匂いがするのは、香水なのか、体臭なのか、死臭なのかは分からないが体全体が異様に生臭い。いいかブス。人間は身だしなみが第一印象を左右するんだ。自分磨きという努力が足りんブスだからだ!! 偉そうに語るブスだから寄ってこないんだ!! ブスは美人の何億倍も努力しないと勝てないんだ!! わかったか!! 君はブスすぎる!! 心もブスすぎる!! ブスは男から見たら存在しないものなのだ!! 男とはブスが大嫌いなのだ!! わかったか! ブス!! よく見たら目ヤニだらけだし、鼻糞だらけだしさ!! 全てが汚らしいブスだ!! 男をナメるな!! どブス!!!!!」と早乙女華恋は言って黙って屋上の扉を開けると、そのまま静かに出ていった。


「ワテ、正真正銘の性別は本物の女なんだけど、生まれつき体毛が濃いのが悩みなのー!! 女はね、ヒゲを伸ばして強くなってみたい生き物ものなのよー! ヒゲを生やした女がいてもいいじゃん! 念の為にアソコの毛は剃ってま〜す! いつアバンチュールな恋が訪れたりするかわからないし、念願である待ち侘びた白馬の王子が現れてワテを襲って抱くかもわからないからー! アソコの毛とはワキ毛でーす!」と去りゆく早乙女華恋の後ろで声が虚しく響いてきた。




つづく

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