後半、もうひと踏ん張り
調子に乗って夜ごはんを作りすぎてしまった・・・。こういうの、なんて言うんだろ?クッキングハイ?
勉強の疲労と空腹で、みんなテンションがおかしかったもん。
アルベルトなんて、なぜがシャツを脱ごうとして、ギュスターヴとエドワードに全力で阻止されていた。早くも、本日二度目の羽交い絞めだ。
一日で二回も羽交い絞めにされる人を見るのは、そんなにうれしくなかった。
ご飯を食べ終えると、オルガはパンパンと手を叩き、
「しっかり片づけするわよ」
と珍しくいいこと言った。
料理は、きちんと片づけまでするのが大事とのことで、他のメイドさんたちの力は借りずに、自分たちで散らかしたキッチンをきれいにしていく。
オルガは、テキパキ指示をして、
このままのんびりしたいところではある。でも、みんなで気合を入れなおして重い腰をあげて、後半戦へ臨む。
次は、国語だ。国語なんて普段使ってるから軽い軽い~なんて思ったけど、これがなかなか難しい。
なんとなくなら解けるけど、理由が上手く説明できない。
「本文から根拠を拾って、それで選択肢を見て・・・・・・」
「そうなのですねえ」
オルガに教えてもらいながら、問題を解いていく。彼女は教え方が論理的というか、きっちりしているから分かりやすい。なんだか学習塾に通っているみたいな感覚になってきた。さっきの数学より苦手意識が少ないせいか、だいぶ気持ちは楽だ。
「そんなこと考えながら、解くんですね」
感心してしまう。勉強できる人って、こんなこと考えながら解いているんだなと、そこも勉強になる。
「あなた、普段国語の問題どうやってやってるの?」
「フィーリングです」
「・・・・・・よくこの学園に入学できたわね」
ため息をつかれた。
「あ、私も~なんとなくで解答してる~」
イングリッドが元気よく挙手する。明るいのはいいことだ。
「俺も、勘だな~」
アルベルトは、ペンを口と鼻の間にはさみながら、退屈そうにこぼした。
どうやら、私たち勉強できない組三名には、共通点があるみたい。それは、『適当』とか、『なんとなく』で問題を解いていること。それがどうやら、ダメとのこと。
「勘とかフィーリングでいいなら、学校の意味ないでしょ。どこまでアホなの」
オルガの毒舌は、しみるなあ。
「うぐ・・・・」
アルベルト、イングリッド両名、ぐうの音も出ない。正論だし・・・フォローも面倒なので、ほっとこう。
悔しがって唇を噛む二人に、私はひそひそと話しかけた。
「ここは、大人しく教えを乞いましょう。真正面から頼まれれば、オルガ様もむげにはできないでしょうし・・・」
「そ、そうよね」
「オッケー、お前らに合わせる」
咳ばらいを一つした後で、私たちは揃って深く頭を下げる。
「どうか、ご教授お願いします」
「し、仕方ないわね~できの悪い同級生の面倒、特別に見てあげるわ」
やはり、正攻法が一番だ。きちんとお願いするのって大事だな~と、至極当たり前のことを再確認したのだった。
数学の時の大騒動と打って変わって、みんな騒がずちゃんとやっている。オルガも、鬼みたいな顔つきだったのが夢みたいに、いつものきれいで上品な貴族の令嬢だ。
しばらくは静かに勉強会は進み、よしよし、順調だと思った矢先に、
「え~と・・・・・・・答えは?・・・はあ?なんでAじゃないの!?絶対、この人、彼女のこと好きでしょ!?」
イングリッド的に、答えに納得がいっていない様子。
「そこは、はっきりとは書いてないから・・・」
前半の数学の時と同じく、アリスが優しく教えている。
「でもさ~これって言葉では言ってないけど、心の中で思ってるって!絶対そうだよ。この問題作った人って乙女心が分かってないな~。モテないな、こいつ」
唐突に、問題作成者へのディスが飛ぶ。しまいにはモテない人にされてしまった。とても気の毒である。
「なんでここで友だとの元へ行かねえんだ!」
今度はアルベルトが、登場人物に怒っていた。机をバンッと叩いて、立ちあがっちゃってる。
「まあまあ・・・それは、やっぱり相手の気持ちを考えて、行けなかったんじゃないかな?」
ギュスターヴがなだめようとしていた。
「い~や!許せないね。おいギュスターヴ!お前はこいつのことどう思うんだ!」
「へ?ぼく?」
明らかに困っている。そりゃそうだろうな。そもそも、私たちはテストの勉強をしているのであって、小説の感想を話し合う会ではないしね。
感情移入しすぎて、ちっとも問題を解くのが進んでいない。
「い~や違うね。あれは友だちとして、行かなくて正解だよ」
イングリッドがアルベルトに突っかかった。
「なにぃ!?」
アルベルトは、ズンズンとイングリッドとの距離をつめる。
「なによ、なんか文句あんの?」
イングリッドも負けじと睨み返す
・・・・・・緊張感が走る。二人は無言で睨み合っている。
う~ん、どうしようかな。下手に刺激しちゃうと、なんか一気にヒートアップしそうだし、とりあえず様子を見みてよう。
そうすると、沈黙を破ったのは、黙々と勉強していたエドワードだ。
「おい、赤点になりたいのか?」
二人の視線が、エドワードに向いた。
「時間ないぞ」
冷静なエドワードの言葉で、アルベルトとイングリッドはハッと我に返った。
「そうだったぁ!マズい!」
やっと当初の目的を思い出してくれた。そうそう、これは勉強会だよ。仲良く楽しく勉強していこう。
「はっきり書いてないことは、とりあえず考えないでいい」
少し遠くに座っていたエドワードが場所を移動して、アドバイスをしはじめた。
エドワードが空気を変えてくれたお陰で、場は落ち着きを取り戻した。よし、勉強会の再開だ。無駄話もだいぶ減って、集中して勉強できている。
なんだ、やればできるじゃない。
もう一日も終わりに近づいているんだけど、やっと私たちの勉強会は、きちんと勉強会らしくなってきたのであった。




