侵略者を討つな! 127
真昼間、晴天下のコンサート会場。その館内の小コンサートホール。舞台の上、私服(ステージ衣装)の寒川隊員とキャップを被った男性が打ち合わせしてます。舞台の脇では照明スタッフが照明器具を調整してます。
観客席は無人。いや、中央で2人が座ってます。日向隊員とその1列後ろ、1つ横に座る女神隊員です。2人とも私服。女神隊員はヘルメットを被らず、ウィッグで特徴的な単眼を隠してます。
日向隊員は前を向いたまま、つぶやきました。
「上溝さん、ほかの部署に行っちゃうんですね・・・」
「ん、どうしたの?」
「私、上溝さんに嫌われてたんです・・・ 仲直りできたと思ったのに出て行っちゃうなんて、私、まだ嫌われてたのかなあ?・・・」
「上溝さんには上溝さんの理由があるんでしょ。たぶんあなたとは関係のない?・・・」
「そうだといいんだけど・・・」
舞台上の寒川隊員がアコースティックギターをかき鳴らしながら歌い始めました。寒川隊員はそれを見て、
「すみれさん、今日も来てくれなかったんだ。今日が本番だというのに・・・ 寒川さん、かわいそう・・・」
「じゃ、あなたがすみれさんを呼んでみたら?」
日向隊員はそのセリフにびっくり。女神隊員に振り向き、
「ええ?」
女神隊員はゴルフ場でユラン岡崎にレーザーガンを突き付けてるすみれ隊員を思い出しました。影像の端には女神隊員自身がいます。
「あなた、あのとき、私たちに歌を送ってくれたわよね、テレパシーで」
「尾崎豊の曲?」
「そうそう。それですみれさんは心を入れ替えて、仇討ちをあきらめた。あれをもう1回ここでやるの!」
「ええ?・・・」
日向隊員は一昨日のことを思い出しました。
一昨日はストリートライヴをやってる寒川隊員にもっとオーディエンスが集まるようテレパシーで寒川隊員の歌声を四方八方に送ったのですが、だれも反応してくれませんでした。そのことで日向隊員はちょっと落ち込みました。
けど、一昨日は不特定多数の人にテレパシーを送るという行為でしたが、今はすみれ隊員1人にテレパシーを送るだけ。これはできるかも? 日向隊員は女神隊員を見て、うなずきました。
「やってみます!」
日向隊員は眼をつぶり、ぶつぶつと唇を動かし始めました。
ここはテレストリアルガード基地。地下にあるすみれ隊員の私室。私服のすみれ隊員はベッドに腰かけ、ぼーっとしてます。
が、突然はっとします。
「え?」
そして日向隊員の顔を思い浮かべます。
「ふふ、あの娘ったら・・・」
そう、すみれ隊員は日向隊員のテレパシーをキャッチしたのです。それは尾崎豊の曲でした。日向隊員は尾崎豊の曲を歌ってるのです。すみれ隊員はその歌声に合わせ、同じ曲を歌い始めました。
僕が僕であるために すみれ隊員は最初つぶやくように歌ってましたが、歌ってるうちすみれ隊員の表情が変わってきました。それはストリートライヴで歌ってるときと同じ表情。
すみれ隊員の脳裏には、寒川隊員と路上で歌ってるときの楽しさ、面白さが蘇ってきました。歌声もいつの間にかシャウトになりました。
すみれ隊員の心の中で響いてた日向隊員の歌が終わりました。すみれ隊員はニヤッとし、
「ふ、忘れてた。私の業は歌を歌うことだったんだ・・・」
すみれ隊員は立ち上がり、一本引きの自動ドアを開けました。




