布団の中で、お話会
広いリビングに布団を敷いて、みんな、それぞれ自分の布団の中に入っていく。お手洗いに行けるように、ランプでぼんやりと照らしてはいるけど、まあ普通に眠ろうと思えば眠れるくらいの明るさだ。
とりあえず、遠くでパシッパシンッと鳴っている音は無視しておこう。アルベルトが時々寝ながらパンチしたりキックしたりして、それを全部ギュスターヴが受け流している時に体がぶつかって、小さな音が鳴っているのである。
武道の演武を見ているみたい。極めれば、眠ったまま戦える人になるのでは?いや、むしろ今のままでも、十分興行とかできるくらいの、すごい特技なのでは?これを見ているだけで、今日の夜は退屈しないですみそうだ。会話の間が持たなくなったら、眺めよう。
『あ、今見た?蹴りを受け流したよ』『ほんとだ!』『ね~寝てるのに、あんなに動いてすごいね』『ね~』みたいな感じで、とりあえず、会話の持ち札に困った時に、次の話題を考えるまでの繋ぎとして使える。
・・・それにしても、アルベルトやギュスターヴに、こんなヘンテコな設定あったかなあ。覚えてない。もしかしたら、裏設定的なものなのかも。
・・・待てよ・・・アリスとアルベルトで、好感度が高くなると、添い寝イベントとかあった気がするけど、寝落ちした後の描写がなかった。『こうして、二人は眠りに落ちたのであった』『・・・・・・・』で、後日に飛ぶ。
その間になにが起きたのかは考えないようにしよう。
とりあえず、この寝ぼけ癖は、絶対なおした方がいいことだけは分かった。これからアリスがアルベルトと仲良くなって、アルベルトのルートへ突入する可能性もある。その時の彼女の身の安全を守るため、対策を講じていこう。
私は、心の中のメモに、しっかりと刻み込んだ。『アルベルトの寝相を治すこと』
さて、では他の寝転んでいる人たちはなにをしているのかな・・・?
オルガの様子はどうかと、さりげなく体を向けて見てみる。
「おい、こっちを見るな。」
エドワードとオルガは、お互いに向かい合っていた。
「どっちを見ようと勝手よ。あなたが後ろを向けば?」
「あっちはずっと寝ながら戦っていて、見ていて休まらん」
「ふん・・・」
ちょっと言葉は交わしているけど、どうもギクシャクしてるな。甘い雰囲気には、ほど遠い。ここは、なんとかしていい感じの雰囲気にしたいな。
「あのお二人、あんまり話しませんね」
アリスが、ひょこっと顔を出した。
「そうなんですよ。やはり、もっとこうラブラブしているのが見たいですよね」
「ラブラブが見たいというか・・・やっぱり仲がいい方が、いいですから、もっと楽しくお話ししてもいいのかな、と」
「アリス様もこうおっしゃっていることですし、ここはハグすべきですね。見せつけてやってください・・・それでは、お二人、張り切ってどうぞ!」
「できるか!!!」
「できるわけないでしょ!!!」
おおっ!エドワードとオルガの息が合っている。これはもう、仲良しなのでは?
「ふふふ・・・私が思っていたより仲がいいのかもしれませんね」
アリスがクスッと笑った。
「こら、そこ、なに笑っているの!」
「そ、そうだ。見世物じゃないぞ!」
怒っているけど、ちっとも怖くない。私は、アリスと顔を見合わせて笑みをこぼした。
「あ・・・エリーゼ様の普通に笑っているところ、はじめて見たかもしれません」
アリスに、思わぬことを言われた。
「そうですかね?私、チャーミングな笑顔が売りのメイドなのですけど・・・」
「いつも淡々とボケまくっていますし・・・悪そうな顔や、『ウヘヘ』ってオルガ様を眺めている時の気持ち悪い顔は印象に残ってます」
そんな風に思われていたのか~。『気持ち悪い顔』とは、思いっきり失礼な言葉をかまされている。アリスって天然失礼野郎?
「なるほど、アリス様からの評価は、そんな感じなのですね」
「妥当ね。基本的にあなたはチャーミングというより、不気味って言った方が適切よ」
オルガがアリスにの意見につけ加えて、私への評価を教えてくれた。
『気持ち悪い』とか『不気味』とか、おおむね二人の意見は一致している。あんまりうれしくない一致だ。そこは『有能で素敵なラブリーなメイド』ということで、お願いしたい。
「私ってチャーミングじゃないですか?エドワード様はどう思います?」
エドワードにもいい感じで巻き込んで、会話に参加してもらう。
「自分でチャーミングというやつは、たいていチャーミングじゃない」
ドライな反応だ。どうやら落ち着きを取り戻したみたい。
「そうなのよ。エリーゼは、なぜか自己評価が高いのよ」
「まあ、自信があるのはいいことだが・・・貴様は自信がありすぎだ」
「あっても困らないじゃないですか、自信は。やはり、持っておきたいものです。山よりも高い自信を・・・」
「い・・・今以上に、自信をつけるつもりなのか!?」
私の志の高さに、驚愕しているようだ。
・・・呆れているようにも見えるけど、気のせいだろうな。
「そうなったら、どうしましょう。ますますプリティーになってしまいます」
「・・・分かった・・・好きにしてくれ・・・」
「最初からそうするつもりですよ。お気遣いなく」
「はあ・・・なんだか、貴様と話すと疲れる」
げんなりしている様子だ。
「分かるわ、その気持ち」
オルガはため息を吐きながら、うんうんうなずいている。
「わ、分かってくれるか!?」
二人の間に、同じ苦労を共にする同志的な共鳴が生まれているようだ。なにはともあれ、仲良くなってくれているなら、よかったよかった。
「エリーゼ様って、なんだか愉快な方ですね」
アリスにじっと見つめられながら言われた。なんか照れる。『愉快』って表現が引っかからなくもないけど、まあ褒め言葉として受けとめておこう。困ったら、自分の都合のいい方へ解釈していくのだ。
ほんとは、アリスとしっぽり親交を深めようと思ってたけど、エドワードとオルガをいじってたら時間が過ぎてしまった。
でも、アリスも楽しんでくれたみたいだし、オルガとエドワードもなにやら共感していたみたいだし、結果オーライということで、今日はこれでよし、だ。




