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イェルフと心臓  作者: チゲン
第二部 イェルフの子供たち
31/61

17頁

 その晩、青年クカイは、たまたま里近辺の巡回に当たっていた。

 自警団の一員であり、先の夜襲では、アコイの隣で矢を放っていた人物である。

 クカイは欠伸あくびを噛み殺す。見えない敵に対して気を張っているのは、正直言ってつらかった。昼間の疲れも残っている。

「でも、明日はいよいよ出発だしな」

 この先もっと過酷な日々が続くのだ。それを思うと、この程度の疲労で音を上げている訳にはいかない。

「でもなあ……」

 クカイは再び欠伸を、今度は口を大きく広げてしてみせる。山の冷たい夜気が、体の奥に入り込んでくる。

 微かに草むらが揺れた。

「ん?」

 虫だろうか。草が揺れることなど、珍しくも何ともないが。

「…………」

 だがクカイは唾を飲んだ。

 見慣れた闇の色が、濃くなったような気がした。

 クカイは一歩、その場から退いた。

 闇が、ひたひたと浸食してくる。

 いつの間にか、虫の声が消えている。

 声をあげようとしたが、音が出てこなかった。

 クカイは冷静になる必要があった。懐から、緊急用の呼び子を取りだす。

 その瞬間、闇が彼に覆いかぶさった。

「ひっ……」

 一陣の白光が、目の前を横切る。

 胸に強烈な衝撃を受け、クカイは草むらのなかに叩きつけられた。

 息が詰まる。

 声が出ない。

 動けない彼の体に、男の影が覆いかぶさり、即座に口が塞がれた。

 クカイの目に、刃の輝きが映った。

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